6 / 43
本編
閑話 タケル、ネトゲにはまる
しおりを挟む
「タケル。これを一緒にやろう」
VR機器と結構、大きな化粧箱に入ったゲームソフトを手に僕を説得しようとしているのはいとこのカオルだ。
「でもね、カオル。来週からテストなのを忘れてないかい?」
「大丈夫。私は準備万端だから。気にしない」
「僕の準備は万端じゃないとは思わない?」
「そう? タケルだから平気」
カオルは昔から、こういう子だった。
何でもそつなくこなしてしまうから、他の人も自分と同じと思ってるんだよなぁ。
そんなにスポーツも勉強も出来る奴、そういないって。
カオルにそう言ったら、『君もね』と言われたんだが僕は普通だと思うんだ。
「買い被りすぎだって。僕なんて、そんなに大したものじゃないし」
僕はサッカーが好きだ。
だから、ただ我武者羅に一生懸命、やっているだけなんだ。
それに周りの凄さを知っているだけに、どうしてもカオルが言う『君もね』という言葉が信じられない。
僕たちはまだ学生でその中の小さな世界しか知らない。
だけど……アリスは既に社会に出て仕事をしている。
それなのに自分の凄さに気付いてないんだ。
十位でもおバカと思っているんだよね。
『やっぱり、アリスは世界の宝だよね?』と言ったら、『それは痘痕も靨ってやつで……』と真顔で一時間くらいカオルの説教を貰ったっけ。
「だから、大丈夫。これを一緒にやろう。問題ない」
「問題あると思うんだよ? 分かった……分かったよ。一緒に遊べばいいんだね。それで何かな、そのゲーム」
「VRMMORPG『グリモワール・クリーク』だよ」
「長いね……最先端ぽい?」
「最新も最新。アバターは自分の見た目そのまま。第二の人生始まるよ? すごい?」
「すごい……と思うよ。で、誰に勧められたの?」
「部長」
あぁ、あの部長さんか。
カオルはスポーツ万能なのに入っているのは文芸部なんだ。
才能の無駄遣いというか、勿体ないけどさ。
本人が文芸部を希望してるんだ。
部長さんやアリスと仲が良い田村さんと一緒にいる時は楽しそうにしてるしね。
「やっぱりね。そうだと思ったよ」
「だから、タケルもやる。これは運命」
「大袈裟だなぁ。分かったよ、でも、それ……タダで貰う訳には。高いでしょ、VRって」
「気にしない。私は気にしない」
カオルはこう言いだしたら、聞かない頑固なところがある。
おまけにお嬢様だから、ちょっと金銭感覚がずれてる。
金銭だけじゃなくて、他の感覚もなんだけどね。
「分かった、分かったよ。すぐに始めればいいんだね」
「そう、すぐにやろう? まずは始めて。教えるから」
こうして、僕はいとこに勧められ、テスト前だっていうのにMMORPGを始めることになった。
これのせいで今回のテストの成績が落ちたら、カオルのせいだな。
いや、でも、VR機器とゲーム貰っちゃったしなぁ。
自己責任ってことで諦めるか。
「えっと、何々? 『グリモワール・クリーク』っていうのか。聞いたことないゲームだな」
僕は一応、ゲームをそこそこ遊ぶ方だ。
サッカーをやっているから、遊ぶのもサッカーゲームばかりだけどね。
でも、RPGも多少は遊んだことがある。
あるんだけど……これは聞いたことがないなぁ。
カオルが教えてくれた事前情報では原作は乙女ゲームだったらしい。
それって、女の子向けじゃないかな?
「剣と魔法の世界アースガルドであなたの好きな生き方を……あぁ、よくある宣伝文句か?」
とりあえず、起動するとVR機器に全身をスキャンされる。
アバターを作る為の準備ってやつだね。
僕は見た目も平凡だから、目立たないだろう。
例えゲーム内で知り合いに会ったとしても気にすることないし。
カオルは『バレないように合流してから、いいアイテム渡す』って。息巻いてた。
「よし……ちょっとだけ、遊ぶくらいなら大丈夫だろ」
その考えが甘いと思い知らされるのは翌朝、寝過ごしてアリスに叩き起こされたからだ。
やっぱり、駄目だったよ。
深夜遅くまでネトゲは駄目! 絶対!
癖になったら、やばいやつじゃないか、これ。
VR機器と結構、大きな化粧箱に入ったゲームソフトを手に僕を説得しようとしているのはいとこのカオルだ。
「でもね、カオル。来週からテストなのを忘れてないかい?」
「大丈夫。私は準備万端だから。気にしない」
「僕の準備は万端じゃないとは思わない?」
「そう? タケルだから平気」
カオルは昔から、こういう子だった。
何でもそつなくこなしてしまうから、他の人も自分と同じと思ってるんだよなぁ。
そんなにスポーツも勉強も出来る奴、そういないって。
カオルにそう言ったら、『君もね』と言われたんだが僕は普通だと思うんだ。
「買い被りすぎだって。僕なんて、そんなに大したものじゃないし」
僕はサッカーが好きだ。
だから、ただ我武者羅に一生懸命、やっているだけなんだ。
それに周りの凄さを知っているだけに、どうしてもカオルが言う『君もね』という言葉が信じられない。
僕たちはまだ学生でその中の小さな世界しか知らない。
だけど……アリスは既に社会に出て仕事をしている。
それなのに自分の凄さに気付いてないんだ。
十位でもおバカと思っているんだよね。
『やっぱり、アリスは世界の宝だよね?』と言ったら、『それは痘痕も靨ってやつで……』と真顔で一時間くらいカオルの説教を貰ったっけ。
「だから、大丈夫。これを一緒にやろう。問題ない」
「問題あると思うんだよ? 分かった……分かったよ。一緒に遊べばいいんだね。それで何かな、そのゲーム」
「VRMMORPG『グリモワール・クリーク』だよ」
「長いね……最先端ぽい?」
「最新も最新。アバターは自分の見た目そのまま。第二の人生始まるよ? すごい?」
「すごい……と思うよ。で、誰に勧められたの?」
「部長」
あぁ、あの部長さんか。
カオルはスポーツ万能なのに入っているのは文芸部なんだ。
才能の無駄遣いというか、勿体ないけどさ。
本人が文芸部を希望してるんだ。
部長さんやアリスと仲が良い田村さんと一緒にいる時は楽しそうにしてるしね。
「やっぱりね。そうだと思ったよ」
「だから、タケルもやる。これは運命」
「大袈裟だなぁ。分かったよ、でも、それ……タダで貰う訳には。高いでしょ、VRって」
「気にしない。私は気にしない」
カオルはこう言いだしたら、聞かない頑固なところがある。
おまけにお嬢様だから、ちょっと金銭感覚がずれてる。
金銭だけじゃなくて、他の感覚もなんだけどね。
「分かった、分かったよ。すぐに始めればいいんだね」
「そう、すぐにやろう? まずは始めて。教えるから」
こうして、僕はいとこに勧められ、テスト前だっていうのにMMORPGを始めることになった。
これのせいで今回のテストの成績が落ちたら、カオルのせいだな。
いや、でも、VR機器とゲーム貰っちゃったしなぁ。
自己責任ってことで諦めるか。
「えっと、何々? 『グリモワール・クリーク』っていうのか。聞いたことないゲームだな」
僕は一応、ゲームをそこそこ遊ぶ方だ。
サッカーをやっているから、遊ぶのもサッカーゲームばかりだけどね。
でも、RPGも多少は遊んだことがある。
あるんだけど……これは聞いたことがないなぁ。
カオルが教えてくれた事前情報では原作は乙女ゲームだったらしい。
それって、女の子向けじゃないかな?
「剣と魔法の世界アースガルドであなたの好きな生き方を……あぁ、よくある宣伝文句か?」
とりあえず、起動するとVR機器に全身をスキャンされる。
アバターを作る為の準備ってやつだね。
僕は見た目も平凡だから、目立たないだろう。
例えゲーム内で知り合いに会ったとしても気にすることないし。
カオルは『バレないように合流してから、いいアイテム渡す』って。息巻いてた。
「よし……ちょっとだけ、遊ぶくらいなら大丈夫だろ」
その考えが甘いと思い知らされるのは翌朝、寝過ごしてアリスに叩き起こされたからだ。
やっぱり、駄目だったよ。
深夜遅くまでネトゲは駄目! 絶対!
癖になったら、やばいやつじゃないか、これ。
0
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる