107 / 149
連載
153 冒険者の休憩
しおりを挟む
「できるかできないか、それを口にするのは容易い。だが未来を観測する力を持っていない以上、これから起こす予定の成否を語ることにどれほどの意味があるだろうか。いや、例え未来を観測する力があったとして、それがどうして真実これから起こる未来であると分かるのだろうか。過去からの経験? だとしらそれはどれほどの期間とそして客観性を用いられたものなのか。いや、そもそも主観と客観という概念そのものが時間と言う概念とーー」
「ほら、ドルド。これも美味しいですわよ。召し上がれ」
「むぐ」
アイスを乗せたイリーナさんのスプーンがドルドさんの口の中へと飛び込んだ。
「ドルドの話を要約しますと、やってみないと分からないが、恐らくは出来ると言っていますわ」
「では引き受けてくれるか?」
「アリリアナ組への依頼であれば、リーダーの意見を聞いてみないことには何とも言えませんわね」
アリリアナにドルドさん以外の視線が集まる。彼女はそれに対して親指と人差し指で丸を作った。
「オッケー。ドルドちゃんがやれるっていうならその依頼受けましょう」
「感謝する。私は皆に伝えて来るので、一時間後にここに集まってくれ。その後すぐにラミア退治を始めたいと思うが問題ないか?」
「私は大丈夫な感じだけど……」
アリリアナが確認するようにドルドさんへと視線を向けた。
一時間。ちょっと性急な気もするけど、現状を考えると今すぐ行動しても良いくらいなんだよね。
「どうですの? ……そう、では頼みますわ。ドルドは問題ないと言ってますわ」
「なら決定な感じで。あっ、ちなみに報酬とか消耗品の補償とか細かい打ち合わせは後日でオッケーなんで」
「助かる。それではまた後ほど」
よほど時間が惜しいのか、話が纏った途端メローナさんは部屋を出ていった。
「報酬について勝手に決めちゃったけど、大丈夫な感じ?」
「うん。私はいいと思うよ」
「私もですわ。この状況では協力するのはお互いの為ですし、報酬は少しもらえればラッキー程度で、今はラミアという共通の脅威に立ち向かうべきですわ」
「アハハ。ありがとね。それじゃあ話はまとまった感じで、またも駆け出し冒険者にはキツイ仕事だけど、今回はあのエルフがいることだし、注意深く、それでも気負いすぎない感じで頑張ろう。おー!」
アリリアナが拳を頭上に上げた。
えっと、ここは合わせるべきだよね?
「お、おー!」
「おー! ですわ」
ロロルドさんやドルドさんはやってくれなかったけど、イリーナさんが続いてくれてホッとする。
「それで一時間空いたけどどうする? 貸してもらった部屋で各々休んじゃう?」
ドルドさんが箸を置いたのを確認してから、アリリアナがそう切り出した。
「大して時間もありませんし、どうせここに集合なら私はここで待ってますわ」
「ドロシーは?」
「私もここでいいかな」
馬車の中で少し眠った影響か疲労などはまったく感じない。頭痛を除けば体調に不安はなかった。
「アリリアナこそ一晩中御者やってたんだから少し休んできたら?」
「ん~。なら隅っこでちょっとだけ仮眠取ろうかな。あっ、ガッツリ寝る気はないから普通に喋ってていい感じだからね」
そう言ってアリリアナは座布団を持って部屋の隅に移動した。
イリーナさんと目が合う。
「中途半端に時間が余りましたわね」
「そ、そうだね。イリーナさんは休まなくて大丈夫なの?」
「騎士を甘くみないでくださいな。必要なら今から三日三晩、不眠不休で戦えますわ」
「それは……えっと、凄いね」
ううっ、我ながらなんて面白みのない言葉。考えてみればせっかくクランを組んだと言うのにイリーナさんと二人で会話をする機会ってあんまりなかったかも。せっかくの機会だし、何か喋らないと、えっと、えっと……。
「ドロシーさんは休まなくて平気ですの?」
「え? う、うん。大丈夫だよ」
「そう。ならせっかくの時間ですし、冒険者らしい休憩をしてみませんこと?」
「冒険者らしい休憩?」
なんだろ? 冒険者に伝統的な休憩方法があるなんて聞いたことないんだけど。
「ロロルド。持ってまして?」
「ございます。お嬢様」
イリーナさんの背後に控えていたロロルドさんが対面へと移動する。そんな彼が取り出したのは……
「トランプ?」
「どうです? お小遣い程度の金額を掛けて」
なるほど。冒険者はギルドによって暴力行為を徹底的に禁じられているから、その代わりとばかりに賭けごとに興じる人が多いって聞いたことがある。ギルドもガス抜きは必要と考えているようで、賭けごとについては禁止どころか、むしろ賭場を開くなど推奨しているふしさえある。
私としては友達と賭けごとってあんまりしたくないんだけど……
「どうします? やりますの?」
ううっ。イリーナさん、すごくやりたそうな顔してる。ひょっとしてギャンブルが好きなのかな? そんなに時間もないし、ちょっと遊ぶだけなら大丈夫だよね?
「じゃあ、少しだけ」
こうしてイリーナさんと初めてトランプで遊ぶことになった。……だけれどもーー
「レイズ! レイズですわ!!」
「ええっ!? あの、そろそろ止めた方が」
既にお小遣いと言うには些か大きい額が動いた後なのに、ここに来てポットが今まで最大に膨れ上がっちゃった。
「お黙りなさい! どうしますの? 受けますの? 降りますの?」
目、目が怖い。イリーナさん、もしかしなくても負けた分を一気に取り戻そうとして負けを重ねるタイプだ。助けを求めたいけど、アリリアナは寝てるし、ロロルドさんはディーラーに専念。そしてドルドさんはポーカーに興味があるのか、イリーナさんの背中に抱きついてハンドを見てる。
イリーナさんが怒りに体を揺らす度に背中にいるドルドさん(少女姿)が揺れて、ちょっと、いや、かなり可愛い。私の背中にも来てくれないかな?
ドルドさんを見てたら血走った瞳と目が合って、私は慌てて視線をそらした。
正直、ここで降りて少しでもイリーナさんにお金を返したい気持ちはあるけど、多分イリーナさんは相手がわざと負けたら嫌がると思う。それにアリリアナだってここでそういうことはしない気がした。
「……コール」
「ふっ。掛かりましたわね。キングのスリーカードですわ」
「えっと、ストレートフラッシュです」
「んなぁあああっ!? つ、つ、強すぎますわ」
イリーナさんの額が盛大にテーブルへと突っ伏した。それから程なくしてアリリアナが起き、そしてメローナさんが戻ってきた。
「ほら、ドルド。これも美味しいですわよ。召し上がれ」
「むぐ」
アイスを乗せたイリーナさんのスプーンがドルドさんの口の中へと飛び込んだ。
「ドルドの話を要約しますと、やってみないと分からないが、恐らくは出来ると言っていますわ」
「では引き受けてくれるか?」
「アリリアナ組への依頼であれば、リーダーの意見を聞いてみないことには何とも言えませんわね」
アリリアナにドルドさん以外の視線が集まる。彼女はそれに対して親指と人差し指で丸を作った。
「オッケー。ドルドちゃんがやれるっていうならその依頼受けましょう」
「感謝する。私は皆に伝えて来るので、一時間後にここに集まってくれ。その後すぐにラミア退治を始めたいと思うが問題ないか?」
「私は大丈夫な感じだけど……」
アリリアナが確認するようにドルドさんへと視線を向けた。
一時間。ちょっと性急な気もするけど、現状を考えると今すぐ行動しても良いくらいなんだよね。
「どうですの? ……そう、では頼みますわ。ドルドは問題ないと言ってますわ」
「なら決定な感じで。あっ、ちなみに報酬とか消耗品の補償とか細かい打ち合わせは後日でオッケーなんで」
「助かる。それではまた後ほど」
よほど時間が惜しいのか、話が纏った途端メローナさんは部屋を出ていった。
「報酬について勝手に決めちゃったけど、大丈夫な感じ?」
「うん。私はいいと思うよ」
「私もですわ。この状況では協力するのはお互いの為ですし、報酬は少しもらえればラッキー程度で、今はラミアという共通の脅威に立ち向かうべきですわ」
「アハハ。ありがとね。それじゃあ話はまとまった感じで、またも駆け出し冒険者にはキツイ仕事だけど、今回はあのエルフがいることだし、注意深く、それでも気負いすぎない感じで頑張ろう。おー!」
アリリアナが拳を頭上に上げた。
えっと、ここは合わせるべきだよね?
「お、おー!」
「おー! ですわ」
ロロルドさんやドルドさんはやってくれなかったけど、イリーナさんが続いてくれてホッとする。
「それで一時間空いたけどどうする? 貸してもらった部屋で各々休んじゃう?」
ドルドさんが箸を置いたのを確認してから、アリリアナがそう切り出した。
「大して時間もありませんし、どうせここに集合なら私はここで待ってますわ」
「ドロシーは?」
「私もここでいいかな」
馬車の中で少し眠った影響か疲労などはまったく感じない。頭痛を除けば体調に不安はなかった。
「アリリアナこそ一晩中御者やってたんだから少し休んできたら?」
「ん~。なら隅っこでちょっとだけ仮眠取ろうかな。あっ、ガッツリ寝る気はないから普通に喋ってていい感じだからね」
そう言ってアリリアナは座布団を持って部屋の隅に移動した。
イリーナさんと目が合う。
「中途半端に時間が余りましたわね」
「そ、そうだね。イリーナさんは休まなくて大丈夫なの?」
「騎士を甘くみないでくださいな。必要なら今から三日三晩、不眠不休で戦えますわ」
「それは……えっと、凄いね」
ううっ、我ながらなんて面白みのない言葉。考えてみればせっかくクランを組んだと言うのにイリーナさんと二人で会話をする機会ってあんまりなかったかも。せっかくの機会だし、何か喋らないと、えっと、えっと……。
「ドロシーさんは休まなくて平気ですの?」
「え? う、うん。大丈夫だよ」
「そう。ならせっかくの時間ですし、冒険者らしい休憩をしてみませんこと?」
「冒険者らしい休憩?」
なんだろ? 冒険者に伝統的な休憩方法があるなんて聞いたことないんだけど。
「ロロルド。持ってまして?」
「ございます。お嬢様」
イリーナさんの背後に控えていたロロルドさんが対面へと移動する。そんな彼が取り出したのは……
「トランプ?」
「どうです? お小遣い程度の金額を掛けて」
なるほど。冒険者はギルドによって暴力行為を徹底的に禁じられているから、その代わりとばかりに賭けごとに興じる人が多いって聞いたことがある。ギルドもガス抜きは必要と考えているようで、賭けごとについては禁止どころか、むしろ賭場を開くなど推奨しているふしさえある。
私としては友達と賭けごとってあんまりしたくないんだけど……
「どうします? やりますの?」
ううっ。イリーナさん、すごくやりたそうな顔してる。ひょっとしてギャンブルが好きなのかな? そんなに時間もないし、ちょっと遊ぶだけなら大丈夫だよね?
「じゃあ、少しだけ」
こうしてイリーナさんと初めてトランプで遊ぶことになった。……だけれどもーー
「レイズ! レイズですわ!!」
「ええっ!? あの、そろそろ止めた方が」
既にお小遣いと言うには些か大きい額が動いた後なのに、ここに来てポットが今まで最大に膨れ上がっちゃった。
「お黙りなさい! どうしますの? 受けますの? 降りますの?」
目、目が怖い。イリーナさん、もしかしなくても負けた分を一気に取り戻そうとして負けを重ねるタイプだ。助けを求めたいけど、アリリアナは寝てるし、ロロルドさんはディーラーに専念。そしてドルドさんはポーカーに興味があるのか、イリーナさんの背中に抱きついてハンドを見てる。
イリーナさんが怒りに体を揺らす度に背中にいるドルドさん(少女姿)が揺れて、ちょっと、いや、かなり可愛い。私の背中にも来てくれないかな?
ドルドさんを見てたら血走った瞳と目が合って、私は慌てて視線をそらした。
正直、ここで降りて少しでもイリーナさんにお金を返したい気持ちはあるけど、多分イリーナさんは相手がわざと負けたら嫌がると思う。それにアリリアナだってここでそういうことはしない気がした。
「……コール」
「ふっ。掛かりましたわね。キングのスリーカードですわ」
「えっと、ストレートフラッシュです」
「んなぁあああっ!? つ、つ、強すぎますわ」
イリーナさんの額が盛大にテーブルへと突っ伏した。それから程なくしてアリリアナが起き、そしてメローナさんが戻ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。