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06 逃亡者の朝
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眠りについたアリアロスは夢を見ています。
世界は真っ白で、なにもありません。
フワフワと体が浮かんでいる感覚があり、そよ風によりどこかに運ばれているようです。
(……ふわふわ~)
寝ぼけているのか、アリアロスの意識もフワフワです。
ふわふわと白い世界を漂い、段々と意識も薄れていきます。
(眠い、です)
「―――」
完全に意識が途切れる前に、白い世界でアリアロスは誰かを見つけた気がしました。
「―――い、おーい、朝だぜお姫様」
「んむぅ……」
誰かの声でアリアロスの意識は覚醒しました。
……とは言っても、まだ8割は眠ったままです。
「しっかし無防備にだらしない顔してんな……ほら、起きろって」
「ん……ごめんなさいメアリー……もうすこしだけ……もうちょっと……」
「誰だよ……おい、そろそろ起きねーと、喰っちまうぞ?」
耳元で硬い物が高速でぶつかる音がして、アリアロスは飛び起きました。
「きゃ!?」
「おぅ、起きたな」
「あれ、ここは……どこ?」
訳が分からず周囲を見渡したアリアロスは、目の前に立っていたアンデッドと目が合いました。
「……お」
「お?」
「お……お化け!?」
「今更驚くのかよ!? いや足はあるぜ骨だがよ」
アリアロスは自分に向けて足を見せる骸骨に対してまだ心臓がドキドキしていますが、おかげで意識がハッキリとしてきました。
「えと、アンデッドさん?」
「そうさ。あ、オレは自己紹介がまだだったな。ガエクムンに雇われていた元傭兵のリーサだ。よろしくなお姫様」
「アリアロス・フレクトです」
リーサの差し出してきた手袋ごしの手をアリアロスは握りました。
「あの、リーサさんは女性、ですよね?」
リーサは声は女性に聞こえるのですが、見た目は骨のため他のアンデッドたちと区別がつきません。
「なんだよ、女の傭兵は今でも珍しいか?」
「えと、あの、はい……はじめてお会いしました」
「まぁ貴族様が傭兵に会う機会もないだろうな……それよりも飯の準備ができてるから早く出てこい」
そう言い残してリーサはテントを出て行きました。
アリアロスは食事の前に身なりを整えようと思い立ちましたが、なかなかに大変でした。
今まで身支度は全て使用人たちがやってくれていたため勝手が分からず、さらには着替えの服も身支度を整える道具もありません。
軽く埃を払うくらいしかできず、この状態で人前(?)に出なければいけないことに少し気分が憂鬱でした。
「せめて鏡でもあれば……」
どこかに買いに行けないだろうか? そんなことを思いながらアリアロスはテントを出ました。
「おはようございます、聖女様」
テントの前で待ってくれていたらしいレイトラが深々と頭を下げました。
その声でアリアロスが出てきたことに気づいた他のアンデッドたちも頭を下げています。
「お、おはようございます」
今更ながら周囲にアンデッドがいる光景にアリアロスは少しだけ恐怖を覚えましたが、なんとか表情には出さずにあいさつしました。
「ご気分はいかがですか? よく眠れましたか? なにか不便なことはありませんでしたか?」
「だ、大丈夫です。とてもよく眠れました」
「そうですか……それならよかったです。さぁ、朝食の準備はできています」
レイトラの先導でアリアロスは歩きだしました。
(レイトラさん、なんだか嬉しそうだな……)
アリアロスには足取りが軽く、表情も穏やか……なように見えたのです。
「おぉ、目が覚めましたかな?」
テーブルのそばにはカールが控えていました。その隣は鎧を脱いだアンデッドが立っており、アリアロスに一礼しました。
「紹介しましょう。彼はアムルコス。兵士であると同時に隊の料理人でもありました。今は骨になっておりますがその腕は当時世話になっていたわたくしたちが保証します」
「それじゃあ昨日の料理も……アムルコスさん、ありがとうございます」
アリアロスがお礼を述べると、アムルコスは照れたように頭をかきました。
「アリアロス様、食事をしながらで構いませんので本日の予定をお聞きください」
レイトラに椅子を引いてもらいアリアロスはテーブルに着きました。
テーブルには数種類の卵料理とサラダ、そして果物が並べられています。
「まずは報告を。わたくしたちの調査の結果、この森の『ある程度の安全』が確保できると判断しました。つきましてはしばらくこの森を潜伏場所にしたいと考えています」
昨日も使った木製のフォークとナイフで目玉焼きを一口サイズに切り分け、ソースのようなものにひたして口に運びます。
「あ、おいしい」
アリアロスは小さく呟きました。
昨晩の食事の時点でも分かっていましたが、アムルコスの料理人としての腕は確かなようです。
「理由は多数ありますが、一番としてはこの森に追手が入る可能性が低いことです。長らく放置していた魔の森に確実にアリアロス様がいると分からぬ以上すぐ調べられることはないでしょう」
こんな森の中では食材を揃えるだけでも苦労するでしょう。さらに調味料など皆無なはずなのに、どの料理もきちんと味付けがされていました。
それなりに舌の肥えたアリアロスですが、文句なしの様子です。
「……と、いうことだったのですが……聞いていましたかな、アリアロス様?」
「ご、ごめんなさい……」
食事に夢中でカールの話は聞き流していたようです。
「やれやれ……ではもう一度説明しましょう」
アリアロスが少ししょんぼりしていると、アムルコスがそっと木でできたコップを差し出してくれました。
そこにはほんのりと温かな白湯が入っていました。
アリアロスは白湯をゆっくりと飲みながら、カールの話を聞くのでした。
世界は真っ白で、なにもありません。
フワフワと体が浮かんでいる感覚があり、そよ風によりどこかに運ばれているようです。
(……ふわふわ~)
寝ぼけているのか、アリアロスの意識もフワフワです。
ふわふわと白い世界を漂い、段々と意識も薄れていきます。
(眠い、です)
「―――」
完全に意識が途切れる前に、白い世界でアリアロスは誰かを見つけた気がしました。
「―――い、おーい、朝だぜお姫様」
「んむぅ……」
誰かの声でアリアロスの意識は覚醒しました。
……とは言っても、まだ8割は眠ったままです。
「しっかし無防備にだらしない顔してんな……ほら、起きろって」
「ん……ごめんなさいメアリー……もうすこしだけ……もうちょっと……」
「誰だよ……おい、そろそろ起きねーと、喰っちまうぞ?」
耳元で硬い物が高速でぶつかる音がして、アリアロスは飛び起きました。
「きゃ!?」
「おぅ、起きたな」
「あれ、ここは……どこ?」
訳が分からず周囲を見渡したアリアロスは、目の前に立っていたアンデッドと目が合いました。
「……お」
「お?」
「お……お化け!?」
「今更驚くのかよ!? いや足はあるぜ骨だがよ」
アリアロスは自分に向けて足を見せる骸骨に対してまだ心臓がドキドキしていますが、おかげで意識がハッキリとしてきました。
「えと、アンデッドさん?」
「そうさ。あ、オレは自己紹介がまだだったな。ガエクムンに雇われていた元傭兵のリーサだ。よろしくなお姫様」
「アリアロス・フレクトです」
リーサの差し出してきた手袋ごしの手をアリアロスは握りました。
「あの、リーサさんは女性、ですよね?」
リーサは声は女性に聞こえるのですが、見た目は骨のため他のアンデッドたちと区別がつきません。
「なんだよ、女の傭兵は今でも珍しいか?」
「えと、あの、はい……はじめてお会いしました」
「まぁ貴族様が傭兵に会う機会もないだろうな……それよりも飯の準備ができてるから早く出てこい」
そう言い残してリーサはテントを出て行きました。
アリアロスは食事の前に身なりを整えようと思い立ちましたが、なかなかに大変でした。
今まで身支度は全て使用人たちがやってくれていたため勝手が分からず、さらには着替えの服も身支度を整える道具もありません。
軽く埃を払うくらいしかできず、この状態で人前(?)に出なければいけないことに少し気分が憂鬱でした。
「せめて鏡でもあれば……」
どこかに買いに行けないだろうか? そんなことを思いながらアリアロスはテントを出ました。
「おはようございます、聖女様」
テントの前で待ってくれていたらしいレイトラが深々と頭を下げました。
その声でアリアロスが出てきたことに気づいた他のアンデッドたちも頭を下げています。
「お、おはようございます」
今更ながら周囲にアンデッドがいる光景にアリアロスは少しだけ恐怖を覚えましたが、なんとか表情には出さずにあいさつしました。
「ご気分はいかがですか? よく眠れましたか? なにか不便なことはありませんでしたか?」
「だ、大丈夫です。とてもよく眠れました」
「そうですか……それならよかったです。さぁ、朝食の準備はできています」
レイトラの先導でアリアロスは歩きだしました。
(レイトラさん、なんだか嬉しそうだな……)
アリアロスには足取りが軽く、表情も穏やか……なように見えたのです。
「おぉ、目が覚めましたかな?」
テーブルのそばにはカールが控えていました。その隣は鎧を脱いだアンデッドが立っており、アリアロスに一礼しました。
「紹介しましょう。彼はアムルコス。兵士であると同時に隊の料理人でもありました。今は骨になっておりますがその腕は当時世話になっていたわたくしたちが保証します」
「それじゃあ昨日の料理も……アムルコスさん、ありがとうございます」
アリアロスがお礼を述べると、アムルコスは照れたように頭をかきました。
「アリアロス様、食事をしながらで構いませんので本日の予定をお聞きください」
レイトラに椅子を引いてもらいアリアロスはテーブルに着きました。
テーブルには数種類の卵料理とサラダ、そして果物が並べられています。
「まずは報告を。わたくしたちの調査の結果、この森の『ある程度の安全』が確保できると判断しました。つきましてはしばらくこの森を潜伏場所にしたいと考えています」
昨日も使った木製のフォークとナイフで目玉焼きを一口サイズに切り分け、ソースのようなものにひたして口に運びます。
「あ、おいしい」
アリアロスは小さく呟きました。
昨晩の食事の時点でも分かっていましたが、アムルコスの料理人としての腕は確かなようです。
「理由は多数ありますが、一番としてはこの森に追手が入る可能性が低いことです。長らく放置していた魔の森に確実にアリアロス様がいると分からぬ以上すぐ調べられることはないでしょう」
こんな森の中では食材を揃えるだけでも苦労するでしょう。さらに調味料など皆無なはずなのに、どの料理もきちんと味付けがされていました。
それなりに舌の肥えたアリアロスですが、文句なしの様子です。
「……と、いうことだったのですが……聞いていましたかな、アリアロス様?」
「ご、ごめんなさい……」
食事に夢中でカールの話は聞き流していたようです。
「やれやれ……ではもう一度説明しましょう」
アリアロスが少ししょんぼりしていると、アムルコスがそっと木でできたコップを差し出してくれました。
そこにはほんのりと温かな白湯が入っていました。
アリアロスは白湯をゆっくりと飲みながら、カールの話を聞くのでした。
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