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第3章 茨の姫君
閑話 小さな勇者は分からない
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小さな勇者レオニード視点
君は勇者だと言われて、ここにいる。
僕は自分が勇者なのかは分からない。
ただ、父さんや島の仲間達を守ろうとして、戦っただけなんだ。
気が付いたら、岩の大男を倒していた。
何が起こったのか、覚えていない。
覚えているのはただ、自分にも分からない大きな何かが僕の体を通して、出て行ったことくらいだ。
怪我していた父さんだけど治るとすぐに、僕の剣術や武術の稽古を始めた。
今まで以上に熱心だと思う。
父さんの稽古は大変だったけど、毎日が楽しかった。
そんな時、島にまたお客さんがやって来た。
今度のお客さんは不思議なことに光の輪の中から、現れたんだ。
父さんはそれを魔法だと言った。
初めて見た魔法に僕は怖いというよりはワクワクしていたというのが本音だ。
「俺はヘイムダル。君が勇者だな?」
「僕はレオニードです」
「何か、不思議な子だな。ああ、そうか。そういうことか」
光の中から、現れた何だか、眩しい男の人の言葉が良く分からなかった。
ヘイムダルと名乗った人で僕が見たことのある人間は二人目だったからだ。
父さんに言われた通り、礼儀正しく名前を言うと不思議な顔をされたのは何でだろう?
そして、気が付いたら、ヘイムダルさんの知り合いだというヘルモーズさんに連れられて、島から、とても遠いところにいる。
ヘルモーズさんから、用事が済んだら、すぐに島に帰れると聞いていた。
でも、僕はこのニブルヘイムという大きな島? が好きだ。
島では見たことがないたくさんの人間がいて、女の人というのも初めて見た。
父さんが言ってた。
女の人を守るのが男の仕事だ。
男は黙って、生き様を見せるものだって。
良く分からないけど、女の人はとても優しくて、いい匂いがする生き物ということだけは分かった。
母さんも女の人だから、こうだったんだろうか?
どうやら、僕はこの島? のお姫様を守る勇者の候補として、呼ばれたみたいだ。
お姫様は本で読んだので知っていた。
お姫様が守らないといけない存在だということも父さんから、聞いていた。
父さんは見た目は怖そうだし、稽古の時もスゴク怖い。
だけど、お姫様の話をする時だけは目がキラキラと輝いてるんだ。
父さんはきっと、ろまんちすたなんだろう。
お姫様はか弱くて、かわいい。
父さんはそうも言っていた。
でも、本当にそうだったので驚いた。
島には僕しか人間がいなかったから、女の人を見たことがなかった。
でも、ここに来て、色々な人と出会って、分かった。
そんな僕にもはっきりと分かる。
目の前に立っているお姫様は間違いなく、お姫様だってことが。
髪の毛が長くて、キラキラしていてサラサラしているんだ。
それで腕とか、足も細くて白い。
彼女が側に寄って来ただけで花のようないい匂いがしてくる。
ピーちゃんよりもかわいい……。
「ごきげんよう。小さな勇者さん」
かわいくないや……。
お姫様は僕よりもちょっと大きいだけなのにそう呼びかけてきたんだ。
この子と仲良くなれるんだろうかと不安に思って、見上げると彼女と目が合った。
僕と同じ、真っ赤な目。
なぜかは分からないけど、僕はお姫様に勇者として選ばれた。
勇者とお姫様は仲良くしないといけない決まりなのか、やたらとぴったりと体を近付けてくるけど、不思議と嫌には思えない。
彼女がお姫様なのにあまり、お姫様らしくないせいかな?
思ったことをズケズケと言うし、僕にもそうして欲しいと言うんだ。
気が付いたら、僕はお姫様のことをリーナと愛称で呼ぶようになっていて、彼女にもレオと呼ばれるようになっていた。
ずっと前から、そうだった気がしてくるのは彼女との距離が近いせいだと思う。
そして、僕とリーナは二人きりで森の道を歩いている。
でも、旅というほどのことはないと聞いた。
そんなに遠くない泉に行くだけで終わるらしい。
リーナも「気楽にしていて、いいの」と言いながら、着ていたもっこもこの真っ黒な毛皮を脱いでいる。
脱いだもっこもこ適当に宙に放り投げるところが彼女らしくて、つい吹き出すとなぜか、怒られた。
不思議なことにもっこもこは消えてしまう。
どうやら、便利な見えない箪笥があるらしい。
リーナはというと「そういうことではないでしょう。もうっ」と一人でどんどん、先に行こうとする。
「ちょっと。待ってよ、リーナ」
もっこもこを脱いだリーナは急に薄着になっていて、細くて、白い彼女の手と足が僕の前でチラチラと動いている。
短めの白い服から、見える彼女の体は僕と違って、柔らかそうに見える。
触ったら、ふにふにしていて、気持ちよさそうだ。
「レオ。何を見ているの?」
彼女は僕が考えていたことに気付いたのかな。
まさかね。
勘が鋭すぎるよ……。
でも、振り返ったリーナの顔は気のせいか、ちょっぴり赤くなっているように見えた。
何でだろう?
君は勇者だと言われて、ここにいる。
僕は自分が勇者なのかは分からない。
ただ、父さんや島の仲間達を守ろうとして、戦っただけなんだ。
気が付いたら、岩の大男を倒していた。
何が起こったのか、覚えていない。
覚えているのはただ、自分にも分からない大きな何かが僕の体を通して、出て行ったことくらいだ。
怪我していた父さんだけど治るとすぐに、僕の剣術や武術の稽古を始めた。
今まで以上に熱心だと思う。
父さんの稽古は大変だったけど、毎日が楽しかった。
そんな時、島にまたお客さんがやって来た。
今度のお客さんは不思議なことに光の輪の中から、現れたんだ。
父さんはそれを魔法だと言った。
初めて見た魔法に僕は怖いというよりはワクワクしていたというのが本音だ。
「俺はヘイムダル。君が勇者だな?」
「僕はレオニードです」
「何か、不思議な子だな。ああ、そうか。そういうことか」
光の中から、現れた何だか、眩しい男の人の言葉が良く分からなかった。
ヘイムダルと名乗った人で僕が見たことのある人間は二人目だったからだ。
父さんに言われた通り、礼儀正しく名前を言うと不思議な顔をされたのは何でだろう?
そして、気が付いたら、ヘイムダルさんの知り合いだというヘルモーズさんに連れられて、島から、とても遠いところにいる。
ヘルモーズさんから、用事が済んだら、すぐに島に帰れると聞いていた。
でも、僕はこのニブルヘイムという大きな島? が好きだ。
島では見たことがないたくさんの人間がいて、女の人というのも初めて見た。
父さんが言ってた。
女の人を守るのが男の仕事だ。
男は黙って、生き様を見せるものだって。
良く分からないけど、女の人はとても優しくて、いい匂いがする生き物ということだけは分かった。
母さんも女の人だから、こうだったんだろうか?
どうやら、僕はこの島? のお姫様を守る勇者の候補として、呼ばれたみたいだ。
お姫様は本で読んだので知っていた。
お姫様が守らないといけない存在だということも父さんから、聞いていた。
父さんは見た目は怖そうだし、稽古の時もスゴク怖い。
だけど、お姫様の話をする時だけは目がキラキラと輝いてるんだ。
父さんはきっと、ろまんちすたなんだろう。
お姫様はか弱くて、かわいい。
父さんはそうも言っていた。
でも、本当にそうだったので驚いた。
島には僕しか人間がいなかったから、女の人を見たことがなかった。
でも、ここに来て、色々な人と出会って、分かった。
そんな僕にもはっきりと分かる。
目の前に立っているお姫様は間違いなく、お姫様だってことが。
髪の毛が長くて、キラキラしていてサラサラしているんだ。
それで腕とか、足も細くて白い。
彼女が側に寄って来ただけで花のようないい匂いがしてくる。
ピーちゃんよりもかわいい……。
「ごきげんよう。小さな勇者さん」
かわいくないや……。
お姫様は僕よりもちょっと大きいだけなのにそう呼びかけてきたんだ。
この子と仲良くなれるんだろうかと不安に思って、見上げると彼女と目が合った。
僕と同じ、真っ赤な目。
なぜかは分からないけど、僕はお姫様に勇者として選ばれた。
勇者とお姫様は仲良くしないといけない決まりなのか、やたらとぴったりと体を近付けてくるけど、不思議と嫌には思えない。
彼女がお姫様なのにあまり、お姫様らしくないせいかな?
思ったことをズケズケと言うし、僕にもそうして欲しいと言うんだ。
気が付いたら、僕はお姫様のことをリーナと愛称で呼ぶようになっていて、彼女にもレオと呼ばれるようになっていた。
ずっと前から、そうだった気がしてくるのは彼女との距離が近いせいだと思う。
そして、僕とリーナは二人きりで森の道を歩いている。
でも、旅というほどのことはないと聞いた。
そんなに遠くない泉に行くだけで終わるらしい。
リーナも「気楽にしていて、いいの」と言いながら、着ていたもっこもこの真っ黒な毛皮を脱いでいる。
脱いだもっこもこ適当に宙に放り投げるところが彼女らしくて、つい吹き出すとなぜか、怒られた。
不思議なことにもっこもこは消えてしまう。
どうやら、便利な見えない箪笥があるらしい。
リーナはというと「そういうことではないでしょう。もうっ」と一人でどんどん、先に行こうとする。
「ちょっと。待ってよ、リーナ」
もっこもこを脱いだリーナは急に薄着になっていて、細くて、白い彼女の手と足が僕の前でチラチラと動いている。
短めの白い服から、見える彼女の体は僕と違って、柔らかそうに見える。
触ったら、ふにふにしていて、気持ちよさそうだ。
「レオ。何を見ているの?」
彼女は僕が考えていたことに気付いたのかな。
まさかね。
勘が鋭すぎるよ……。
でも、振り返ったリーナの顔は気のせいか、ちょっぴり赤くなっているように見えた。
何でだろう?
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