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3 アルスターの闇
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「ありていに申しましょう。貴女の力を貸して欲しいの」
「えぇ……はぁ」
改めて、話を続けるという体で仕切り直しになった。けれど、私は石化されて石像になったみたいに動けない。
見るからに高そうなテーブルセットに着くとリムジンの運転もしていた人狼の青年が、お茶の準備をしている。
この青年が人狼でなければ、私の能力はバレないで済んだと思う。
むしろ罠だったので引っかかったのが悪いのだ。
案外、神話に出てくるメデューサやゴルゴンの石化の視線の正体は、これなのかもしれない。
圧倒的な威圧感の前に動けなくなるのは石化と変わらない……。
「要は同志になれってこと。お分かりいただけるかしら?」
「は、はぁ」
妙に砕けた喋り方をした気がするけど、気のせい?
そう思えば、学園で見かけた時に感じた棘が見えない。
あれはウィステリア嬢が自分の身を守ろうと無意識に発していたのかもしれない。
「私はね。国に踊らされる生き方はしたくないの。ですから、貴方には同志……いいえ、共犯になって欲しいの」
彼女の声にはどこか険があって。
強さではなく、何かを拒絶しているように思えた。
今はそれを感じられない。
私を仲間に引き入れるのが、それだけ切実な思いだから?
そうとしか思えない。
でも、何が彼女をそこまで追い詰めているのか、皆目分からなかった。
思うがままの権力を持つ公爵家の令嬢で将来は王妃となることが約束されている人だ。
何も憂うことなどないのでは?
「貴女は王家をどう思いますの? 私は……あんなボンクラどもと添い遂げるなんて、御免被りたいですわ!」
ウィステリア嬢は急にぶっちゃけた。
どうされたの? と心配になってくる。
なぜ、そんなに弾けてしまったのだろうか。
これでも例の人狼の青年は他人事のように我関せずの姿勢を崩さない。
そして、歯ぎしりすら聞こえてきそうな恐ろしい形相でウィステリア嬢が、実に恐ろしいことを言い始めた。
アルスター王国の歴史は非常に短い。
建国から百年どころか、半世紀とちょっと程度しかない。
何しろ、国を建てたのは先代の王ヒューゴーで現在の国王、ノーマン陛下は二代目。
たったの二代しか続いていない盤石とは言えない王家なのだ。
しかし、王家が不安定なのは歴史が短いせいだけではない。
そこには深い闇がある。
創建王ヒューゴーは確かに一代の英雄だったと思う。
もっとも歴史なんて、自分に都合のいいことしか書かないから、そう書いてあるだけかもしれないけど、それを言っては元も子もない。
そう。
ヒューゴー王は英雄色を好むを地で行く人だった。
口の悪い人は彼のことをこう呼ぶ。
稀代の種蒔き王と……。
現国王のノーマン陛下は長子ではない。
ノーマン王は恐らく、名君だったと歴史書に書かれる有能な為政者だ。
田舎に住む私ですら、それがよく分かる。
政情は安定しているし、欧州で屈指の平和を維持したいい国であるのは間違いない。
これだけなら、長子より優秀な第二王子や第三王子といった次子、三子が後を継いだ。
そう考えてしまうと思うだろう。
でも、そうではない。
ノーマン王は王子であるのは確かだけど、第何子か分からない。
そういうことなのだ。
私は知らないけど、彼より年長の王子も何人か、いたらしい。
でも、いつの間にか消えていて、他国に亡命した者もいるとか、いないとか。
信じるも信じないもあなた次第な噂に過ぎないけど……。
単なる噂話で終わっていないのは、この噂の信憑性が極めて高いことだ。
まず、現在の王家の状況が非常にきな臭い。
ノーマン王は一国の王という立場にありながら、独身時代の長い王様だった。
そんな王が王妃に迎えたのは令嬢の中の令嬢と呼ばれたツリーヴィレ伯爵家のジョスリン。
美男美女の国王夫妻に国民も期待したのだけど、中々子宝に恵まれなかった。
生まれたのは王女二人だけ。
しかもまだ幼い。
それを予期していたのか、ノーマン王は若い頃に後継者となる養子を迎えているのだ。
それがまた、闇が深い。
ノーマン王の弟にあたる諸王子三人が王太子となるべく、王の下で育てられることになった。
もうしっちゃかめっちゃかとしか、言いようがない。
これでも国が平穏を保っているのは奇跡なのかもしれない。
止めとばかりにウィステリア嬢は衝撃的な一言を言い放った。
「私が王妃になるのは確定ですのよ? なぜ? 私が嫁がないと王家に正当性がないんですもの。笑わせてくれるわね」
「えぇ……はぁ」
改めて、話を続けるという体で仕切り直しになった。けれど、私は石化されて石像になったみたいに動けない。
見るからに高そうなテーブルセットに着くとリムジンの運転もしていた人狼の青年が、お茶の準備をしている。
この青年が人狼でなければ、私の能力はバレないで済んだと思う。
むしろ罠だったので引っかかったのが悪いのだ。
案外、神話に出てくるメデューサやゴルゴンの石化の視線の正体は、これなのかもしれない。
圧倒的な威圧感の前に動けなくなるのは石化と変わらない……。
「要は同志になれってこと。お分かりいただけるかしら?」
「は、はぁ」
妙に砕けた喋り方をした気がするけど、気のせい?
そう思えば、学園で見かけた時に感じた棘が見えない。
あれはウィステリア嬢が自分の身を守ろうと無意識に発していたのかもしれない。
「私はね。国に踊らされる生き方はしたくないの。ですから、貴方には同志……いいえ、共犯になって欲しいの」
彼女の声にはどこか険があって。
強さではなく、何かを拒絶しているように思えた。
今はそれを感じられない。
私を仲間に引き入れるのが、それだけ切実な思いだから?
そうとしか思えない。
でも、何が彼女をそこまで追い詰めているのか、皆目分からなかった。
思うがままの権力を持つ公爵家の令嬢で将来は王妃となることが約束されている人だ。
何も憂うことなどないのでは?
「貴女は王家をどう思いますの? 私は……あんなボンクラどもと添い遂げるなんて、御免被りたいですわ!」
ウィステリア嬢は急にぶっちゃけた。
どうされたの? と心配になってくる。
なぜ、そんなに弾けてしまったのだろうか。
これでも例の人狼の青年は他人事のように我関せずの姿勢を崩さない。
そして、歯ぎしりすら聞こえてきそうな恐ろしい形相でウィステリア嬢が、実に恐ろしいことを言い始めた。
アルスター王国の歴史は非常に短い。
建国から百年どころか、半世紀とちょっと程度しかない。
何しろ、国を建てたのは先代の王ヒューゴーで現在の国王、ノーマン陛下は二代目。
たったの二代しか続いていない盤石とは言えない王家なのだ。
しかし、王家が不安定なのは歴史が短いせいだけではない。
そこには深い闇がある。
創建王ヒューゴーは確かに一代の英雄だったと思う。
もっとも歴史なんて、自分に都合のいいことしか書かないから、そう書いてあるだけかもしれないけど、それを言っては元も子もない。
そう。
ヒューゴー王は英雄色を好むを地で行く人だった。
口の悪い人は彼のことをこう呼ぶ。
稀代の種蒔き王と……。
現国王のノーマン陛下は長子ではない。
ノーマン王は恐らく、名君だったと歴史書に書かれる有能な為政者だ。
田舎に住む私ですら、それがよく分かる。
政情は安定しているし、欧州で屈指の平和を維持したいい国であるのは間違いない。
これだけなら、長子より優秀な第二王子や第三王子といった次子、三子が後を継いだ。
そう考えてしまうと思うだろう。
でも、そうではない。
ノーマン王は王子であるのは確かだけど、第何子か分からない。
そういうことなのだ。
私は知らないけど、彼より年長の王子も何人か、いたらしい。
でも、いつの間にか消えていて、他国に亡命した者もいるとか、いないとか。
信じるも信じないもあなた次第な噂に過ぎないけど……。
単なる噂話で終わっていないのは、この噂の信憑性が極めて高いことだ。
まず、現在の王家の状況が非常にきな臭い。
ノーマン王は一国の王という立場にありながら、独身時代の長い王様だった。
そんな王が王妃に迎えたのは令嬢の中の令嬢と呼ばれたツリーヴィレ伯爵家のジョスリン。
美男美女の国王夫妻に国民も期待したのだけど、中々子宝に恵まれなかった。
生まれたのは王女二人だけ。
しかもまだ幼い。
それを予期していたのか、ノーマン王は若い頃に後継者となる養子を迎えているのだ。
それがまた、闇が深い。
ノーマン王の弟にあたる諸王子三人が王太子となるべく、王の下で育てられることになった。
もうしっちゃかめっちゃかとしか、言いようがない。
これでも国が平穏を保っているのは奇跡なのかもしれない。
止めとばかりにウィステリア嬢は衝撃的な一言を言い放った。
「私が王妃になるのは確定ですのよ? なぜ? 私が嫁がないと王家に正当性がないんですもの。笑わせてくれるわね」
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