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77 不穏な計画
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「くそ! くそ! チクショウが!」
「王子。落ち着いてください」
「落ち着けだと!? ふざけるな! これが落ち着いてなどいられるものか。あの女、絶対にあの女が何かしやがったんだ」
すましたあの女が無様にゲロを吐く様を思いっきり笑ってやるつもりだったのに。どうして、どうして母上がこんな目に。ちくしょう。こんな理不尽が許されていいのか?
「貴様らも貴様らだ。母上が一服盛られるのを黙って見ているとは、この無能共が!!」
近くにいた侍女の顔を思いっきり殴りつけてやる。しかし……ええい、一発では気が済まん。
倒れた侍女を何度も何度も踏みつける。
「貴様らが、貴様らが無能だから!」
「も、申し訳ありません」
「チッ」
誰も彼もが俺の足を引っ張る。だからだ。だから何もかもが上手くいかないのだ。それなのに俺のせいにばかりしやがって。
「母上、今日のことは父上に報告しましょう。そしてドロテア家に重い罰を与えるのです」
「よしなさい。あの人をこの件に関わらせるのは悪手よ」
横たえていた体を起こす母上の顔色は青く、ベッドの脇には洗面器がいくつも用意されている。
「どうしてですか、今回の騒動を知ればドロテア家に甘い父上だって考えを改めてくれるはずです」
「それはないわ。あの人は昔、ジオルドに命を救われたことを馬鹿みたいに感謝しているから。ここで騒いでも監視の目がキツくなるだけだわ」
「それでは、それでは泣き寝入りをしろと言うのですか? あの女は王家の顔に泥を塗ったのですよ」
「おお、ゲルド、私の可愛い子。心配はいらないわ。あの小娘にはちゃんと贖わせるから。これを見なさい」
母上が手に取ったもの、それはベッドの脇に置かれていた小瓶だった。
「それは何なのですか?」
「これは『マヒナの香』と言うもので、普段は無味無臭、でも人が発する魔力に触れると揮発する特性があるの。そして揮発した『マヒナの香』を吸い込んだ者は意識はあるのに体は動かせない、俗に言う金縛りの状態に陥るのよ」
「つまりそれは……」
「今度行われる私の誕生日会。夜会を開くことを理由にドロテアの者達には城で一泊させるわ。そこで小娘のベッドに『マヒナの香』を仕込めば……後は分かるわね?」
「よ、良いのですか? それこそ父上の耳に入れば厄介なことになるのでは?」
あれ程の美貌だ。襲ってやろうと思ったことは一度や二度ではない。だが類稀なる魔法の実力者であり、ドロテア家が父上のお気に入りであるという事実が二の足を踏ませ続けてきた。……もしもそれが無くなるとしたら?
「おお、ゲルド。何て情けないことを言うの。良いですか、よくお聞きなさい。私の生まれた国では力こそが全て。それ故に上に立つ者は誰もが力ある優れた者達ばかりだったわ。とくに私の父、つまりお前のお爺様は強き国を率いるのに相応しい本物の強者で、お前にはその血が流れているのよ」
母上の故郷にして戦士の国『ヴァイキング』。この国の者達はその力を恐れて蛮族の国などと呼ぶが、近頃は俺のことを認めないこんな国よりも、母上の国こそが俺にとって真の祖国なのではと感じている。
「いい、泣き言に価値などないわ。力のない者は何をされても仕方がないの。だから私はあの小娘の行動にも怒ってはいないわ。むしろ親近感すら覚えている。そしてだからこそ、教えてやらねばならないのよ。どちらが上かを。所詮個人の才など真の力、すなわち権力の前では取るに足らないということを。貴方達、あれを」
母上の合図でワゴンを押した侍女が部屋に入ってくる。台の上に乗っているのは性的な用途の道具、それも極めてアブノーマルなものばかりだ。中には違法な薬物まである。
「ヤるからには徹底的にやりなさい。それこそ、貴方以外の人間には服の下を見せられなくなるくらいに」
自然と喉が鳴った。
最高だ。やはり母上は最高だ。
「王のことは気にしなくていいわ。そもそも貴方とあの小娘は遅かれ早かれ婚約者となり、いずれは結婚するのだから。少し早めに子供を作ったところで誰も、あの人も文句など言わないでしょう。勿論それは当人が何も言わなければの話だけど。……どうかしら? あの生意気は小娘を調教する自信があるかしら?」
挑発的な母上の言葉を受けて、俺はもう一度台の上にある数々の道具を見た。そしてあの人間離れした美しさを持つ女を欲望のままに蹂躙する様を思い浮かべる。するとどうだ、今まで胸の内を占めていたドス黒い怒りの感情が、喜びの渦となって下半身に流れ込んで来るではないか。
迷う必要など、どこにもない。
「お任せください母上。あの女に己の分際というものを徹底的に叩き込み、必ずやこの度の非礼を侘びさせてみせます」
「良い答えよ、それでこそ私のゲルド。ふふ。今年の誕生日はどうやらとっても素敵なプレゼントが貰えそうね」
「王子。落ち着いてください」
「落ち着けだと!? ふざけるな! これが落ち着いてなどいられるものか。あの女、絶対にあの女が何かしやがったんだ」
すましたあの女が無様にゲロを吐く様を思いっきり笑ってやるつもりだったのに。どうして、どうして母上がこんな目に。ちくしょう。こんな理不尽が許されていいのか?
「貴様らも貴様らだ。母上が一服盛られるのを黙って見ているとは、この無能共が!!」
近くにいた侍女の顔を思いっきり殴りつけてやる。しかし……ええい、一発では気が済まん。
倒れた侍女を何度も何度も踏みつける。
「貴様らが、貴様らが無能だから!」
「も、申し訳ありません」
「チッ」
誰も彼もが俺の足を引っ張る。だからだ。だから何もかもが上手くいかないのだ。それなのに俺のせいにばかりしやがって。
「母上、今日のことは父上に報告しましょう。そしてドロテア家に重い罰を与えるのです」
「よしなさい。あの人をこの件に関わらせるのは悪手よ」
横たえていた体を起こす母上の顔色は青く、ベッドの脇には洗面器がいくつも用意されている。
「どうしてですか、今回の騒動を知ればドロテア家に甘い父上だって考えを改めてくれるはずです」
「それはないわ。あの人は昔、ジオルドに命を救われたことを馬鹿みたいに感謝しているから。ここで騒いでも監視の目がキツくなるだけだわ」
「それでは、それでは泣き寝入りをしろと言うのですか? あの女は王家の顔に泥を塗ったのですよ」
「おお、ゲルド、私の可愛い子。心配はいらないわ。あの小娘にはちゃんと贖わせるから。これを見なさい」
母上が手に取ったもの、それはベッドの脇に置かれていた小瓶だった。
「それは何なのですか?」
「これは『マヒナの香』と言うもので、普段は無味無臭、でも人が発する魔力に触れると揮発する特性があるの。そして揮発した『マヒナの香』を吸い込んだ者は意識はあるのに体は動かせない、俗に言う金縛りの状態に陥るのよ」
「つまりそれは……」
「今度行われる私の誕生日会。夜会を開くことを理由にドロテアの者達には城で一泊させるわ。そこで小娘のベッドに『マヒナの香』を仕込めば……後は分かるわね?」
「よ、良いのですか? それこそ父上の耳に入れば厄介なことになるのでは?」
あれ程の美貌だ。襲ってやろうと思ったことは一度や二度ではない。だが類稀なる魔法の実力者であり、ドロテア家が父上のお気に入りであるという事実が二の足を踏ませ続けてきた。……もしもそれが無くなるとしたら?
「おお、ゲルド。何て情けないことを言うの。良いですか、よくお聞きなさい。私の生まれた国では力こそが全て。それ故に上に立つ者は誰もが力ある優れた者達ばかりだったわ。とくに私の父、つまりお前のお爺様は強き国を率いるのに相応しい本物の強者で、お前にはその血が流れているのよ」
母上の故郷にして戦士の国『ヴァイキング』。この国の者達はその力を恐れて蛮族の国などと呼ぶが、近頃は俺のことを認めないこんな国よりも、母上の国こそが俺にとって真の祖国なのではと感じている。
「いい、泣き言に価値などないわ。力のない者は何をされても仕方がないの。だから私はあの小娘の行動にも怒ってはいないわ。むしろ親近感すら覚えている。そしてだからこそ、教えてやらねばならないのよ。どちらが上かを。所詮個人の才など真の力、すなわち権力の前では取るに足らないということを。貴方達、あれを」
母上の合図でワゴンを押した侍女が部屋に入ってくる。台の上に乗っているのは性的な用途の道具、それも極めてアブノーマルなものばかりだ。中には違法な薬物まである。
「ヤるからには徹底的にやりなさい。それこそ、貴方以外の人間には服の下を見せられなくなるくらいに」
自然と喉が鳴った。
最高だ。やはり母上は最高だ。
「王のことは気にしなくていいわ。そもそも貴方とあの小娘は遅かれ早かれ婚約者となり、いずれは結婚するのだから。少し早めに子供を作ったところで誰も、あの人も文句など言わないでしょう。勿論それは当人が何も言わなければの話だけど。……どうかしら? あの生意気は小娘を調教する自信があるかしら?」
挑発的な母上の言葉を受けて、俺はもう一度台の上にある数々の道具を見た。そしてあの人間離れした美しさを持つ女を欲望のままに蹂躙する様を思い浮かべる。するとどうだ、今まで胸の内を占めていたドス黒い怒りの感情が、喜びの渦となって下半身に流れ込んで来るではないか。
迷う必要など、どこにもない。
「お任せください母上。あの女に己の分際というものを徹底的に叩き込み、必ずやこの度の非礼を侘びさせてみせます」
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