転生したら、最低の悪女でしたが死にたくないので頑張ります

黒幸

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38 制限解除

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 間に合わない。
 もっと速く!
 もっと! ずっと速く!
 そう願っても願いは叶わない。
 手を伸ばしても届かない。
 初めてできた友達なのに……。

 太陽みたいな笑顔で周囲を明るくしてくれるあの子が、いなくなるなんて嫌だ。
 助けたい。
 何かを犠牲にしなければいけないのなら、それを全部あげるから!
 だから、助けたい。
 強く願った。

『制限が解除されます』

 妙な声が聞こえた。
 耳で聞いたんじゃなくて、頭の中で声が流れたとしか言いようがない。
 変な現象だった。

 時間が止まった。
 そうとしか思えない。
 自分の見ている風景がまるでスローモーションになったような不思議な感覚だ。
 これなら!
 これなら、間に合う。

「ヴィー!」

 間一髪だった。
 ヴィーのいた場所が水のカッターでズタズタに切り裂かれてる。
 間に合ってよかった。

「ステラ、背中のそれ……」
「ん?」

 何、これ?
 私の背中から、二枚の羽が生えてた。
 それもシエロに生えてる羽とは違う。
 あの子のは蝙蝠ぽいけど、私のは羽毛が生えていて、鳥の翼に似てるのだ。
 ただ、墨で塗ったように真っ黒だけど。

「あー、私もついに才能が開花しちゃったって感じ?」
「そーいうのか」

 多分、それほど間違ってないと思う。
 プラッツの血が色濃く出ると十五の年を境に空を駆ける力が得られる。
 ……かもしれないと叔父さんから、聞いていた。
 『鋼鉄の聖女』の中でもステラは背中の翼で自由に空を飛んでいた。
 蝙蝠の翼が描かれていた気がするけど。

 服も破れてない。
 翼が背中から生えたら、そうなりそうだけど、ならない。
 目に見えてるけど、実際には触れないものだから、大丈夫ってことのようだ。
 プラッツの翼は体内の魔素(オド)を具現化させただけのものって話だった。
 だから、物理的には支障が出ないし、出し入れも自由自在。
 ぶっちゃけ翼を出さなくても理論的には可能ぽいのだけど、精神的にそのまま空を飛ぶのを頭が受け付けないから、無理らしい。

「ステラ……あのさ。あの白いのは大丈夫なのかな?」
「え?」

 ヴィーが指差す先にはあのドラゴンもどきではなく、宙に浮かぶ白い物体があった。
 淡い光を放ちながら、宙に浮いてるそれは腕に付ける籠手(ガントレット)のように見えた。
 もしかして、あれって、探してた『栄光(グロリア)』じゃない?

「こっち来た!?」
「ええええ!?」

 そして、音もなく、凄まじい勢いでこっちに向かってきた。
 避けられるようなスピードじゃない。
 気が付いたら、両腕にグロリアが勝手に付いていた。
 私の意識はそこで途切れた……。
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