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幸福のギフト
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ソンジュは夢の世界からやってきました。
幸せな夢、悲しい夢、怖い夢。彼はいろんな夢を届けて回るお仕事をしています。
ある日ソンジュはベッドの上で涙を流しながら眠る一人の娘に出会いました。
この娘はどうして泣いているのだろう。
不思議に思ったソンジュは、娘の記憶を少しだけ覗いてみることにしました。
するとどうでしょう。娘の記憶の中は悲しく辛いことばかり。楽しい記憶が全くありません。
なんて可哀想な娘なんだろう。
ソンジュはせめて夢の中だけでも幸せを感じて欲しいと、とびきり明るい夢を選んで娘に贈りました。
すると娘は眠りつつも微笑みを浮かべました。
それを見たソンジュは、この娘をもっと幸せにしてあげたいと思うようになりました。
次の日、ソンジュは娘のことをよく知ろうと思い、一日中娘のことを観察しておりました。
娘の名はアルタといい、部屋の中で一人寂しく過ごしていました。
夕刻、部屋の外からは父親らしき男性の怒鳴り声が響いていました。
ソンジュは思いました。
アルタは父親に愛されていないんだ、と。
そこで彼はその日の晩、アルタに父親と仲良くお出かけをする夢を届けました。
ソンジュは毎日アルタに夢を届ける度に、アルタへの想いが強くなっていきました。
そんなある日のこと、ソンジュはアルタがこう呟いているのを聞きました。
「夢の中ではとっても幸せなのに、起きたら辛いことしか待っていない。こんなことならずっと夢の世界にいたいわ」
アルタはいつしか辛い現実よりも、幸せな夢の中にいたいと強く願うようになっていたのです。
そこでソンジュはその日の晩、夢の中でアルタの前に初めて姿を現しました。
彼の姿を見たアルタは驚きました。
「あなたは誰?」
「僕はソンジュ、夢の配達人さ。ずっと君に幸せな夢を届けていたんだ」
「そうだったのね、ありがとう」
ソンジュの話を聞いたアルタは笑顔でお礼を言いました。
どくん、とソンジュの胸が高鳴ります。
「どうしたの?」
「なんでもないよ。それでね、今日は君に特別なギフトがあるんだ」
「ギフト?」
「そう、ギフト」
ソンジュはそう言って小瓶を差し出しました。中にはキャンディーがひと粒入っています。
「あら、綺麗ね」
「起きてからこのキャンディーを食べれば、ずっと夢の中にいられるんだ。起きて辛い現実を見る必要なんてなくなる」
「本当!?」
アルタの顔は、さっきよりもぱぁっと明るくなりました。
「これさえ食べれば、あなたとずっと一緒にいられるのね!」
「そうだけど、なんで……」
「私に幸せな夢を届けてくれたのはあなたなんでしょう?私、そんな優しい人の隣にずっといたいの」
アルタは頬を紅く染めながら言いました。それを聞いたソンジュはとても嬉しくなりました。
「ありがとう。でも、一度外の世界にお帰り。キャンディーを食べたらまた会おうね」
「もちろんよ!」
アルタが消えた後、ソンジュはにんまりと笑みを浮かべました。
「やった……これでようやく彼女を僕のモノにできる……!」
ソンジュはこっそりアルタの夢の中に術を仕込んでいました。
彼女が夢の世界に依存し、夢を届けていた自分に心酔するように、と。
そうとは知らないアルタは目を覚ましました。手の中にはソンジュに渡された小瓶が握られています。
アルタは急いで瓶の蓋を開け、キャンディーを口に入れました。
口の中でころころと転がしていると、強い甘さが広がります。
キャンディーが全て口の中で溶けてなくなると、アルタは急に眠くなりました。
「これで、わたし……ずっと……ゆめの、なか…………」
こうしてアルタは永遠の眠りにつきました。
その表情はまるでソンジュに仕組まれたとは思えない程に、とても幸せそうな笑顔でした。
幸せな夢、悲しい夢、怖い夢。彼はいろんな夢を届けて回るお仕事をしています。
ある日ソンジュはベッドの上で涙を流しながら眠る一人の娘に出会いました。
この娘はどうして泣いているのだろう。
不思議に思ったソンジュは、娘の記憶を少しだけ覗いてみることにしました。
するとどうでしょう。娘の記憶の中は悲しく辛いことばかり。楽しい記憶が全くありません。
なんて可哀想な娘なんだろう。
ソンジュはせめて夢の中だけでも幸せを感じて欲しいと、とびきり明るい夢を選んで娘に贈りました。
すると娘は眠りつつも微笑みを浮かべました。
それを見たソンジュは、この娘をもっと幸せにしてあげたいと思うようになりました。
次の日、ソンジュは娘のことをよく知ろうと思い、一日中娘のことを観察しておりました。
娘の名はアルタといい、部屋の中で一人寂しく過ごしていました。
夕刻、部屋の外からは父親らしき男性の怒鳴り声が響いていました。
ソンジュは思いました。
アルタは父親に愛されていないんだ、と。
そこで彼はその日の晩、アルタに父親と仲良くお出かけをする夢を届けました。
ソンジュは毎日アルタに夢を届ける度に、アルタへの想いが強くなっていきました。
そんなある日のこと、ソンジュはアルタがこう呟いているのを聞きました。
「夢の中ではとっても幸せなのに、起きたら辛いことしか待っていない。こんなことならずっと夢の世界にいたいわ」
アルタはいつしか辛い現実よりも、幸せな夢の中にいたいと強く願うようになっていたのです。
そこでソンジュはその日の晩、夢の中でアルタの前に初めて姿を現しました。
彼の姿を見たアルタは驚きました。
「あなたは誰?」
「僕はソンジュ、夢の配達人さ。ずっと君に幸せな夢を届けていたんだ」
「そうだったのね、ありがとう」
ソンジュの話を聞いたアルタは笑顔でお礼を言いました。
どくん、とソンジュの胸が高鳴ります。
「どうしたの?」
「なんでもないよ。それでね、今日は君に特別なギフトがあるんだ」
「ギフト?」
「そう、ギフト」
ソンジュはそう言って小瓶を差し出しました。中にはキャンディーがひと粒入っています。
「あら、綺麗ね」
「起きてからこのキャンディーを食べれば、ずっと夢の中にいられるんだ。起きて辛い現実を見る必要なんてなくなる」
「本当!?」
アルタの顔は、さっきよりもぱぁっと明るくなりました。
「これさえ食べれば、あなたとずっと一緒にいられるのね!」
「そうだけど、なんで……」
「私に幸せな夢を届けてくれたのはあなたなんでしょう?私、そんな優しい人の隣にずっといたいの」
アルタは頬を紅く染めながら言いました。それを聞いたソンジュはとても嬉しくなりました。
「ありがとう。でも、一度外の世界にお帰り。キャンディーを食べたらまた会おうね」
「もちろんよ!」
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「やった……これでようやく彼女を僕のモノにできる……!」
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口の中でころころと転がしていると、強い甘さが広がります。
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「これで、わたし……ずっと……ゆめの、なか…………」
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