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12 東の勇猛なる聖女 三人称視点
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イリアはかつて東西文明の十字路と呼ばれた国で生まれた。
大工の父親、世界資格者機構支部で事務員として働く母親と兄の四人家族に生まれたどこにでもいる平凡な少女だった。
もっとも何の変哲もない普通の少女であり、どこにでもいる平凡な人生を送っているだけだと主張するのは専ら、イリア本人だけである。
彼女は幼少期から、どこか普通とは異なる子供だった。
神隠しの如く姿を消し、心配する家族を他所に何事も無かったように夕方、ひょっこりと帰ってくる。
事故に遭っても何もなかったかのようにけろりとした顔をしている。
こんなことがざらにあったのだ。
そして、ある日、ついに彼女がなぜ普通ではないのかが明らかになった。
イリアは半身と邂逅した。
自身が、人とは異なる存在であることを本人もようやく気付き、そして認めざるを得なかった。
これはとりわけ珍しい事象ではない。
隔たれた二つの世界で生きていた本来、一つの魂が元に戻っただけに過ぎないのだ。
イリアの場合も全く同じである。
しかし、時にこの事象が特別とされる場合がある。
それが神の言葉を聞き、神の命を受けたとされる場合だった。
この特例を経験した者は聖人――聖者、聖女と呼ばれる。
聖人は人間の姿をしているが、人間ではない存在だ。
そうなった以上、これまでの暮らしや生き方を続けることはできなくなる。
では俗世と離れた彼ら、聖者はどこに行くのか。
その答えの一つが、かつてスペインと呼ばれた地域にあった。
ペルフェクティオ・サンクトゥス聖国。
ほぼ文明が崩壊したバルセロナ市を本拠とする十三人の聖者――十三聖に統治されている。
倒壊したサグラダファミリアを改築し、十三聖による合議制で運営されるペルフェクティオ・サンクトゥスは独自理論と解釈に基づき、動くことで知られていた。
十三聖は各々が実行部隊を率いており、有事には実力行使を厭わない。
それゆえにペルフェクティオ・サンクトゥスは欧州でも屈指の不可侵地域となっていた。
イリアはペルフェクティオ・サンクトゥスに迎えられ、リベルタ・インテンシオンとなった。
リベルタは与えられた神の加護の特性により、『鋼の聖女』と呼ばれている。
『鋼の聖女』は十三聖の一人であり、その名が示す通りの人物だった。
「その程度か」
雲霞の如く押し寄せる敵の大軍を前に臆することなく、勇ましい声を上げると二振りの片手斧を手に勢いよく、戦場を駆けるのは一人の女性だ。
修道女が着るワンピースドレスを身に纏っているが、夏の海を思わせる明るい青色に染められている。
何よりも特徴的なのは首に巻いている赤いストールだった。
赤というには黒みが強く、茶に近い色合いをしている。
ストールを靡かせ、舞でも舞うような彼女の姿はどこまでも美しく、凄惨の一言に尽きる。
リベルタが通り過ぎた後に残るのは彼女の片手斧で首を飛ばされ、四肢をもがれた憐れな敗残者の屍の山だった。
敵は人間よりも遥かに大柄な体格を誇り、屈強な強さで知られる食人鬼(オーガ)である。
非常に危険な亜人種として知られるオーガと戦うのであれば、必ず複数人で当たるのが鉄則だった。
そのような常識を覆すのが聖者という存在なのだ。
「貴様がリーダーか? 罪を贖え。その顔を剥がしてやる」
返り血を浴びた世にも凄惨な姿で物騒な物言いをするリベルタの異様な様子にも臆することなく、戦いを選んだはぐれオーガのリーダーは確かに勇猛だった。
しかし、勇猛さでリベルタと対した時点で彼の命運は既に尽きていたのだろう。
体格差を全く物ともせず、オーガの渾身の一撃を片腕で軽く止めたリベルタはそのまま、草でも抜くように軽く、オーガの腕をもいだ。
宣言通り、その頭を引き抜くと高々と頭上に上げるのだった。
そして、『鋼の聖女』は今日も人間に敵する存在と戦っている……。
大工の父親、世界資格者機構支部で事務員として働く母親と兄の四人家族に生まれたどこにでもいる平凡な少女だった。
もっとも何の変哲もない普通の少女であり、どこにでもいる平凡な人生を送っているだけだと主張するのは専ら、イリア本人だけである。
彼女は幼少期から、どこか普通とは異なる子供だった。
神隠しの如く姿を消し、心配する家族を他所に何事も無かったように夕方、ひょっこりと帰ってくる。
事故に遭っても何もなかったかのようにけろりとした顔をしている。
こんなことがざらにあったのだ。
そして、ある日、ついに彼女がなぜ普通ではないのかが明らかになった。
イリアは半身と邂逅した。
自身が、人とは異なる存在であることを本人もようやく気付き、そして認めざるを得なかった。
これはとりわけ珍しい事象ではない。
隔たれた二つの世界で生きていた本来、一つの魂が元に戻っただけに過ぎないのだ。
イリアの場合も全く同じである。
しかし、時にこの事象が特別とされる場合がある。
それが神の言葉を聞き、神の命を受けたとされる場合だった。
この特例を経験した者は聖人――聖者、聖女と呼ばれる。
聖人は人間の姿をしているが、人間ではない存在だ。
そうなった以上、これまでの暮らしや生き方を続けることはできなくなる。
では俗世と離れた彼ら、聖者はどこに行くのか。
その答えの一つが、かつてスペインと呼ばれた地域にあった。
ペルフェクティオ・サンクトゥス聖国。
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倒壊したサグラダファミリアを改築し、十三聖による合議制で運営されるペルフェクティオ・サンクトゥスは独自理論と解釈に基づき、動くことで知られていた。
十三聖は各々が実行部隊を率いており、有事には実力行使を厭わない。
それゆえにペルフェクティオ・サンクトゥスは欧州でも屈指の不可侵地域となっていた。
イリアはペルフェクティオ・サンクトゥスに迎えられ、リベルタ・インテンシオンとなった。
リベルタは与えられた神の加護の特性により、『鋼の聖女』と呼ばれている。
『鋼の聖女』は十三聖の一人であり、その名が示す通りの人物だった。
「その程度か」
雲霞の如く押し寄せる敵の大軍を前に臆することなく、勇ましい声を上げると二振りの片手斧を手に勢いよく、戦場を駆けるのは一人の女性だ。
修道女が着るワンピースドレスを身に纏っているが、夏の海を思わせる明るい青色に染められている。
何よりも特徴的なのは首に巻いている赤いストールだった。
赤というには黒みが強く、茶に近い色合いをしている。
ストールを靡かせ、舞でも舞うような彼女の姿はどこまでも美しく、凄惨の一言に尽きる。
リベルタが通り過ぎた後に残るのは彼女の片手斧で首を飛ばされ、四肢をもがれた憐れな敗残者の屍の山だった。
敵は人間よりも遥かに大柄な体格を誇り、屈強な強さで知られる食人鬼(オーガ)である。
非常に危険な亜人種として知られるオーガと戦うのであれば、必ず複数人で当たるのが鉄則だった。
そのような常識を覆すのが聖者という存在なのだ。
「貴様がリーダーか? 罪を贖え。その顔を剥がしてやる」
返り血を浴びた世にも凄惨な姿で物騒な物言いをするリベルタの異様な様子にも臆することなく、戦いを選んだはぐれオーガのリーダーは確かに勇猛だった。
しかし、勇猛さでリベルタと対した時点で彼の命運は既に尽きていたのだろう。
体格差を全く物ともせず、オーガの渾身の一撃を片腕で軽く止めたリベルタはそのまま、草でも抜くように軽く、オーガの腕をもいだ。
宣言通り、その頭を引き抜くと高々と頭上に上げるのだった。
そして、『鋼の聖女』は今日も人間に敵する存在と戦っている……。
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