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116 スイーツ店で
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「あんなの反則だよ」
すっかり行きつけとなったスイーツ店のテーブルに突っ伏す。
せっかくオオルバさんに凄い杖を貰ったのに、相手がアリアってだけで手も足も出なくなるなんて思わなかった。S指定の魔物を倒してちょっとは魔法使いとして成長したつもりだったのに、何もかも否定された気分。いや、もちろんあれがアリアじゃないのは分かってる。分かってるけど……。
「は~。へこんじゃう」
「ドロシーさんでも勝ち負け気にしたりするんだな」
その声に顔を上げれば、テーブルを挟んだ正面の席、そこで赤い髪の男の子が意外そうな顔をしていた。
「ごめんね。せっかくパフェ食べに来たのに愚痴っちゃって」
「いいって。実際ドルドさんの能力ちょっと反則だよな。姿はまだしもコピーした相手の魔法まで使えるって、ちょっと凄すぎないか?」
「ドッペル族の肉体は個体が放つエーテルの振動を取り込んでそれを正確に再現できるの。つまり生まれた時から変身魔法を極めているようなもので、吸血鬼やエルフよりも神格種に近いって言われてるんだよ」
テーブルに備え付けられているメニュー表を開く。
何を注文しようかな? 正直気分が落ち込んでる時はあまりスイーツを食べようって気にならないけど、私が何も食べないとせっかくパフェを食べに来たレオ君が気を使うかもしれない。
「技や魔法までコピーできるなら無敵じゃないか? 少なくとも負けることはないよな」
「それがそうでもないみたい。確かに技や魔法をコピーできるのは凄いけど、道具までは再現できないから、ただコピーするだけじゃあ勝てない場合が多いんだって」
魔法使いにしろ騎士にしろ、優れた使い手は自分に最適な武器を使用する。だから道具のアドバンテージの分、ただコピーするだけのドッペル族が不利となる。
「ああ、それで途中からアリアさんの姿になってたのか」
「うん。まずは相手の姿に変化することで相手の記憶を読む。その中から相手が最も苦手なものへと変化する。これがドッペル族の基本的な戦い方って言われてるんだよ。……はぁ、分かってたのになぁ~」
もう一度テーブルに突っ伏す。ドルドさんが変身したアリアは私の記憶を元にしてるから完璧とは言えなかった。でも完璧じゃない分、余計にやりにくかった。私が苦手とする部分を集めてできたアリアって感じで。それでも冷静に立ち回れば勝機は十分あったのに。
「元気出せって。ほら、ここのパフェ美味しんだろ? 奢るぜ」
「え? ううん。いいよ、いいよ。っていうか、むしろ私が奢るからレオ君は何でも好きなもの頼んで」
まだ学生のレオ君に払わせるわけにはいかない。レオ君は何か言いたそうな顔をしたけど、メニュー表を彼の目の前に置くことでそれを遮った。
「ほら、このパフェが前話したプププ三盛りパフェだよ。美味しいけど、すっごく大きいから頼むときは気をつけてね」
「大丈夫。それくらい平気」
「あのねアリア、アリアの基準は人とちが……って、アリア!? それにーー」
「やぁ、私の夜空。このようなところで会えるとは、生まれて初めて己の幸運に感謝したよ」
いつの間にか私達のテーブルのすぐそばに立っていたアリア。その横でガルドさんがニッコリと微笑んだ。
「な、何で二人が一緒に?」
「今日は教会の用事でドロテア家に挨拶に行ってきたのだよ。それで私の月と出掛けたいとドロテア家当主に頼んだら快く了承してもらえてね。行きたいところはあるかと聞いたら彼女がここだと」
「そ、そうなんだ」
アリアは王子と婚約しているのにあのお父様がデートを許すなんて……王子とよりも聖人とくっつけたいと思ってる? 教会の権力を思えばありえない話じゃないけど、婚約を発表したラルド王子がそれを許すのかな? ……う~ん。お父様が新しい部隊を持てたこといい、家を出たせいか前はあんなに単純だと思っていたお父様の考えが全く分からなくなってきた。
「レオ、久しぶり」
「ああ。それとこの間は本当にありがとう。お礼が遅くなってすまない」
レオ君は席から立ち上がるとアリアに深く頭を下げた。
「レオ君のせいじゃないんだよ。私がまだドロテア家には近付かない方がいいってレオ君に言ったせいなの」
私の為とはいえ、レオ君はドロテア家の屋敷に不法侵入して、屋敷やガーディアンを破壊している。勿論それは既に不問になっている。あの時の勝負、お父様が門弟の人たちを従えていたように、私がレオ君という助力を得たのも勝負の範疇だからだ。それでもあのお父様がレオ君に対してどんな感情を抱いているのかわからない以上、無闇に接触しない方がいいと、アリアにお礼を言いに行こうとするレオ君を私が止めたのだ。
「…………」
アリアはやけに長い間レオ君を見つめると、唐突にその隣に腰を下ろした。
「ドロシー嬢、私も相席いいかな?」
「えっ!? え、ええ。ど、どうぞ」
「ありがとう」
そう言ってガルドさんが私の横に腰を下ろす……のは状況的に仕方ないとして、何でアリアはレオ君の隣に座ったんだろう? 普通こういう時は男女で別れるものじゃないかな? それに私お姉ちゃんなのに。お姉ちゃんの私よりもレオ君の隣の方が良いってこと? それにレオ君もなんかちょっと嬉しそうな顔してるし。何だろう? なんかちょっとだけモヤモヤーー
「ふふ」
その笑い声にハッとする。
「え? な、何ですか?」
「いや、悩む君も魅力的だと思ってね。よくよく考えるといい。私は君のどんな決断でも全力でサポートしよう」
何もかも見透かしているような黄金の瞳から、私は思わず目を逸らした。
すっかり行きつけとなったスイーツ店のテーブルに突っ伏す。
せっかくオオルバさんに凄い杖を貰ったのに、相手がアリアってだけで手も足も出なくなるなんて思わなかった。S指定の魔物を倒してちょっとは魔法使いとして成長したつもりだったのに、何もかも否定された気分。いや、もちろんあれがアリアじゃないのは分かってる。分かってるけど……。
「は~。へこんじゃう」
「ドロシーさんでも勝ち負け気にしたりするんだな」
その声に顔を上げれば、テーブルを挟んだ正面の席、そこで赤い髪の男の子が意外そうな顔をしていた。
「ごめんね。せっかくパフェ食べに来たのに愚痴っちゃって」
「いいって。実際ドルドさんの能力ちょっと反則だよな。姿はまだしもコピーした相手の魔法まで使えるって、ちょっと凄すぎないか?」
「ドッペル族の肉体は個体が放つエーテルの振動を取り込んでそれを正確に再現できるの。つまり生まれた時から変身魔法を極めているようなもので、吸血鬼やエルフよりも神格種に近いって言われてるんだよ」
テーブルに備え付けられているメニュー表を開く。
何を注文しようかな? 正直気分が落ち込んでる時はあまりスイーツを食べようって気にならないけど、私が何も食べないとせっかくパフェを食べに来たレオ君が気を使うかもしれない。
「技や魔法までコピーできるなら無敵じゃないか? 少なくとも負けることはないよな」
「それがそうでもないみたい。確かに技や魔法をコピーできるのは凄いけど、道具までは再現できないから、ただコピーするだけじゃあ勝てない場合が多いんだって」
魔法使いにしろ騎士にしろ、優れた使い手は自分に最適な武器を使用する。だから道具のアドバンテージの分、ただコピーするだけのドッペル族が不利となる。
「ああ、それで途中からアリアさんの姿になってたのか」
「うん。まずは相手の姿に変化することで相手の記憶を読む。その中から相手が最も苦手なものへと変化する。これがドッペル族の基本的な戦い方って言われてるんだよ。……はぁ、分かってたのになぁ~」
もう一度テーブルに突っ伏す。ドルドさんが変身したアリアは私の記憶を元にしてるから完璧とは言えなかった。でも完璧じゃない分、余計にやりにくかった。私が苦手とする部分を集めてできたアリアって感じで。それでも冷静に立ち回れば勝機は十分あったのに。
「元気出せって。ほら、ここのパフェ美味しんだろ? 奢るぜ」
「え? ううん。いいよ、いいよ。っていうか、むしろ私が奢るからレオ君は何でも好きなもの頼んで」
まだ学生のレオ君に払わせるわけにはいかない。レオ君は何か言いたそうな顔をしたけど、メニュー表を彼の目の前に置くことでそれを遮った。
「ほら、このパフェが前話したプププ三盛りパフェだよ。美味しいけど、すっごく大きいから頼むときは気をつけてね」
「大丈夫。それくらい平気」
「あのねアリア、アリアの基準は人とちが……って、アリア!? それにーー」
「やぁ、私の夜空。このようなところで会えるとは、生まれて初めて己の幸運に感謝したよ」
いつの間にか私達のテーブルのすぐそばに立っていたアリア。その横でガルドさんがニッコリと微笑んだ。
「な、何で二人が一緒に?」
「今日は教会の用事でドロテア家に挨拶に行ってきたのだよ。それで私の月と出掛けたいとドロテア家当主に頼んだら快く了承してもらえてね。行きたいところはあるかと聞いたら彼女がここだと」
「そ、そうなんだ」
アリアは王子と婚約しているのにあのお父様がデートを許すなんて……王子とよりも聖人とくっつけたいと思ってる? 教会の権力を思えばありえない話じゃないけど、婚約を発表したラルド王子がそれを許すのかな? ……う~ん。お父様が新しい部隊を持てたこといい、家を出たせいか前はあんなに単純だと思っていたお父様の考えが全く分からなくなってきた。
「レオ、久しぶり」
「ああ。それとこの間は本当にありがとう。お礼が遅くなってすまない」
レオ君は席から立ち上がるとアリアに深く頭を下げた。
「レオ君のせいじゃないんだよ。私がまだドロテア家には近付かない方がいいってレオ君に言ったせいなの」
私の為とはいえ、レオ君はドロテア家の屋敷に不法侵入して、屋敷やガーディアンを破壊している。勿論それは既に不問になっている。あの時の勝負、お父様が門弟の人たちを従えていたように、私がレオ君という助力を得たのも勝負の範疇だからだ。それでもあのお父様がレオ君に対してどんな感情を抱いているのかわからない以上、無闇に接触しない方がいいと、アリアにお礼を言いに行こうとするレオ君を私が止めたのだ。
「…………」
アリアはやけに長い間レオ君を見つめると、唐突にその隣に腰を下ろした。
「ドロシー嬢、私も相席いいかな?」
「えっ!? え、ええ。ど、どうぞ」
「ありがとう」
そう言ってガルドさんが私の横に腰を下ろす……のは状況的に仕方ないとして、何でアリアはレオ君の隣に座ったんだろう? 普通こういう時は男女で別れるものじゃないかな? それに私お姉ちゃんなのに。お姉ちゃんの私よりもレオ君の隣の方が良いってこと? それにレオ君もなんかちょっと嬉しそうな顔してるし。何だろう? なんかちょっとだけモヤモヤーー
「ふふ」
その笑い声にハッとする。
「え? な、何ですか?」
「いや、悩む君も魅力的だと思ってね。よくよく考えるといい。私は君のどんな決断でも全力でサポートしよう」
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