8 / 16
ひえひえなお話
宛なき旅のはじまり
しおりを挟む
あるところにアテナという少女の姿をしたドールがいました。
金色の髪と緑色のキラキラした目を持つ、可愛らしいドールのアテナですが、今は一人ぼっちです。
アテナの中には、持ち主だった若い女性がアテナを海に落とした記憶だけが残されていました。
そこでアテナはかつての持ち主に会いに行こうと考えました。
会ったらきっと、喜んでくれる。
そしてまた、あの人と一緒に暮らすんだ。
そんな希望を持ちながら、アテナは来る日も来る日も歩き続けました。
ある日のこと、アテナはとうとうかつての持ち主である女性と会うことができました。
けれども女性は喜んでくれません。それどころか恐怖に満ちた顔でこう叫んだのです。
「なんてこと!海に捨てたから怒って復讐に来たんだわ!呪いの人形よ、頼むからどこかへ行ってちょうだい!」
その瞬間、アテナは悟りました。
この女性は自分を海にただ落としたのではなく、要らなくなって捨てたのだと。
アテナは悲しくなって、急いでその場から走り去りました。
コキコキと身体のあちこちから音がしましたが、それでも走ることをやめませんでした。
どれ程走り続けたことでしょう。気がつけば、世界は明るい色から暗い色へと変わっていました。
これからどうすればいいのだろう、とアテナは思いました。
帰る場所はもうありません。その上、行く宛だってないのです。
アテナはまた悲しくなりました。けれどもドールである彼女は泣くことができませんでした。
この夜、アテナは偶然見つけた公園のベンチの下で目を閉じました。
それからしばらく経った後のこと、突然どこからか声が聞こえました。
「あらあら、可愛いお人形さんねぇ」
アテナが目を開けると、そこには一人の老婆がいました。
老婆はアテナを家に連れて帰り、窓辺に座らせました。
「懐かしいわぁ。小さな頃はこういったお人形さんに憧れていたのよ」
それを聞いたアテナは嬉しくなりました。
新しい自分の居場所を見つけることができた気がしたのです。
けれども、幸せはそう長くは続きませんでした。
ある時、アテナは日に日に老婆の元気がなくなってきていることに気がつきました。
「おかしいわねぇ、もう少したくさん生きられると思ったんだけど」
老婆の弱々しい呟きを耳にしたアテナは、一つの悪い考えが浮かびました。
自分がここにいるからではないか、と。
自分さえいなければ、老婆は元気なままだったかもしれない、と。
かつての持ち主だった女性に言われたことが頭をよぎります。
呪いの人形。
あの人が言ったことは正しいのだろう、とアテナは強く思いました。
その夜、アテナは老婆が寝た隙にこっそり窓を開け、その外へ向かって飛び降りました。
幸い壊れることはなく、アテナはそのまま歩き出しました。そして老婆の前に再び姿を現すことはありませんでした。
アテナはたった一人で歩き続けました。
自分がいれば、一緒にいる誰かが不幸になる。
そう思ったアテナは、どこか一つの場所には留まらないことにしたのです。
こうして、アテナの宛なき旅は幕を開けました。
そしてこの小さく孤独なドールは、今もどこかで歩き続けていることでしょう。
呪いの人形である自分が、誰かを不幸にしないために。
金色の髪と緑色のキラキラした目を持つ、可愛らしいドールのアテナですが、今は一人ぼっちです。
アテナの中には、持ち主だった若い女性がアテナを海に落とした記憶だけが残されていました。
そこでアテナはかつての持ち主に会いに行こうと考えました。
会ったらきっと、喜んでくれる。
そしてまた、あの人と一緒に暮らすんだ。
そんな希望を持ちながら、アテナは来る日も来る日も歩き続けました。
ある日のこと、アテナはとうとうかつての持ち主である女性と会うことができました。
けれども女性は喜んでくれません。それどころか恐怖に満ちた顔でこう叫んだのです。
「なんてこと!海に捨てたから怒って復讐に来たんだわ!呪いの人形よ、頼むからどこかへ行ってちょうだい!」
その瞬間、アテナは悟りました。
この女性は自分を海にただ落としたのではなく、要らなくなって捨てたのだと。
アテナは悲しくなって、急いでその場から走り去りました。
コキコキと身体のあちこちから音がしましたが、それでも走ることをやめませんでした。
どれ程走り続けたことでしょう。気がつけば、世界は明るい色から暗い色へと変わっていました。
これからどうすればいいのだろう、とアテナは思いました。
帰る場所はもうありません。その上、行く宛だってないのです。
アテナはまた悲しくなりました。けれどもドールである彼女は泣くことができませんでした。
この夜、アテナは偶然見つけた公園のベンチの下で目を閉じました。
それからしばらく経った後のこと、突然どこからか声が聞こえました。
「あらあら、可愛いお人形さんねぇ」
アテナが目を開けると、そこには一人の老婆がいました。
老婆はアテナを家に連れて帰り、窓辺に座らせました。
「懐かしいわぁ。小さな頃はこういったお人形さんに憧れていたのよ」
それを聞いたアテナは嬉しくなりました。
新しい自分の居場所を見つけることができた気がしたのです。
けれども、幸せはそう長くは続きませんでした。
ある時、アテナは日に日に老婆の元気がなくなってきていることに気がつきました。
「おかしいわねぇ、もう少したくさん生きられると思ったんだけど」
老婆の弱々しい呟きを耳にしたアテナは、一つの悪い考えが浮かびました。
自分がここにいるからではないか、と。
自分さえいなければ、老婆は元気なままだったかもしれない、と。
かつての持ち主だった女性に言われたことが頭をよぎります。
呪いの人形。
あの人が言ったことは正しいのだろう、とアテナは強く思いました。
その夜、アテナは老婆が寝た隙にこっそり窓を開け、その外へ向かって飛び降りました。
幸い壊れることはなく、アテナはそのまま歩き出しました。そして老婆の前に再び姿を現すことはありませんでした。
アテナはたった一人で歩き続けました。
自分がいれば、一緒にいる誰かが不幸になる。
そう思ったアテナは、どこか一つの場所には留まらないことにしたのです。
こうして、アテナの宛なき旅は幕を開けました。
そしてこの小さく孤独なドールは、今もどこかで歩き続けていることでしょう。
呪いの人形である自分が、誰かを不幸にしないために。
0
あなたにおすすめの小説
ぼくのだいじなヒーラー
もちっぱち
絵本
台所でお母さんと喧嘩した。
遊んでほしくて駄々をこねただけなのに
怖い顔で怒っていたお母さん。
そんな時、不思議な空間に包まれてふわりと気持ちが軽くなった。
癒される謎の生き物に会えたゆうくんは楽しくなった。
お子様向けの作品です
ひらがな表記です。
ぜひ読んでみてください。
イラスト:ChatGPT(OpenAI)生成
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる