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第6話 死霊憑き殺しの贖罪
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エルドレッドは罪無しとされた。
だが、全くの罰がないという訳ではない。
死霊憑きを殺した男は罪に問われない。
罪には問われないが、その者の立場や能力に応じたそれなりの奉仕活動を行わなくてはいけない。
それがカムプスの流儀だった。
エルドレッドは腕利きの冒険者である。
片手で持つ武器であれば、大概の物を使いこなせる技量を持っていた。
片手剣で優美な戦いをこなすかと思えば、片手斧で荒々しく戦うことも出来る。
さらに弓の腕もかなりのもので狩人としての腕の良さでも知られていた。
特別、見目麗しい訳ではなかったが竪琴を手に取り、一度爪弾けば、人だけではなく獣までもがその演奏に聞き惚れる才能の持ち主でもあった。
普通に生きていれば、彼はそれなりに名を成し、勇者や英雄と呼ばれる人物になっていたかもしれない。
しかし、彼にとって不幸だったのはイヴァンジェリンという女神に出会ったことである。
イヴァンジェリンの存在は彼の中で唯一絶対の価値の物となった。
ゆえに彼は狂ってしまった。
日増しに自らの中で大きくなっていくイヴァンジェリンへの思いはついに爆発した。
だから、殺した。
殺したことで彼女はエルドレッドだけの物になったのだ。
彼はそう信じて疑わない。
エルドレッドに与えられた罰は奉仕活動として、境界地に入らなければいけない。
境界地とは異界に等しき隔たれたヘルヘイムとの間に広がる広大な森林地帯を指している。
ヘルヘイムは虹の橋を渡り、七つの門と呼ばれる彼の地の女王が設けた大きな門を潜らないと行き来が出来ないと言われていた。
しかし、それはあくまで建前である。
実際には境界を越え、ヘルヘイムから通常の個体よりも強力な亜種の魔物が侵入してくるのだ。
冒険者であるエルドレッドの奉仕活動とは即ち、この魔物の駆除に他ならない。
彼の地の魔物は強力な個体が多い。
それゆえ、この任務は死と隣り合わせの命懸けのものである。
エルドレッドのことを知る者らは彼に待ち受ける運命を思い、嘆いたが当の本人は「これが俺のしたいことなんですよ」と妙に満ち足りたような不思議な表情をしていたという。
武具を確かめ、旅装束に身を包んだエルドレッドは誰にも知らせることなく、ひっそりとカムプスを発った。
だが、全くの罰がないという訳ではない。
死霊憑きを殺した男は罪に問われない。
罪には問われないが、その者の立場や能力に応じたそれなりの奉仕活動を行わなくてはいけない。
それがカムプスの流儀だった。
エルドレッドは腕利きの冒険者である。
片手で持つ武器であれば、大概の物を使いこなせる技量を持っていた。
片手剣で優美な戦いをこなすかと思えば、片手斧で荒々しく戦うことも出来る。
さらに弓の腕もかなりのもので狩人としての腕の良さでも知られていた。
特別、見目麗しい訳ではなかったが竪琴を手に取り、一度爪弾けば、人だけではなく獣までもがその演奏に聞き惚れる才能の持ち主でもあった。
普通に生きていれば、彼はそれなりに名を成し、勇者や英雄と呼ばれる人物になっていたかもしれない。
しかし、彼にとって不幸だったのはイヴァンジェリンという女神に出会ったことである。
イヴァンジェリンの存在は彼の中で唯一絶対の価値の物となった。
ゆえに彼は狂ってしまった。
日増しに自らの中で大きくなっていくイヴァンジェリンへの思いはついに爆発した。
だから、殺した。
殺したことで彼女はエルドレッドだけの物になったのだ。
彼はそう信じて疑わない。
エルドレッドに与えられた罰は奉仕活動として、境界地に入らなければいけない。
境界地とは異界に等しき隔たれたヘルヘイムとの間に広がる広大な森林地帯を指している。
ヘルヘイムは虹の橋を渡り、七つの門と呼ばれる彼の地の女王が設けた大きな門を潜らないと行き来が出来ないと言われていた。
しかし、それはあくまで建前である。
実際には境界を越え、ヘルヘイムから通常の個体よりも強力な亜種の魔物が侵入してくるのだ。
冒険者であるエルドレッドの奉仕活動とは即ち、この魔物の駆除に他ならない。
彼の地の魔物は強力な個体が多い。
それゆえ、この任務は死と隣り合わせの命懸けのものである。
エルドレッドのことを知る者らは彼に待ち受ける運命を思い、嘆いたが当の本人は「これが俺のしたいことなんですよ」と妙に満ち足りたような不思議な表情をしていたという。
武具を確かめ、旅装束に身を包んだエルドレッドは誰にも知らせることなく、ひっそりとカムプスを発った。
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