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本編
閑話 僕の大事なお姫様
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僕は楠木武。
どこにでもいそうな何の特徴もない普通の高校生です。
ああ。
普通じゃないところがありました。
僕には生まれた時から縁がある幼馴染がいるんですが、彼女は僕にとって特別な存在なんです。
絵本やおとぎ話に出てくるプリンセスがそのまま、目の前に出てきたと言ったら、どう思いますか?
信じていませんね。
でも、彼女は本当にそんな存在なんです。
物心つく前から、彼女といとこのカオルといつも一緒でした。
そんな僕にとって、彼女の見た目がちょっと変わっていることなんて、全然気になりません。
『おひめさまみたいだね』と小さい頃の僕が言うと『ほんとう? うれしいな』と太陽のような笑顔を見せてくれる彼女。
しかし、僕の生きている世界は彼女にとって優しくなかったんです。
僕やカオルが側にいないと彼女はいつも、生傷が絶えなくて、いつしか笑うことすらなくなって。
僕が彼女を守ると決めたのはその頃だったと思います。
僕たちの関係はお姫様と騎士。
僕はそれで充分だと思っていました。
でも、そんな関係が終わりを告げるのは意外と早かったんです。
小学校に上がる頃だったでしょうか。
彼女が芸能界にスカウトされるくらい注目されるようになったからです。
周りの反応はあまりに露骨でした。
手のひらを返すというのは本当にあるんですね。
彼女に擦り寄るように近付き、嘘の笑顔に塗れた人たちが彼女を囲んでいたんです。
彼女は笑っているのにその心は泣いているように見えました。
僕は同じように変わらず、彼女の隣で支えようとしました。
彼女が僕の前では以前と同じように明るく、笑ってくれたからです。
迷惑だったのかな?
僕の存在はいつしか、彼女にとっていらないものになったんだと思います。
確か、小学校も高学年になった頃でした。
彼女は一人だけ、どんどん大人になっていったんです。
同じくらいだった背丈はいつの間にか、彼女が一番高くなっていて、見ているだけで眩しくなってくるくらいにかわいくて、きれいだった。
僕達の幼馴染は同じ世界の人間と思えない、そんな風に考えるくらいに。
その頃からでしょうか。
彼女の態度がおかしくなったのは。
耳まで真っ赤になってそっぽを向きながら『べ、別にタケルにあげようと思って作ったんじゃないから。たまたま作って余っただけなんだからね』とバレンタインに大きなハート型のチョコを渡してきたんです。
僕が珍しく風邪でダウンした時には『し、心配してる訳じゃないんだから、勘違いしないでよね』と言いながら、お粥を作ってくれただけじゃなくて、ふーふー冷ましながら食べさせてくれましたし。
とにかく、言ってることとやってることが正反対で無茶苦茶なんです。
最初は嫌われたのかと思って、ショックでした。
『彼女の側にいていいのかな?』って。
そう悩んでいた僕の背中を押してくれたのはいとこのカオルでした。
僕は小さい頃からサッカーをやっていまして。
それでサッカー部に所属している僕の姿を彼女が一度も見に来てくれないから、僕に興味がないんだろうと思っていたんです。
それが間違いだったんです。
「本当に知らなかったの? アリスはいつも遠くから、タケルを見ているのに。鈍感ね」
知りませんでした。
彼女が帰宅部であることにこだわっていたのも僕を遠くから見る為だったなんて。
でも、それって、一種のストーカーみたいだなとも思いました。
アリスにストーカーされるなら、それはそれで嬉しいんですけどね。
「マネージャーやればいいのにって言ったら、あの子なんて言ったと思う?『あたしはタケルに色々としてあげたいの。他の子なんて知らないもん』って、タケル? どうしたの?」
「あ……うん、何でもないよ」
僕は決めました。
やっぱり、僕は彼女の騎士であるべきなんだ、と。
僕は彼女のことが好きです。
いつも一緒にいたい。
側にいたい。
でも、彼女はお姫様だから、騎士である僕は彼女を守ることに全力を尽くさなくちゃいけない。
お姫様が好きになるのも好きになっていいのも王子様であって、騎士じゃないんだ。
だから、左足を軽く踏まれたのも僕が悪いから、しょうがないんだよね。
僕だって、本当は足利さんに教科書を貸すつもりだったんだ。
それでアリスに教科書を見せてもらえば、いいかなって。
そうしたら……『この方が見やすいですよね』って、足利さんが席をくっつけてくるとは考えてなかった。
まさか、身体まで近づけてくると!
うん、だからこれくらいの罰はしょうがない。
『甘んじて受けようじゃないか』って、ちょっとかっこつけながら、彼女に微笑みかけると『くぁwせdrftgyふじこlp』って。
何、言ってるか分からないよ。
僕のお姫様はちょっと我が儘で素直じゃないけど、僕の前でだけ、誰にも見せない笑顔を見せてくれる大事な人です。
どこにでもいそうな何の特徴もない普通の高校生です。
ああ。
普通じゃないところがありました。
僕には生まれた時から縁がある幼馴染がいるんですが、彼女は僕にとって特別な存在なんです。
絵本やおとぎ話に出てくるプリンセスがそのまま、目の前に出てきたと言ったら、どう思いますか?
信じていませんね。
でも、彼女は本当にそんな存在なんです。
物心つく前から、彼女といとこのカオルといつも一緒でした。
そんな僕にとって、彼女の見た目がちょっと変わっていることなんて、全然気になりません。
『おひめさまみたいだね』と小さい頃の僕が言うと『ほんとう? うれしいな』と太陽のような笑顔を見せてくれる彼女。
しかし、僕の生きている世界は彼女にとって優しくなかったんです。
僕やカオルが側にいないと彼女はいつも、生傷が絶えなくて、いつしか笑うことすらなくなって。
僕が彼女を守ると決めたのはその頃だったと思います。
僕たちの関係はお姫様と騎士。
僕はそれで充分だと思っていました。
でも、そんな関係が終わりを告げるのは意外と早かったんです。
小学校に上がる頃だったでしょうか。
彼女が芸能界にスカウトされるくらい注目されるようになったからです。
周りの反応はあまりに露骨でした。
手のひらを返すというのは本当にあるんですね。
彼女に擦り寄るように近付き、嘘の笑顔に塗れた人たちが彼女を囲んでいたんです。
彼女は笑っているのにその心は泣いているように見えました。
僕は同じように変わらず、彼女の隣で支えようとしました。
彼女が僕の前では以前と同じように明るく、笑ってくれたからです。
迷惑だったのかな?
僕の存在はいつしか、彼女にとっていらないものになったんだと思います。
確か、小学校も高学年になった頃でした。
彼女は一人だけ、どんどん大人になっていったんです。
同じくらいだった背丈はいつの間にか、彼女が一番高くなっていて、見ているだけで眩しくなってくるくらいにかわいくて、きれいだった。
僕達の幼馴染は同じ世界の人間と思えない、そんな風に考えるくらいに。
その頃からでしょうか。
彼女の態度がおかしくなったのは。
耳まで真っ赤になってそっぽを向きながら『べ、別にタケルにあげようと思って作ったんじゃないから。たまたま作って余っただけなんだからね』とバレンタインに大きなハート型のチョコを渡してきたんです。
僕が珍しく風邪でダウンした時には『し、心配してる訳じゃないんだから、勘違いしないでよね』と言いながら、お粥を作ってくれただけじゃなくて、ふーふー冷ましながら食べさせてくれましたし。
とにかく、言ってることとやってることが正反対で無茶苦茶なんです。
最初は嫌われたのかと思って、ショックでした。
『彼女の側にいていいのかな?』って。
そう悩んでいた僕の背中を押してくれたのはいとこのカオルでした。
僕は小さい頃からサッカーをやっていまして。
それでサッカー部に所属している僕の姿を彼女が一度も見に来てくれないから、僕に興味がないんだろうと思っていたんです。
それが間違いだったんです。
「本当に知らなかったの? アリスはいつも遠くから、タケルを見ているのに。鈍感ね」
知りませんでした。
彼女が帰宅部であることにこだわっていたのも僕を遠くから見る為だったなんて。
でも、それって、一種のストーカーみたいだなとも思いました。
アリスにストーカーされるなら、それはそれで嬉しいんですけどね。
「マネージャーやればいいのにって言ったら、あの子なんて言ったと思う?『あたしはタケルに色々としてあげたいの。他の子なんて知らないもん』って、タケル? どうしたの?」
「あ……うん、何でもないよ」
僕は決めました。
やっぱり、僕は彼女の騎士であるべきなんだ、と。
僕は彼女のことが好きです。
いつも一緒にいたい。
側にいたい。
でも、彼女はお姫様だから、騎士である僕は彼女を守ることに全力を尽くさなくちゃいけない。
お姫様が好きになるのも好きになっていいのも王子様であって、騎士じゃないんだ。
だから、左足を軽く踏まれたのも僕が悪いから、しょうがないんだよね。
僕だって、本当は足利さんに教科書を貸すつもりだったんだ。
それでアリスに教科書を見せてもらえば、いいかなって。
そうしたら……『この方が見やすいですよね』って、足利さんが席をくっつけてくるとは考えてなかった。
まさか、身体まで近づけてくると!
うん、だからこれくらいの罰はしょうがない。
『甘んじて受けようじゃないか』って、ちょっとかっこつけながら、彼女に微笑みかけると『くぁwせdrftgyふじこlp』って。
何、言ってるか分からないよ。
僕のお姫様はちょっと我が儘で素直じゃないけど、僕の前でだけ、誰にも見せない笑顔を見せてくれる大事な人です。
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