9 / 34
9 決着
しおりを挟む
エビ野郎は負傷した腕から流れる体液を武器にして、決死の吶喊をしてきたって寸法だ。
十本ある歩脚も足払いで大方は折ったはずなのにもう回復させたんだろうか?
とんでもない生物だな……。
このままでは避けきれないのは確かだ。
最低限、急所への直撃を避けるべく、防御姿勢を取るしかない。
そう覚悟した。
「……あれ?」
「んがー」
想像していた衝撃は来ない。
代わりに聞こえてきたのはこの緊迫した状況には似つかわしくない間の抜けたでかいヤツの声だった。
スリーパーがエビ野郎と俺の間に割って入ったんだ。
強酸性の体液を恐れず、俺を助けようと体当たりを敢行した。
大きな体で鈍重そうな外見からは想像できない瞬発力と敏捷性だった。
スリーパーの体当たりをもろに喰らったエビ野郎は、予想外の攻撃が完璧な不意打ちとなったのか、激しく吹き飛ばされて石壁に激突した。
えらく派手な音がしたし、エビ野郎は半分、石壁にめり込んでいる。
かなりのダメージを負っただろう。
しかし、それよりも心配なのはスリーパーの方だ。
「大丈夫か?」
「んが」
案の定、もろにヤツの体液を浴びたようだ。
スリーパーの着ていた白いタンクトップが原型を留めてないし、酸で溶けた何かの嫌な臭いが充満している。
それなのにスリーパーのヤツは満面の笑みを止めない。
どうなっているんだ、こいつの頭は? と思いつつも俺を助けようと動いてくれたのは事実だ。
そうである以上、今度は俺がこいつを助けなくちゃ、いけないと思うんだよな。
「ありがとな。ここからは俺に任せてくれ」
「んがー?」
いまいち、会話が成り立っている自信がないし、言葉が伝わっているようには思えないが物事には筋道ってのが大事だとじっちゃんも言ってたしな。
とにかく態度でしっかりと表明したから、大丈夫だろう。
「バ~カ! 使えばいいんじゃない?」
危ないヤツだ。
スリーパーよりも会話ができるオルガの方が、数倍危険だと言える自信がある。
できあがった槍を人に投げつけて、寄越すヤツはどうかしてるだろ。
危うく回避して、受け取った。
いや、これを受け取ったと言うのは無理がありそうだが……。
「それでとっとと止めを刺しなさいよ」
しかし、敵意があってやったのではなさそうだから、少々調子が狂う。
だからって、善意とも思えないし、ましてや好意と取るのは無理がある。
まあ、槍はありがたく使わせてもらうけどさ。
「あんな音がしたのにへっちゃらとは化け物かよ」
エビ野郎がガラガラと嫌な音を立て、半身がめり込んだ壁から脱出した。
あれほどの激しい衝突音が生じたのにそれほどの傷は負ってないようだ。
頑丈なんて言葉では生温い驚異的な身体構造をしている生物と思って、いいだろう。
エビ野郎は負傷の原因になった俺とスリーパーに深淵の色をした表情のない目を向けてくる。
なぜか、漠然と憎悪の炎が宿っているように感じた。
それと同時に湧き上がってくるのは、言いようのない高揚感だ。
槍を握る拳に自然と力が入る。
スリーパーは言葉が通じたのか、分かってくれたのか、下がってくれたから、俺とエビ野郎の決闘だ。
「さあ、来いよ、エビ野郎」
どちらもが隙を窺って、身動ぎ一つできない。
過酷な沈黙が場を支配していた。
先に動いた方が負ける。
そんな感覚だった。
耳障りな音が再び、聞こえる。
エビ野郎が立てるギチギチギチという生理的に受け付けない何とも耳障りな音だ。
仕掛けてきたのはエビ野郎だった。
俺に向かって、待っ直線に向かってきた。
しかし、ヤツは何の考えもなしに突っ込んできた訳ではなかった。
とっておきの秘密兵器を隠し持っていたんだ。
ヤツが動き出すのと同時に俺も足に力を籠めて、全力で床を蹴り出す。
どちらもが渾身の力と共に動き、真正面から激突するって寸法だ。
「あっぶねーな」
正々堂々と真正面から、力比べをするなんて考えはエビ野郎にはなかったらしい。
秘密兵器はヤツの口内にあった。
馬鹿正直に面と向かって激突しようとした俺の顔めがけて、それが飛んできたんだ。
この時ばかりはじっちゃんの修行に感謝したくなったね。
目の前で投げる石を避けられるようになるまで御飯抜きと言われた日には、じっちゃんを恨んだけどさ。
まさか、こういうところで役に立つとは思わなかった。
鍛えられた反射神経と動体視力、それに筋力は裏切らない。
そして、こればかりはオルガに感謝だ。
槍のお陰だ!
とっさに槍の穂先でそれを弾くことに成功した。
エビに伸縮自在の鋼鉄みたいに堅い舌があるとは思わなかったぜ。
危なかった。
しかし、これは逆に俺にチャンスが巡ってきたということさ。
そのまま、槍をヤツの口に目掛けて、思い切り突き刺してやった。
思った以上に力が入ったらしい。
エビ野郎は串刺し状態になって、石壁に磔になった。
まるで不格好な標本だな……。
十本ある歩脚も足払いで大方は折ったはずなのにもう回復させたんだろうか?
とんでもない生物だな……。
このままでは避けきれないのは確かだ。
最低限、急所への直撃を避けるべく、防御姿勢を取るしかない。
そう覚悟した。
「……あれ?」
「んがー」
想像していた衝撃は来ない。
代わりに聞こえてきたのはこの緊迫した状況には似つかわしくない間の抜けたでかいヤツの声だった。
スリーパーがエビ野郎と俺の間に割って入ったんだ。
強酸性の体液を恐れず、俺を助けようと体当たりを敢行した。
大きな体で鈍重そうな外見からは想像できない瞬発力と敏捷性だった。
スリーパーの体当たりをもろに喰らったエビ野郎は、予想外の攻撃が完璧な不意打ちとなったのか、激しく吹き飛ばされて石壁に激突した。
えらく派手な音がしたし、エビ野郎は半分、石壁にめり込んでいる。
かなりのダメージを負っただろう。
しかし、それよりも心配なのはスリーパーの方だ。
「大丈夫か?」
「んが」
案の定、もろにヤツの体液を浴びたようだ。
スリーパーの着ていた白いタンクトップが原型を留めてないし、酸で溶けた何かの嫌な臭いが充満している。
それなのにスリーパーのヤツは満面の笑みを止めない。
どうなっているんだ、こいつの頭は? と思いつつも俺を助けようと動いてくれたのは事実だ。
そうである以上、今度は俺がこいつを助けなくちゃ、いけないと思うんだよな。
「ありがとな。ここからは俺に任せてくれ」
「んがー?」
いまいち、会話が成り立っている自信がないし、言葉が伝わっているようには思えないが物事には筋道ってのが大事だとじっちゃんも言ってたしな。
とにかく態度でしっかりと表明したから、大丈夫だろう。
「バ~カ! 使えばいいんじゃない?」
危ないヤツだ。
スリーパーよりも会話ができるオルガの方が、数倍危険だと言える自信がある。
できあがった槍を人に投げつけて、寄越すヤツはどうかしてるだろ。
危うく回避して、受け取った。
いや、これを受け取ったと言うのは無理がありそうだが……。
「それでとっとと止めを刺しなさいよ」
しかし、敵意があってやったのではなさそうだから、少々調子が狂う。
だからって、善意とも思えないし、ましてや好意と取るのは無理がある。
まあ、槍はありがたく使わせてもらうけどさ。
「あんな音がしたのにへっちゃらとは化け物かよ」
エビ野郎がガラガラと嫌な音を立て、半身がめり込んだ壁から脱出した。
あれほどの激しい衝突音が生じたのにそれほどの傷は負ってないようだ。
頑丈なんて言葉では生温い驚異的な身体構造をしている生物と思って、いいだろう。
エビ野郎は負傷の原因になった俺とスリーパーに深淵の色をした表情のない目を向けてくる。
なぜか、漠然と憎悪の炎が宿っているように感じた。
それと同時に湧き上がってくるのは、言いようのない高揚感だ。
槍を握る拳に自然と力が入る。
スリーパーは言葉が通じたのか、分かってくれたのか、下がってくれたから、俺とエビ野郎の決闘だ。
「さあ、来いよ、エビ野郎」
どちらもが隙を窺って、身動ぎ一つできない。
過酷な沈黙が場を支配していた。
先に動いた方が負ける。
そんな感覚だった。
耳障りな音が再び、聞こえる。
エビ野郎が立てるギチギチギチという生理的に受け付けない何とも耳障りな音だ。
仕掛けてきたのはエビ野郎だった。
俺に向かって、待っ直線に向かってきた。
しかし、ヤツは何の考えもなしに突っ込んできた訳ではなかった。
とっておきの秘密兵器を隠し持っていたんだ。
ヤツが動き出すのと同時に俺も足に力を籠めて、全力で床を蹴り出す。
どちらもが渾身の力と共に動き、真正面から激突するって寸法だ。
「あっぶねーな」
正々堂々と真正面から、力比べをするなんて考えはエビ野郎にはなかったらしい。
秘密兵器はヤツの口内にあった。
馬鹿正直に面と向かって激突しようとした俺の顔めがけて、それが飛んできたんだ。
この時ばかりはじっちゃんの修行に感謝したくなったね。
目の前で投げる石を避けられるようになるまで御飯抜きと言われた日には、じっちゃんを恨んだけどさ。
まさか、こういうところで役に立つとは思わなかった。
鍛えられた反射神経と動体視力、それに筋力は裏切らない。
そして、こればかりはオルガに感謝だ。
槍のお陰だ!
とっさに槍の穂先でそれを弾くことに成功した。
エビに伸縮自在の鋼鉄みたいに堅い舌があるとは思わなかったぜ。
危なかった。
しかし、これは逆に俺にチャンスが巡ってきたということさ。
そのまま、槍をヤツの口に目掛けて、思い切り突き刺してやった。
思った以上に力が入ったらしい。
エビ野郎は串刺し状態になって、石壁に磔になった。
まるで不格好な標本だな……。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる