【完結】(自称)モブ令嬢は見た

黒幸

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3rd Target ハルト

22 サマンサの無茶振り

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「メリーさん。あなたにはこれから、特訓してもらうわ」
「はい? えぇ? どういうことですか?」

 サマンサ様はにっこりと微笑んでいるけど、目が笑っていない。
 怖い……。

「あなたはこれを自在に操れるはず。いいえ。操れないといけないわ。分かるわね?」
「え、ええ。はい」

 有無を言わせぬ威圧感に然り以外の答えは許されないと思った。
 メリーさんと呼ばれるのは嫌なんですと言いたい。
 言いたいけど、言ってしまえば、何かが終わる気がする。
 これは決して、勘や予感ではなく、はっきりと分かる。
 サマンサ様は決して、下手に刺激してはいけないのだ……。

「これは一体?」
「精神感応を増幅させて、操れる便利な道具よ」
「えぇ?」

 合計十本。
 見た目は光の加減で白銀に煌く、羽根ペンにしか見えなかった。
 ただ、ペン先はペンには見えない。
 むしろ刃物の類みたいだ。
 取扱いが難しい以前にサマンサ様はこれで何を特訓しろと言うのだろうか。

「メリーさん。あなたの天帝の力なら、これを自在に動かせるはず。いいえ、やりなさい」
「えぇぇぇ。拒否権ないのですか」
「ないわね。一日でどうにかして?」
「一日で……」
「時間は待ってくれないの。このままでは不利になる一方だから……敵よりも先に動く必要があるわ」
「は、はい」

 サマンサ様曰く、天帝の目に秘められた力は真実を見通すだけではないらしい。
 高い空間認識能力とある程度の念動力(サイコキネシス)もある。
 そう断言された。

 それで思い出したことがあった。
 小さい頃、私はかなりのお転婆だった。
 野山を走り回り、男の子顔負けの筋金入りのお転婆だ。
 貴族の端くれみたいなものだから、年が近い男の子とも普通に遊んでいた。

 その頃、流行っていたのが木の枝にぶら下げた的に石を投げて、誰が一番、上手に的中させるかという遊びだった。
 やはり男の子の方が上手な子が多く、女の子はどちらかと言えば、苦手にしていたと思う。
 でも、負けず嫌いな私はちょっとしたインチキをして、百発百中できた。
 そのせいか、ガキ大将のようなポジションにいたのは秘密にしておきたい話だ……。

 そう。
 ここで重要なのはインチキ。
 私が当たれと願えば、ある程度、石の軌道を変えられたのだ。
 これが慣れるまでは全然、うまくいかなかったけど、慣れてくると目を瞑って投げても当てられるまで上達した。
 しかし、この話を親にしたら、秘密にしておくこと。
 さらに滅多に使ってはいけないと叱られたのだ。

 そういえば、この力を使った日は酷い頭痛になるのが常だった。
 あれは無意識のうちに天帝の力を使っていたのだろう。

「できるわね、メリーさん」
「できそうです。いえ、やります!」

 私の答えに満足したのか、サマンサ様の機嫌は大変、よろしいようで……。
 何よりです。
 さすがにあの頃の私とは違うから、今ならもっと上手にできるかもしれない。

 そんな風に軽く考えていた私が甘かったみたい。
 羽根ペンを自在に操れるようになるまで半日以上、精神集中させないといけないなんて。
 思ってもいなかった。
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