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195 悪戯
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「ちょっと二人とも、何してるの?」
決闘だなんて穏やかじゃない。それもアリアとイリーナが。組み合わせ自体は予想外……というほど予想外でもないかもだけど、とにかく止めないと。
「見ての通りこの躾のなってないガキンチョに教育してあげるところですわ」
「ガキンチョって……三つ違いだから、そこまで変わらないんじゃ……」
「何か言いまして?」
「ううん。な、なんでもないよ?」
ひえ~ん。イリーナ、賭け事で負けが込んでる時くらい目が血走ってるんだけど。ど、どうしよう?
「待てよ。今仕事中だぞ。そんなことしてる場合じゃないだろ」
レオ君が二人を引き離す。凄く格好良い。
「心配いりませんわ。すぐに終わりますので」
「勝つのは私」
「もう、アリア。イリーナを挑発しないの。そもそもこの騒動の原因はなんなの?」
二人を知る身としてはアリアが原因な気がしてならないんだけど、私はお姉ちゃんだから、妹が悪いって決めつけはよくないよね。まずは事情を聞かなきゃ。ていうか黙り込んでるセンカさんが怖いんだけど。時々忘れそうになるけど、今のアリアは王子の婚約者。それを知って喧嘩を売るイリーナもある意味凄い。
「そこのガキンチョが私に飲み物を持ってきたんですわ」
「え?」
と驚く私と、
「それがどうしたんだよ?」
今一つ事情を理解できない様子のレオ君。でも私にはもう説明はいらなかった。
「もしかし……なくてもなんか入ってた?」
「入ってましたわ。コーヒーの風味なんて跡形もなく蹴散らすヤバカラシが」
「うわぁ」
私も何度かやられたけど、あれって本当にトラウマレベルに強烈なんだよね。
「え? なんでそんなことを?」
レオ君の疑問ももっともだ。私も昔は妹の悪戯には手を焼いた。普段の大人しそうな性格とのギャップもあるから、ひょっとして嫌がらせなのかと疑った時期もあったけど、今なら分かる。アリアは私よりも妖精の血が濃い。だから悪戯という妖精の種族特性まで引き継いちゃってるんだ。
よくよく考えると、悪戯したい欲求自体は昔から私にも少しあった。特に妖精の力を発現してからはその気持ちが強まった気がする。さっきレオ君と自然と手を繋げたのも彼を驚かせたいという欲求があったのかもしれない。
……ううん。それだけじゃないよね。彼が好きだから手を繋ぎたいと思った。そこに嘘なんてない。
私のことよりも、今はアリアだ。学生時代寂しい青春を送った私が言うことじゃないけど、アリアは内向的で、私やお父様など、一部の人にしか興味を示さなかった。だから学校に友達がいるって話も疑ってたんだけど、こんな風に自分から人に関わっていけるなら心配はいらないよね。
「アリア……私、ちょっと安心したかも」
「姉妹揃って頭沸いてますの!?」
「えっ!? ……あっ! ああっ!! いや、違う。違うからね? 今のは、その、ほ、本当に違うから」
私の馬鹿。なんで声に出しちゃうかな。説明。ええっと。なんて説明しよう? というかイリーナのあの目、今更私が何を言っても聞いてくれなさそう。
「お~い。もうすぐ出発だってのに、何やってる感じ? この馬車にあと二人乗るんだから、荷物とかちゃんと片付けてよね」
「アリリアナ」
良かった! お願い。この状況をなんとかして。
「今から決闘なので、それが終わったらやりますわ」
「はい? え? どんな状況? 手短にお願いしたい感じなんだけど」
「実は……」
私は注文通り、なるべく簡潔に説明した。
「アハハ。なるほど。そういう感じね」
「笑いごとじゃありませんわ。売られた喧嘩は買う。それが貴族という高貴な家に生まれた者の宿命なのですわ」
高貴さを意識するなら賭けごとはやめた方がいいんじゃないかな? とは、流石に言えない。
「いや、それは妹ちゃんの仲良くしたいってサインなの。私もやられたし。ねぇドロシー」
「え? う、うん。妹は昔から気になった人にちょっかいをかける癖があって、でも気に入った人にしかしないから。それでさっきイリーナと仲良くしたいんだって分かって、思わず安心しちゃったの」
うわ、私すごい早口だ。
「…………そうなんですの?」
「…………」
「何黙ってるのよ。ほら、もう子供じゃないんだから、自分で謝りなさい」
銀色の髪を抑えて、困った妹の頭を下げさせる。アリアは不満そうにこちららを横目で見上げたけど、気づかないふりをする。
「そういうことでしたら、今回は許しますわ。でも私、食べ物で遊ぶの好きではないので、次やったら本当に決闘ですわよ」
「うん。絶対やらせないから。やらないよね?」
「…………」
「やらないって」
「本当ですの?」
当然だけど、イリーナの瞳には不信の念がありありと浮かんでいた。しかしこれは彼女が考えてるよりもずっと難しい問題だ。
妖精の悪戯は酷い場合になると人が死ぬほどのものもあるから、それに比べると今くらいのレベルで満足してくれるなら、あまり強くやめろとは言い難いんだよね。私たちが半人半神であることを説明できたらいいんだけど。難しいよ~。
「はい。じゃあ内輪揉めはそれくらいで終わりね。これから先は私たちだけなんだから、気を抜かない感じでお願い。マジで」
アリリアナにしてはかなり真剣な声音。それを聞いたイリーナが気持ちを切り替えるのが分かった。
「オッケー。じゃあ二人を乗せたら出発するわよ」
そうして私達は村人の救出へと向かうのだった。
決闘だなんて穏やかじゃない。それもアリアとイリーナが。組み合わせ自体は予想外……というほど予想外でもないかもだけど、とにかく止めないと。
「見ての通りこの躾のなってないガキンチョに教育してあげるところですわ」
「ガキンチョって……三つ違いだから、そこまで変わらないんじゃ……」
「何か言いまして?」
「ううん。な、なんでもないよ?」
ひえ~ん。イリーナ、賭け事で負けが込んでる時くらい目が血走ってるんだけど。ど、どうしよう?
「待てよ。今仕事中だぞ。そんなことしてる場合じゃないだろ」
レオ君が二人を引き離す。凄く格好良い。
「心配いりませんわ。すぐに終わりますので」
「勝つのは私」
「もう、アリア。イリーナを挑発しないの。そもそもこの騒動の原因はなんなの?」
二人を知る身としてはアリアが原因な気がしてならないんだけど、私はお姉ちゃんだから、妹が悪いって決めつけはよくないよね。まずは事情を聞かなきゃ。ていうか黙り込んでるセンカさんが怖いんだけど。時々忘れそうになるけど、今のアリアは王子の婚約者。それを知って喧嘩を売るイリーナもある意味凄い。
「そこのガキンチョが私に飲み物を持ってきたんですわ」
「え?」
と驚く私と、
「それがどうしたんだよ?」
今一つ事情を理解できない様子のレオ君。でも私にはもう説明はいらなかった。
「もしかし……なくてもなんか入ってた?」
「入ってましたわ。コーヒーの風味なんて跡形もなく蹴散らすヤバカラシが」
「うわぁ」
私も何度かやられたけど、あれって本当にトラウマレベルに強烈なんだよね。
「え? なんでそんなことを?」
レオ君の疑問ももっともだ。私も昔は妹の悪戯には手を焼いた。普段の大人しそうな性格とのギャップもあるから、ひょっとして嫌がらせなのかと疑った時期もあったけど、今なら分かる。アリアは私よりも妖精の血が濃い。だから悪戯という妖精の種族特性まで引き継いちゃってるんだ。
よくよく考えると、悪戯したい欲求自体は昔から私にも少しあった。特に妖精の力を発現してからはその気持ちが強まった気がする。さっきレオ君と自然と手を繋げたのも彼を驚かせたいという欲求があったのかもしれない。
……ううん。それだけじゃないよね。彼が好きだから手を繋ぎたいと思った。そこに嘘なんてない。
私のことよりも、今はアリアだ。学生時代寂しい青春を送った私が言うことじゃないけど、アリアは内向的で、私やお父様など、一部の人にしか興味を示さなかった。だから学校に友達がいるって話も疑ってたんだけど、こんな風に自分から人に関わっていけるなら心配はいらないよね。
「アリア……私、ちょっと安心したかも」
「姉妹揃って頭沸いてますの!?」
「えっ!? ……あっ! ああっ!! いや、違う。違うからね? 今のは、その、ほ、本当に違うから」
私の馬鹿。なんで声に出しちゃうかな。説明。ええっと。なんて説明しよう? というかイリーナのあの目、今更私が何を言っても聞いてくれなさそう。
「お~い。もうすぐ出発だってのに、何やってる感じ? この馬車にあと二人乗るんだから、荷物とかちゃんと片付けてよね」
「アリリアナ」
良かった! お願い。この状況をなんとかして。
「今から決闘なので、それが終わったらやりますわ」
「はい? え? どんな状況? 手短にお願いしたい感じなんだけど」
「実は……」
私は注文通り、なるべく簡潔に説明した。
「アハハ。なるほど。そういう感じね」
「笑いごとじゃありませんわ。売られた喧嘩は買う。それが貴族という高貴な家に生まれた者の宿命なのですわ」
高貴さを意識するなら賭けごとはやめた方がいいんじゃないかな? とは、流石に言えない。
「いや、それは妹ちゃんの仲良くしたいってサインなの。私もやられたし。ねぇドロシー」
「え? う、うん。妹は昔から気になった人にちょっかいをかける癖があって、でも気に入った人にしかしないから。それでさっきイリーナと仲良くしたいんだって分かって、思わず安心しちゃったの」
うわ、私すごい早口だ。
「…………そうなんですの?」
「…………」
「何黙ってるのよ。ほら、もう子供じゃないんだから、自分で謝りなさい」
銀色の髪を抑えて、困った妹の頭を下げさせる。アリアは不満そうにこちららを横目で見上げたけど、気づかないふりをする。
「そういうことでしたら、今回は許しますわ。でも私、食べ物で遊ぶの好きではないので、次やったら本当に決闘ですわよ」
「うん。絶対やらせないから。やらないよね?」
「…………」
「やらないって」
「本当ですの?」
当然だけど、イリーナの瞳には不信の念がありありと浮かんでいた。しかしこれは彼女が考えてるよりもずっと難しい問題だ。
妖精の悪戯は酷い場合になると人が死ぬほどのものもあるから、それに比べると今くらいのレベルで満足してくれるなら、あまり強くやめろとは言い難いんだよね。私たちが半人半神であることを説明できたらいいんだけど。難しいよ~。
「はい。じゃあ内輪揉めはそれくらいで終わりね。これから先は私たちだけなんだから、気を抜かない感じでお願い。マジで」
アリリアナにしてはかなり真剣な声音。それを聞いたイリーナが気持ちを切り替えるのが分かった。
「オッケー。じゃあ二人を乗せたら出発するわよ」
そうして私達は村人の救出へと向かうのだった。
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