22 / 41
3rd Target ハルト
22 サマンサの無茶振り
しおりを挟む
「メリーさん。あなたにはこれから、特訓してもらうわ」
「はい? えぇ? どういうことですか?」
サマンサ様はにっこりと微笑んでいるけど、目が笑っていない。
怖い……。
「あなたはこれを自在に操れるはず。いいえ。操れないといけないわ。分かるわね?」
「え、ええ。はい」
有無を言わせぬ威圧感に然り以外の答えは許されないと思った。
メリーさんと呼ばれるのは嫌なんですと言いたい。
言いたいけど、言ってしまえば、何かが終わる気がする。
これは決して、勘や予感ではなく、はっきりと分かる。
サマンサ様は決して、下手に刺激してはいけないのだ……。
「これは一体?」
「精神感応を増幅させて、操れる便利な道具よ」
「えぇ?」
合計十本。
見た目は光の加減で白銀に煌く、羽根ペンにしか見えなかった。
ただ、ペン先はペンには見えない。
むしろ刃物の類みたいだ。
取扱いが難しい以前にサマンサ様はこれで何を特訓しろと言うのだろうか。
「メリーさん。あなたの天帝の力なら、これを自在に動かせるはず。いいえ、やりなさい」
「えぇぇぇ。拒否権ないのですか」
「ないわね。一日でどうにかして?」
「一日で……」
「時間は待ってくれないの。このままでは不利になる一方だから……敵よりも先に動く必要があるわ」
「は、はい」
サマンサ様曰く、天帝の目に秘められた力は真実を見通すだけではないらしい。
高い空間認識能力とある程度の念動力(サイコキネシス)もある。
そう断言された。
それで思い出したことがあった。
小さい頃、私はかなりのお転婆だった。
野山を走り回り、男の子顔負けの筋金入りのお転婆だ。
貴族の端くれみたいなものだから、年が近い男の子とも普通に遊んでいた。
その頃、流行っていたのが木の枝にぶら下げた的に石を投げて、誰が一番、上手に的中させるかという遊びだった。
やはり男の子の方が上手な子が多く、女の子はどちらかと言えば、苦手にしていたと思う。
でも、負けず嫌いな私はちょっとしたインチキをして、百発百中できた。
そのせいか、ガキ大将のようなポジションにいたのは秘密にしておきたい話だ……。
そう。
ここで重要なのはインチキ。
私が当たれと願えば、ある程度、石の軌道を変えられたのだ。
これが慣れるまでは全然、うまくいかなかったけど、慣れてくると目を瞑って投げても当てられるまで上達した。
しかし、この話を親にしたら、秘密にしておくこと。
さらに滅多に使ってはいけないと叱られたのだ。
そういえば、この力を使った日は酷い頭痛になるのが常だった。
あれは無意識のうちに天帝の力を使っていたのだろう。
「できるわね、メリーさん」
「できそうです。いえ、やります!」
私の答えに満足したのか、サマンサ様の機嫌は大変、よろしいようで……。
何よりです。
さすがにあの頃の私とは違うから、今ならもっと上手にできるかもしれない。
そんな風に軽く考えていた私が甘かったみたい。
羽根ペンを自在に操れるようになるまで半日以上、精神集中させないといけないなんて。
思ってもいなかった。
「はい? えぇ? どういうことですか?」
サマンサ様はにっこりと微笑んでいるけど、目が笑っていない。
怖い……。
「あなたはこれを自在に操れるはず。いいえ。操れないといけないわ。分かるわね?」
「え、ええ。はい」
有無を言わせぬ威圧感に然り以外の答えは許されないと思った。
メリーさんと呼ばれるのは嫌なんですと言いたい。
言いたいけど、言ってしまえば、何かが終わる気がする。
これは決して、勘や予感ではなく、はっきりと分かる。
サマンサ様は決して、下手に刺激してはいけないのだ……。
「これは一体?」
「精神感応を増幅させて、操れる便利な道具よ」
「えぇ?」
合計十本。
見た目は光の加減で白銀に煌く、羽根ペンにしか見えなかった。
ただ、ペン先はペンには見えない。
むしろ刃物の類みたいだ。
取扱いが難しい以前にサマンサ様はこれで何を特訓しろと言うのだろうか。
「メリーさん。あなたの天帝の力なら、これを自在に動かせるはず。いいえ、やりなさい」
「えぇぇぇ。拒否権ないのですか」
「ないわね。一日でどうにかして?」
「一日で……」
「時間は待ってくれないの。このままでは不利になる一方だから……敵よりも先に動く必要があるわ」
「は、はい」
サマンサ様曰く、天帝の目に秘められた力は真実を見通すだけではないらしい。
高い空間認識能力とある程度の念動力(サイコキネシス)もある。
そう断言された。
それで思い出したことがあった。
小さい頃、私はかなりのお転婆だった。
野山を走り回り、男の子顔負けの筋金入りのお転婆だ。
貴族の端くれみたいなものだから、年が近い男の子とも普通に遊んでいた。
その頃、流行っていたのが木の枝にぶら下げた的に石を投げて、誰が一番、上手に的中させるかという遊びだった。
やはり男の子の方が上手な子が多く、女の子はどちらかと言えば、苦手にしていたと思う。
でも、負けず嫌いな私はちょっとしたインチキをして、百発百中できた。
そのせいか、ガキ大将のようなポジションにいたのは秘密にしておきたい話だ……。
そう。
ここで重要なのはインチキ。
私が当たれと願えば、ある程度、石の軌道を変えられたのだ。
これが慣れるまでは全然、うまくいかなかったけど、慣れてくると目を瞑って投げても当てられるまで上達した。
しかし、この話を親にしたら、秘密にしておくこと。
さらに滅多に使ってはいけないと叱られたのだ。
そういえば、この力を使った日は酷い頭痛になるのが常だった。
あれは無意識のうちに天帝の力を使っていたのだろう。
「できるわね、メリーさん」
「できそうです。いえ、やります!」
私の答えに満足したのか、サマンサ様の機嫌は大変、よろしいようで……。
何よりです。
さすがにあの頃の私とは違うから、今ならもっと上手にできるかもしれない。
そんな風に軽く考えていた私が甘かったみたい。
羽根ペンを自在に操れるようになるまで半日以上、精神集中させないといけないなんて。
思ってもいなかった。
1
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる