転生したら、最低の悪女でしたが死にたくないので頑張ります

黒幸

文字の大きさ
22 / 50

22 穿つ者、スティンガー 三人称視点

しおりを挟む
 ペルフェクティオ・サンクトゥス聖国。
 聖なる者の集う地である。
 彼ら、聖者に仕える者達は敬虔で信心深く、慎み深い。

 しかし、一部の者からはこう呼ばれる
 狂った者の集う地と……。
 彼らがあまりに狂信的であるがゆえ、そう呼ばれるのだ。

「インテンシオン、さっさとやってしまえばいいんじゃないのか」
「そうもいかないだろう、アイゼン」
「俺に任せてくれれば、あっという間に片付けてやるんだが」

 何とも物騒な会話をしているのは眉目秀麗な女性と二メートルはあろうかという巨漢の男性だった。
 ペルフェクティオ・サンクトゥスの幹部たる聖女の一人・リベルタとその片腕、アイゼン・クラジェだ。
 リベルタは勇猛な神官戦士の一団を率いる神官戦士長の一人であり、彼女の隊は聖国でも屈指の実行部隊として数えられている。
 アイゼンは見上げるような長身に加え、屈強な肉体を誇り、まるでプロレスラーのような体型をした大男である。
 見た目通り、勇猛果敢にして、いささか過激な言動から危険な火薬庫扱いされるアイゼンだが、その実、仕事ぶりは有能だった。

「私にいい考えがある」
「本当ですか? インテンシオン。あなたのいい考えは……」
「いい考えなんだ。ヴァン。ヴァンはいるか?」

 アイゼンは考えるよりも動くのが好きだ。
 そんなアイゼンがリベルタの言葉に珍しく思考し、なおかつ否定的に結論を導き出そうとしたのには理由があった。
 リベルタのいい考えとやらはこれまで、うまくいった試しがなかったのである。

 しかし、リベルタは鋼の聖女であり、自身の考えを曲げることを嫌う。
 一度言い出したら、撤回もしなければ、必ず実行することを知っているアイゼンは内心不安に思いながらも動向を見守るしかなかった。
 
「ヴァンニ・ビスコンティ、ここに!」

 リベルタの呼びかけに応じ、現れたのは小柄な少年だ。
 ハニーブロンドの髪とアクアブルーの瞳が美しく、線が細い。
 かとすれば、少女にも見える中性的な美を有したこの少年こそ、ヴァンことヴァンニ・ビスコンティだった。
 ヴァンニはペルフェクティオ・サンクトゥスで神官戦士見習いとして、仕えている。
 配属されたのがリベルタの部隊だった。
 隊には強面や個性の強い面々が多く、見た目も愛らしいヴァンニはマスコットのように皆から、愛されていた。

「君に任務を与えよう」
「ははっ」

 アイゼンはこのやり取りに不安以上の不穏を感じながらも見守ることしかできない。
 意見を述べたところでリベルタが、前言を翻す人物ではないと誰よりも理解しているからだ。
 ヴァンニが任務を拒否しないことも分かっていた。
 アイゼンにできることはヴァンニが何事もなく任務に従事し、無事に帰還することを願うだけなのだ。



 ヴァンニ・ビスコンティは神官戦士見習いである。
 しかし、あまり優秀な成績を上げられず、このままでは正式な神官戦士に昇格できるのかと将来を不安に思う日々を送っていた。
 そのような状況で配属されたのが、聖国屈指の実行部隊であるリベルタの隊だった。
 歴戦の強者が多く、個性豊かな面々ばかりの隊である。
 彼らに囲まれ、熾烈な毎日を過ごすうちにヴァンニは急速に成長した。
 いつしか自分を見失うことなく、独自の色を出せるようになった。

 そんなヴァンニに付けられた二つ名が穿つ者(スティンガー)だった。
 華麗に舞いを舞うように相手の息の根を止める必殺の一撃を決める。
 それがヴァンニである。
 尊敬するリベルタから直接、任務を言い渡されたヴァンニは不慣れな地へと赴く彼を心配する隊の面々を他所に意気揚々と現地へと向かった。
 潜入工作員となったヴァンニの行き先はレウス市。
 ステラのいる地だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

悪妻と噂の彼女は、前世を思い出したら吹っ切れた

下菊みこと
恋愛
自分のために生きると決めたら早かった。 小説家になろう様でも投稿しています。

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました

ララ
恋愛
3話完結です。 大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。 それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。 そこで見たのはまさにゲームの世界。 主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。 そしてゲームは終盤へ。 最後のイベントといえば断罪。 悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。 でもおかしいじゃない? このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。 ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。 納得いかない。 それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

処理中です...