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44 英雄は動く 三人称視点
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コミューン連合の諜報活動も一手に引き受ける宰相ムシカは、長期間潜入調査を行っていた腹心の部下から報告を受け取った。
レウスでクロミアという少女の姿を取り、活動していた漆黒の獣レオパルドからの報告だ。
ムシカは情報を厳しく精査し、詳細をまとめ上げた報告書を完成させた。
「……以上でございます」
「実に興味深いな。欲しい。そうは思わぬか? ふはははは」
報告書に目を通したオルデンは鷹揚に笑う。
さも満足したと言わんばかりに零した笑い声はどこか乾きを感じるものだ。
「如何いたしますか?」
「ふむ。実際にこの目で見たいな。できるか?」
ムシカは同輩のカストロと軽く視線を交わした。
二人の目には諦念の色が強く、浮き出ている。
オルデンは一度、口にしたことを必ず実行する有言実行の人である。
それを知らない二人ではなかった。
実務面に限らず友として公私に渡り、王を支えるコミューンの二枚看板は増える仕事に辟易しているのかと言えば、そうでもない。
全てを踏まえたうえで楽しんでいるのだ。
良くも悪くも似たり寄ったりの主従だった。
「お前はどう思う?」
「いつも通りの陛下だと思うが」
「それはそうなのだが、そこではない」
「分かっているさ。例の子だろう?」
「ああ」
オルデンの下を退出した二人――ムシカとカストロは堅苦しさを抜いた気軽なやり取りで時を費やしている。
礼服ではなく、着崩した楽な平服で葡萄酒を嗜みながら、議論というにはあまりにルーズな意見交換を楽しむ。
堅苦しい肩書と外面の鉄面皮を脱ぎ捨てたこのひと時が、ムシカとカストロの唯一の息抜きと言って良かった。
「報告書の通りなら、問題ないと思えるね。ただし、報告書の内容が真実であるという仮定が必要だね」
「お前! うちの子が嘘を言ったとでも言うの? 看過できない言葉だわ」
ムシカは魂の契約を結んだ獣魔をうちの子と呼び、溺愛している。
彼らに対するムシカの信頼は言うまでもない。
友誼を結ぶ間柄とはいえ、カストロの失言である。
「しかし、君も不思議に思っているだろ? あの子、どうしたんだ? 変わり過ぎだろう」
「そ、それはまぁ……私にも分からないところでね。だが悪いことではない。あの子も大人になったということだよ。母親として、こんなに嬉しいことはない」
「そ、そうか。それはよかったね」
あの子――レウス市に潜入し、クロミアと名乗っていたレオパルドのことだ。
元来、獣性が強く、人間らしい感情を持たない気質だった。
躊躇なく、標的を殺戮する姿から、人を殺す機械(キリングマシーン)と呼ばれたことさえある冷酷非情な戦士である。
一切、感情を入れず、対象を調査するのにも定評があった。
そのレオパルドの上げた報告に偏重の傾向が見られたのだ。
報告にはなぜか、ステラ・プラッツを褒め称えるフレーズが多かったのである……。
「だが、どうする?」
「それな」
「無理矢理、予定を作るしかないか」
「どうやって予定を……ああ。いい手があるぞ」
「何だ? お前のいい手は嫌な予感しか、しないのだが」
「そうでもないよ。今回は本当に名案なのさ。『リベリオン』を出しに使う……どうだい?」
「悪くない。お前にしては珍しく、名案だね」
亜人種の解放と保護を錦の御旗に掲げ、欧州地域で活発な動きを見せるテロリスト『リベリオン』。
彼らが戦場に選んだのが、スペインと呼ばれた地だった。
体の大半を機械化した勇猛にして、残虐なる指導者ファフナーに率いられた『リベリオン』は既に各地で猛威を振るっている。
意外なことにコミューン連合と『リベリオン』は密約を交わす仲だ。
コミューン連合も亜人の解放を掲げ、精力的な活動と数々の施策を実行していたからだった。
積極的な協力ではなく、あくまで不干渉を貫く、消極的な動機による同盟である。
そして、『リベリオン』は現在、スペイン東部で暗躍していた。
ムシカはカストロのアイデアを元に『リベリオン』の活動を口実とした王の親征を計画した。
かくしてオルデンもまた、ステラ・プラッツを見定めようと動き始めた……。
レウスでクロミアという少女の姿を取り、活動していた漆黒の獣レオパルドからの報告だ。
ムシカは情報を厳しく精査し、詳細をまとめ上げた報告書を完成させた。
「……以上でございます」
「実に興味深いな。欲しい。そうは思わぬか? ふはははは」
報告書に目を通したオルデンは鷹揚に笑う。
さも満足したと言わんばかりに零した笑い声はどこか乾きを感じるものだ。
「如何いたしますか?」
「ふむ。実際にこの目で見たいな。できるか?」
ムシカは同輩のカストロと軽く視線を交わした。
二人の目には諦念の色が強く、浮き出ている。
オルデンは一度、口にしたことを必ず実行する有言実行の人である。
それを知らない二人ではなかった。
実務面に限らず友として公私に渡り、王を支えるコミューンの二枚看板は増える仕事に辟易しているのかと言えば、そうでもない。
全てを踏まえたうえで楽しんでいるのだ。
良くも悪くも似たり寄ったりの主従だった。
「お前はどう思う?」
「いつも通りの陛下だと思うが」
「それはそうなのだが、そこではない」
「分かっているさ。例の子だろう?」
「ああ」
オルデンの下を退出した二人――ムシカとカストロは堅苦しさを抜いた気軽なやり取りで時を費やしている。
礼服ではなく、着崩した楽な平服で葡萄酒を嗜みながら、議論というにはあまりにルーズな意見交換を楽しむ。
堅苦しい肩書と外面の鉄面皮を脱ぎ捨てたこのひと時が、ムシカとカストロの唯一の息抜きと言って良かった。
「報告書の通りなら、問題ないと思えるね。ただし、報告書の内容が真実であるという仮定が必要だね」
「お前! うちの子が嘘を言ったとでも言うの? 看過できない言葉だわ」
ムシカは魂の契約を結んだ獣魔をうちの子と呼び、溺愛している。
彼らに対するムシカの信頼は言うまでもない。
友誼を結ぶ間柄とはいえ、カストロの失言である。
「しかし、君も不思議に思っているだろ? あの子、どうしたんだ? 変わり過ぎだろう」
「そ、それはまぁ……私にも分からないところでね。だが悪いことではない。あの子も大人になったということだよ。母親として、こんなに嬉しいことはない」
「そ、そうか。それはよかったね」
あの子――レウス市に潜入し、クロミアと名乗っていたレオパルドのことだ。
元来、獣性が強く、人間らしい感情を持たない気質だった。
躊躇なく、標的を殺戮する姿から、人を殺す機械(キリングマシーン)と呼ばれたことさえある冷酷非情な戦士である。
一切、感情を入れず、対象を調査するのにも定評があった。
そのレオパルドの上げた報告に偏重の傾向が見られたのだ。
報告にはなぜか、ステラ・プラッツを褒め称えるフレーズが多かったのである……。
「だが、どうする?」
「それな」
「無理矢理、予定を作るしかないか」
「どうやって予定を……ああ。いい手があるぞ」
「何だ? お前のいい手は嫌な予感しか、しないのだが」
「そうでもないよ。今回は本当に名案なのさ。『リベリオン』を出しに使う……どうだい?」
「悪くない。お前にしては珍しく、名案だね」
亜人種の解放と保護を錦の御旗に掲げ、欧州地域で活発な動きを見せるテロリスト『リベリオン』。
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体の大半を機械化した勇猛にして、残虐なる指導者ファフナーに率いられた『リベリオン』は既に各地で猛威を振るっている。
意外なことにコミューン連合と『リベリオン』は密約を交わす仲だ。
コミューン連合も亜人の解放を掲げ、精力的な活動と数々の施策を実行していたからだった。
積極的な協力ではなく、あくまで不干渉を貫く、消極的な動機による同盟である。
そして、『リベリオン』は現在、スペイン東部で暗躍していた。
ムシカはカストロのアイデアを元に『リベリオン』の活動を口実とした王の親征を計画した。
かくしてオルデンもまた、ステラ・プラッツを見定めようと動き始めた……。
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