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1st Target ユリシーズ
9 取り替え子事件顛末
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その日、第三王子ユリシーズ殿下の葬儀がしめやかに行われた。
殿下は学園から、アイアランド大公閣下の農園へと向かう途中、交通事故に巻き込まれ、帰らぬ人になった。
乗車したリムジンは見るも無残な有様で同乗していた学友三人も同じく、帰らぬ人になっている。
気さくで誰からも愛される王子の死に国民は悲しみに包まれている……。
……というのが表向きの話であって。
公にされた情報はあくまでユリシーズ殿下の名誉と王家の威厳を損なわないように脚色された。
交通事故で事故死したとなっているが、本当は違う。
ユリシーズ殿下と三人の学友――ジョエル・ハロルド、ポール・プロウライト、クレイグ・ヤント。
彼らは当局の手で適切な処置を取られ、処分されたのだ。
世間の混乱を避けるべく、交通事故と言う形をとったに過ぎないのだ。
もし真実が公になれば、国が混乱するどころの騒ぎですまないだろう。
それほどに衝撃的な内容が、殿下の死に隠されている……。
「さすが、サマンサ様よね。交渉材料に使って、何も損していないんですもの」
「お嬢様はある意味、ここのネジが吹き飛んでるからな」
そう言って、おどけたようにハリーは頭に人差し指を当てるが、当人がいないからこそできるおふざけだと思う。
サマンサ様の前では誰もが無意識のうちになぜか、畏まってしまうのだから。
「しかし、まさか取り換え子(チェンジリング)だったとは思わないよなあ。もしもメリーがいなかったら、どうなっていたか分からないぜ」
「そうですね。まさか……ですよね」
チェンジリングは古来から伝わる不可思議な現象で、妖精や悪鬼が起こす悪戯として知られていた。
彼らは生まれたばかりの赤ん坊を自分達の子供と入れ替え、人間の子を連れ去る。
そう伝えられていたのだ。
迷信の類だと思われていたチェンジリングだけど、迷信ではなく実害を伴う現実だったという訳。
それも第三王子、その人がチェンジリングで入れ替えられていたのだから、国を揺るがす大事件なのだ。
第三王子と伯爵令息、子爵令息を連れ去り、入れ替わっていたのがよりにもよって、食屍鬼(グール)だった。
ハリーから、事の仔細を聞いたサマンサ様はすぐに対策を講じた。
グールは都市の闇……地下に潜み、死肉を漁る不浄な種族と呼ばれている。
時に人を殺めることもあり、危険視する向きが多い。
そんなグールが王子に成り代わり、国の中枢を乗っ取ろうと企んでいた。
巧みに人心を掌握して、サマンサ様の婚約者の地位を獲得して、徐々に自分達の住みよい環境を構築するつもりだったようだ。
三学年の卒業まで残り少なかった。
サマンサ様にとってもグールにとってもタイムリミットが刻一刻と近付く中、私がまさかジョーカーになるとは思いもしなかった。
グールも誤算だったに違いない。
ここまで順調に進めていた計画が一気に崩れたのだから。
サマンサ様は野に下った元王子殿下の助力を仰いだ。
王家や王国のありように疑問を呈する元王子殿下は共闘を約束し、当局から資格者(プレイヤー)を派遣してくれたので最悪の事態になる前にグールを止めることができた。
人間に擬態するのに長けた元第三王子殿下となったグールと一味は白を切ろうとしたけど、プレイヤーは怪異事件のプロフェッショナルであって。
むしろ馬脚を露す羽目になって、処理された。
明らかになった元第三王子殿下の余罪は、目を疑いたくなるような酷い物だった。
墓地から埋葬したばかりの死体が消える事件が多発していたのも、王子殿下一味の仕業だったし、学園の生徒を始めとした行方不明事件にも関与していた。
被害者数は換算できない可能性も出ているけど、首謀者が公にできない以上、未解決となるだろう……。
また、連れ去られた本物のユリシーズ殿下がどうなったのか、気になるところだけど……。
当局の捜査の結果、死亡が確認された。
それも何とも後味の悪い話だ。
一味と連携して動いていたグールの一団のアジトへと乗り込んだ当局に執拗に抵抗したグールが四体いた。
その四体こそ、まさかのチェンジリングで連れ去られた本物だったのだ。
木乃伊取りが木乃伊になったのか、彼らは完全にグールと化しており、もはや手が付けられない状況だったらしい。
「サマンサ様にとってはこれでよかったのかしら?」
「まあな。あんなのと一緒になりたくないから、お嬢様は動いたんだぜ? それが蓋を開けて見れば、あんなことになるとは思わないだろ。まさか、アレだとはな」
「本当、そうですよね。今でも信じられませんね」
「ご苦労さん」
「お疲れ様でした。ハリーも大変だったのでしょう? ゆっくり休んでね」
「ああ。じゃあ、またな」
ハリーは人狼でプレイヤーなのもあって、グールとの戦いにも駆り出されたせいだろう。
心身ともに疲れているみたいだ。
相変わらず、口は悪いし、言葉遣いも乱暴だけど相当にきているように見える。
彼は人狼とは言っても実は混血なので、純粋なルー・ガルーではないらしい。
それに喧嘩や乱闘騒ぎの経験はあっても実際に命のやり取りをする現場に居合わせたのは初めてだったのが、心にかなりくるらしい……。
それにしても「またな」なんて言って。
いつもと同じようにひらひらと手をだらしなく振って、別れたけど……。
またはあるのだろうか。
サマンサ様から頼まれた案件が解決したから、彼とのコンビもこれまでだと思うのだ。
それとも気を遣って、「またな」と言ってくれたとか?
それこそ、まさかね。
殿下は学園から、アイアランド大公閣下の農園へと向かう途中、交通事故に巻き込まれ、帰らぬ人になった。
乗車したリムジンは見るも無残な有様で同乗していた学友三人も同じく、帰らぬ人になっている。
気さくで誰からも愛される王子の死に国民は悲しみに包まれている……。
……というのが表向きの話であって。
公にされた情報はあくまでユリシーズ殿下の名誉と王家の威厳を損なわないように脚色された。
交通事故で事故死したとなっているが、本当は違う。
ユリシーズ殿下と三人の学友――ジョエル・ハロルド、ポール・プロウライト、クレイグ・ヤント。
彼らは当局の手で適切な処置を取られ、処分されたのだ。
世間の混乱を避けるべく、交通事故と言う形をとったに過ぎないのだ。
もし真実が公になれば、国が混乱するどころの騒ぎですまないだろう。
それほどに衝撃的な内容が、殿下の死に隠されている……。
「さすが、サマンサ様よね。交渉材料に使って、何も損していないんですもの」
「お嬢様はある意味、ここのネジが吹き飛んでるからな」
そう言って、おどけたようにハリーは頭に人差し指を当てるが、当人がいないからこそできるおふざけだと思う。
サマンサ様の前では誰もが無意識のうちになぜか、畏まってしまうのだから。
「しかし、まさか取り換え子(チェンジリング)だったとは思わないよなあ。もしもメリーがいなかったら、どうなっていたか分からないぜ」
「そうですね。まさか……ですよね」
チェンジリングは古来から伝わる不可思議な現象で、妖精や悪鬼が起こす悪戯として知られていた。
彼らは生まれたばかりの赤ん坊を自分達の子供と入れ替え、人間の子を連れ去る。
そう伝えられていたのだ。
迷信の類だと思われていたチェンジリングだけど、迷信ではなく実害を伴う現実だったという訳。
それも第三王子、その人がチェンジリングで入れ替えられていたのだから、国を揺るがす大事件なのだ。
第三王子と伯爵令息、子爵令息を連れ去り、入れ替わっていたのがよりにもよって、食屍鬼(グール)だった。
ハリーから、事の仔細を聞いたサマンサ様はすぐに対策を講じた。
グールは都市の闇……地下に潜み、死肉を漁る不浄な種族と呼ばれている。
時に人を殺めることもあり、危険視する向きが多い。
そんなグールが王子に成り代わり、国の中枢を乗っ取ろうと企んでいた。
巧みに人心を掌握して、サマンサ様の婚約者の地位を獲得して、徐々に自分達の住みよい環境を構築するつもりだったようだ。
三学年の卒業まで残り少なかった。
サマンサ様にとってもグールにとってもタイムリミットが刻一刻と近付く中、私がまさかジョーカーになるとは思いもしなかった。
グールも誤算だったに違いない。
ここまで順調に進めていた計画が一気に崩れたのだから。
サマンサ様は野に下った元王子殿下の助力を仰いだ。
王家や王国のありように疑問を呈する元王子殿下は共闘を約束し、当局から資格者(プレイヤー)を派遣してくれたので最悪の事態になる前にグールを止めることができた。
人間に擬態するのに長けた元第三王子殿下となったグールと一味は白を切ろうとしたけど、プレイヤーは怪異事件のプロフェッショナルであって。
むしろ馬脚を露す羽目になって、処理された。
明らかになった元第三王子殿下の余罪は、目を疑いたくなるような酷い物だった。
墓地から埋葬したばかりの死体が消える事件が多発していたのも、王子殿下一味の仕業だったし、学園の生徒を始めとした行方不明事件にも関与していた。
被害者数は換算できない可能性も出ているけど、首謀者が公にできない以上、未解決となるだろう……。
また、連れ去られた本物のユリシーズ殿下がどうなったのか、気になるところだけど……。
当局の捜査の結果、死亡が確認された。
それも何とも後味の悪い話だ。
一味と連携して動いていたグールの一団のアジトへと乗り込んだ当局に執拗に抵抗したグールが四体いた。
その四体こそ、まさかのチェンジリングで連れ去られた本物だったのだ。
木乃伊取りが木乃伊になったのか、彼らは完全にグールと化しており、もはや手が付けられない状況だったらしい。
「サマンサ様にとってはこれでよかったのかしら?」
「まあな。あんなのと一緒になりたくないから、お嬢様は動いたんだぜ? それが蓋を開けて見れば、あんなことになるとは思わないだろ。まさか、アレだとはな」
「本当、そうですよね。今でも信じられませんね」
「ご苦労さん」
「お疲れ様でした。ハリーも大変だったのでしょう? ゆっくり休んでね」
「ああ。じゃあ、またな」
ハリーは人狼でプレイヤーなのもあって、グールとの戦いにも駆り出されたせいだろう。
心身ともに疲れているみたいだ。
相変わらず、口は悪いし、言葉遣いも乱暴だけど相当にきているように見える。
彼は人狼とは言っても実は混血なので、純粋なルー・ガルーではないらしい。
それに喧嘩や乱闘騒ぎの経験はあっても実際に命のやり取りをする現場に居合わせたのは初めてだったのが、心にかなりくるらしい……。
それにしても「またな」なんて言って。
いつもと同じようにひらひらと手をだらしなく振って、別れたけど……。
またはあるのだろうか。
サマンサ様から頼まれた案件が解決したから、彼とのコンビもこれまでだと思うのだ。
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それこそ、まさかね。
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