異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第12章 罪竜と素質解放篇

第152話 節制、解放

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 ルージュの素質解放から数日後、リュートはミラと共にセールイとフリーダムに国境付近にやってきた。

 「この辺りか…」

 「あぁ、確かこの辺りのはずだ」

 灰喰竜との激戦を繰り広げた場所は、確かにこの辺りだ。リュートとミラが辺りを見渡していると、リュート達の前方に何か塵のようなものが集まって行く。

 「よく来たな、汝ら」

 目の前に現れたのは灰喰竜バイトだった。

 「現れたな灰喰竜」

 「汝らがここに来たという事は我が与えたヒントが役に立ったという事か」

 「あぁ。確かにそうかもしれないな」

 「翠怠竜は素質持ちに自ら進んで力を与えたようだが、我はそうは行かんぞ」

 「じゃあ俺たちはどうすればいい?」

 「我を再び倒せ。今の汝らには容易いことだろう?」

 「まぁそうだな。一度灰喰竜を倒した身としては、技などは一度見ているし、初見の時よりは容易いのかもしれないな」

 「まぁ我はそんなに甘くはない。あの時の我が使わなかった技など沢山ある!」

 灰喰竜は翼を広げ、口を大きく開く。

 「我の技を受け、素質解放の糧にするといい。ただし、この技を受けて耐えられた者だけにその資格はある」

 「何?」

 「暴食の目覚めグラトニー・アウェークニング

 「ぐっ!」

 ミラが突然苦しみ始める。

 「口を開けたのはただのフェイントだ。本当の技は見た対象一人を暴食に目覚めさせる」

 「暴食を目覚めさせる?」

 「リュート…」

 「大丈夫か?ミラ?」

 「た、食べたい…」

 「えっ?」

 「リュート…私から離れてくれ…。リュートを見ていると食べたくなってしまう」

 「この技は普段から欲性している者ほどよく効く。この技を受けたものは自分の大切なものを食べたくなり、食べないと気がすまなくなる」

 「しっかりしろ!ミラ!」

 「す、すまないリュート。もう我慢が…」

 ミラが普段見せたことの無い表情でリュートを見つめる。その目つきは獲物を前にした獣のようだ。

 「ハッハッハ!汝らでお互い潰し合うが良い!」

 「リュート!すまない!」

 ミラが獣のようにリュートに飛びかかる。しかし、リュートがそれを避けることは無かった。

 「ガブッ!」

 リュートの左腕がミラに噛まれる。

 「ぐっ…どうだミラ?これで少しは落ち着いたか?」

 「な、何故避けなかったんだリュート?」

 「こうした方が良いような気がした。それに俺はミラを信じているさ」

 「ほう。汝は面白い行動に出たな。これは…」

 「リュート…。そこまでして、私の事を?」

 ドクンッ!自分の不甲斐なさとリュートに信頼されているという感情が、ミラの中で爆発した。

 『心理障壁決壊を確認しました。素質解放します』

 ミラの素質が溢れ出したのだった。
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