婚約者の地位? 天才な妹に勝てない私は婚約破棄して自由に生きます

名無しの夜

文字の大きさ
70 / 149
連載

116 スイーツ店で

しおりを挟む
「あんなの反則だよ」

 すっかり行きつけとなったスイーツ店のテーブルに突っ伏す。

 せっかくオオルバさんに凄い杖を貰ったのに、相手がアリアってだけで手も足も出なくなるなんて思わなかった。S指定の魔物を倒してちょっとは魔法使いとして成長したつもりだったのに、何もかも否定された気分。いや、もちろんあれがアリアじゃないのは分かってる。分かってるけど……。

「は~。へこんじゃう」
「ドロシーさんでも勝ち負け気にしたりするんだな」

 その声に顔を上げれば、テーブルを挟んだ正面の席、そこで赤い髪の男の子が意外そうな顔をしていた。

「ごめんね。せっかくパフェ食べに来たのに愚痴っちゃって」
「いいって。実際ドルドさんの能力ちょっと反則だよな。姿はまだしもコピーした相手の魔法まで使えるって、ちょっと凄すぎないか?」
「ドッペル族の肉体は個体が放つエーテルの振動を取り込んでそれを正確に再現できるの。つまり生まれた時から変身魔法を極めているようなもので、吸血鬼やエルフよりも神格種に近いって言われてるんだよ」

 テーブルに備え付けられているメニュー表を開く。

 何を注文しようかな? 正直気分が落ち込んでる時はあまりスイーツを食べようって気にならないけど、私が何も食べないとせっかくパフェを食べに来たレオ君が気を使うかもしれない。

「技や魔法までコピーできるなら無敵じゃないか? 少なくとも負けることはないよな」
「それがそうでもないみたい。確かに技や魔法をコピーできるのは凄いけど、道具までは再現できないから、ただコピーするだけじゃあ勝てない場合が多いんだって」

 魔法使いにしろ騎士にしろ、優れた使い手は自分に最適な武器を使用する。だから道具のアドバンテージの分、ただコピーするだけのドッペル族が不利となる。

「ああ、それで途中からアリアさんの姿になってたのか」
「うん。まずは相手の姿に変化することで相手の記憶を読む。その中から相手が最も苦手なものへと変化する。これがドッペル族の基本的な戦い方って言われてるんだよ。……はぁ、分かってたのになぁ~」

 もう一度テーブルに突っ伏す。ドルドさんが変身したアリアは私の記憶を元にしてるから完璧とは言えなかった。でも完璧じゃない分、余計にやりにくかった。私が苦手とする部分を集めてできたアリアって感じで。それでも冷静に立ち回れば勝機は十分あったのに。

「元気出せって。ほら、ここのパフェ美味しんだろ? 奢るぜ」
「え? ううん。いいよ、いいよ。っていうか、むしろ私が奢るからレオ君は何でも好きなもの頼んで」

 まだ学生のレオ君に払わせるわけにはいかない。レオ君は何か言いたそうな顔をしたけど、メニュー表を彼の目の前に置くことでそれを遮った。

「ほら、このパフェが前話したプププ三盛りパフェだよ。美味しいけど、すっごく大きいから頼むときは気をつけてね」
「大丈夫。それくらい平気」
「あのねアリア、アリアの基準は人とちが……って、アリア!? それにーー」
「やぁ、私の夜空。このようなところで会えるとは、生まれて初めて己の幸運に感謝したよ」

 いつの間にか私達のテーブルのすぐそばに立っていたアリア。その横でガルドさんがニッコリと微笑んだ。

「な、何で二人が一緒に?」
「今日は教会の用事でドロテア家に挨拶に行ってきたのだよ。それで私の月と出掛けたいとドロテア家当主に頼んだら快く了承してもらえてね。行きたいところはあるかと聞いたら彼女がここだと」
「そ、そうなんだ」

 アリアは王子と婚約しているのにあのお父様がデートを許すなんて……王子とよりも聖人とくっつけたいと思ってる? 教会の権力を思えばありえない話じゃないけど、婚約を発表したラルド王子がそれを許すのかな? ……う~ん。お父様が新しい部隊を持てたこといい、家を出たせいか前はあんなに単純だと思っていたお父様の考えが全く分からなくなってきた。

「レオ、久しぶり」
「ああ。それとこの間は本当にありがとう。お礼が遅くなってすまない」

 レオ君は席から立ち上がるとアリアに深く頭を下げた。

「レオ君のせいじゃないんだよ。私がまだドロテア家には近付かない方がいいってレオ君に言ったせいなの」

 私の為とはいえ、レオ君はドロテア家の屋敷に不法侵入して、屋敷やガーディアンを破壊している。勿論それは既に不問になっている。あの時の勝負、お父様が門弟の人たちを従えていたように、私がレオ君という助力を得たのも勝負の範疇だからだ。それでもあのお父様がレオ君に対してどんな感情を抱いているのかわからない以上、無闇に接触しない方がいいと、アリアにお礼を言いに行こうとするレオ君を私が止めたのだ。

「…………」

 アリアはやけに長い間レオ君を見つめると、唐突にその隣に腰を下ろした。

「ドロシー嬢、私も相席いいかな?」
「えっ!? え、ええ。ど、どうぞ」
「ありがとう」

 そう言ってガルドさんが私の横に腰を下ろす……のは状況的に仕方ないとして、何でアリアはレオ君の隣に座ったんだろう? 普通こういう時は男女で別れるものじゃないかな? それに私お姉ちゃんなのに。お姉ちゃんの私よりもレオ君の隣の方が良いってこと? それにレオ君もなんかちょっと嬉しそうな顔してるし。何だろう? なんかちょっとだけモヤモヤーー

「ふふ」

 その笑い声にハッとする。

「え? な、何ですか?」
「いや、悩む君も魅力的だと思ってね。よくよく考えるといい。私は君のどんな決断でも全力でサポートしよう」

 何もかも見透かしているような黄金の瞳から、私は思わず目を逸らした。
しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。