異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第6章 隣国との邂逅篇

第70話 心の邂逅

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 「私は…一体…」

 ニナは真っ暗な水の中を漂っていた。体に力が入らず体は勝手に水中に沈んでいくような感覚だ。別に息は苦しくはないし、嫌な感じはしない。このまま身を任せて下に沈んでいく。

 「そうだ。そのまま私に身を委ねるんだ」

 私の中から響いてくるような声、この声は一体誰だろうか。意識が朦朧としていてあまり判断がつかない。

 「お前は私と一つになるのだ。そうすれば、お前の悩みも全て解決する」

 私の悩み…。既に意識は消えかけ、何に悩んでいたかは朧気になっている。

 「お前のその体は私が完全に復活するために必要なものだ。そのまま私の意識の中に溶け込むのだ」

 何だか大切なことを忘れている気がするが、何も思い出せない。

 「ふふっ。愛も知らぬ小娘なんて私の手にかかれば簡単なことだ。さぁそのまま私と一つに…」

 「ニナ!」

 消えかけていた意識が急に呼び戻される。この声、この姿を忘れるわけがない。私を初めて救ってくれた人。何も感じなかった心に初めて火を灯してくれた人。

 「ハッハッハ!今更来たところでもう遅い!彼女はもう私の一部となりつつある」

 黒い水のようなものをかき分け、リュートがニナの元へ向かう。

 「お前は馬鹿か?その水は私の体そのもの。それに入るということはお前も私の一部になるということだ!」

 「ダメです…リュートさん…。このままでは…リュートさんまで…」

 リュートはそんな声を無視してニナの元までやってくる。

 「ニナ!君は君だ!誰かに指図されて生きるのは間違っている。君は自由なんだ!」

 ドックン!その言葉に反応するかのように心臓が鼓動する。

 「わ、私は…」

 私はまだやりたいことが出来ていない。リュートさんに会いに行くと言ったとき、快く送り出してくれた二人にまた会いたい。そして何より、リュートさんとの再会を完全には果たせていない。

 「私はリュートさんと生きたい!」

 「よし!よく言った!その言葉が聞ければ十分だ!」

 ニナの元にリュートがたどり着く。

 「リュートさん…」

 ニナは微かな力を振り絞って手を伸ばす。

 「ニナ!」

 ニナの手を掴み引っ張りあげる。

 「逃がすと思うか?私の内部で自由に出来ると思うなよ!」

 ニナの下方から無数の手のようなものがこちらに向かって伸びてくる。

 「そんなもの、覚悟の上だ!ニナは戻れ!」

 ニナを思いっきり引き上げ頭上へ投げ飛ばす。

 「リュートさん!」

 ニナはリュートに投げ飛ばされ、黒い水から脱出する。

 その最中に見たのはリュートが無数の手に包まれている姿だった。
 
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