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第4話 戦術兵器フレデリク
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シャイデンの砦の戦いの流れはこうだ。
押し寄せる諸侯連合軍を前に最強の将軍であるフレデリクが出る必要はないと出陣したユウカが雑兵を軽く蹴散らし、力を見せつけた後、『自分に挑める者はいるか?』と挑発し、一騎討ち戦に突入する。
このゲーム、シミュレーションRPGなだけに発生した一騎討ちというイベントの効果は絶大なものがあるのだ。
勝てば大幅に士気は上昇するし、相手の手駒を一つ減らせる。
いいこと尽くめな訳だよ。
逆に負けたら、目も当てられないんだが、ユウカは自分が負けるとはこれっぽちも思っていなかったはずだ。
その証拠に諸侯連合軍の豪傑どもは簡単に討ち取られていく。
五人以上は斬ったんだから、ユウカが強すぎなのか、豪傑が自称で弱かったのか。
どっちなんだろうな?
それにしても大剣を操る小柄な少女にやられるのって、『ねえ、どんな気分?』と聞きたいところだがユウカの活躍はここまでなんだよな。
ユウカの強さにビビりだした諸侯連合軍が誰が出るかでもめだしたところで義勇軍を率いて、諸侯連合軍に参加していたベーオウルフの次弟ユーリウスが名乗りを上げる。
下賤の輩が云々と諸侯は当然のように却下しようとするところをゾフィーア皇女が『雑兵一人が死んでも痛くも痒くもないし、その男、雑兵に見えぬではないか?』と見られた者を凍らせると定評のあるアイスブルーの瞳で妖艶に微笑えんだ。
氷の皇女の微笑みに全会一致でユーリウスが一騎討ちの場へと赴く。
それまでにも反乱軍との戦いで名を馳せているユーリウスだが、この一騎討ちが全国デビューの挨拶代わりとなる。
なんの補正か知らないが、あれほど絶対的な強さを持っていたユウカがほぼ何の抵抗も出来ないまま、一刀で斬り殺されてしまう。
そんなことをさせるかってんだ!
対策を(出来る限り)練って、(頭の中で)シミュレーション済みだから、万全なはずだ。
まず、あいつらは主人公だから、変な補正が邪魔してくる可能性を否定出来ないだろう。
じゃあ、どうするのかということになる。
ならば、抗えないくらいにやれば、どうにも出来んだろうと考えた。
いわゆる力押し、脳筋と言われても仕方ないがそれ以外にないだろう。
何しろ、ベーオウルフ、ユーリウス、フェリックの三人はこの世界屈指の戦闘力の持ち主だからな。
いくら、俺が最強と位置付けられているにしても三人で来られたら、さすがにまずい。
つまり、どうするべきか?
ユウカと一緒に戦うのは駄目だ。
変なフラグでユウカが怪我くらいで済めばいいがもしもということもある。
危険すぎるだろう。
チェンヴァレンくんも駄目だな。
あいつはまだ、成長途上だ。
伸びしろはあるんだが、あの三人が相手となると厳しい。
では手の打ちようがないのか?
否! 断じて否!
俺には切り札がある。
真紅の飛竜ヴェルミリオンさ!
あいつに手伝ってもらうのが最上の策と俺は判断した。
ユウカを出陣させて、変なフラグが立つと困るので副将の俺が代わりに軍を率いて、陣頭に立っている。
ユウカはどこにいるって?
チェンヴァレンくんと一緒に砦でおとなしく、様子を見ているようにと言い含めてある。
なにせ、何が起こるか、分からないからだ。
俺やユウカはイレギュラーな存在だと思われる。
物語が本来とは異なる道筋に変化する。
そんなことがないとも言い切れない。
虎の子の弓兵千名も温存しておくことに意味があるのだ。
分かるのは後さ。
そう信じるしかない。
「さてと、それじゃあ、行きますかね」
俺は頭から足の先まで真っ黒けという見るからに怪しい姿で陣頭に立っている。
味方からは俺がいるというだけで士気が上がっているようだ。
さすが、最強の名は伊達じゃない!
それにしてもチェンヴァレンくん。
間に合わせしか用意出来なかったにしろ、いささか趣味が悪くないか、この甲冑……。
頭は顔まですっぽりと隠してしまうフルヘルムってやつだろう。
デザインが黒いバケツに視線を確保する隙間があるだけにしか、見えないんだが?
他の部分も酷いもので篭手が左右デザインが違う。
それ以前に着け心地も違うぞ!
適当に集めて持ってきた感が半端ないな。
脛当てもそんな感じがするから、せめて、左右を確認してから持ってこようか、チェンヴァレンくん。
説教は後でいいとして、だ。
出立前に念の為にユウカやチェンヴァレンくんと模擬戦を行って、勝手に体が動くというのを確認はしておいた。
しかし、これから始まるのは実戦だからな。
繰り返す、これは演習ではない、な訳だ。
さて、本当に人を斬れるんだろうか。
だが、俺はユウカの為なら、鬼にも悪魔にもなれるだろう。
いや、ならなくはいけない!
「まず、派手に動き回って、あいつらを釣るとするか」
砦の守備兵から選りすぐりの鉄騎兵五百を借りて、連合軍の陣を目掛け、突撃を敢行する。
普通に考えると無謀の一言だ。
ところがフレデリクの武勇は突き抜けて、頭がおかしいレベルなのでどうにか、なってしまうんだな、これが!
恐ろしいことにゲーム内では率いる部隊にも効果が及ぶ。
これがどういうことかと言うと圧倒的な戦闘力を有する指揮官に率いられた部隊は狂信者さながらの狂戦士になる訳だ。
『我らには軍神の加護があるぞ』的なノリなんだろう。
ともあれ、俺はフレデリクとなるべく、ばれないようにする為、いつも使っている特殊な形状のハルバードを使っていない。
今回の戦いでは十字状の穂先の槍、十字槍を持ってきた。
予備の武器として、左右にロングソードを二振り佩き、投げナイフに弓も担いでいる。
今のところは馬上でクロススピアを振っているだけで『まるで人がごみのようだ』という状態だ。
一振りで十人くらいが真っ二つになっていくんだが、フレデリクおかしくないか?
正直、人を殺しているという感覚がまるでないんだが……。
「まずはあいつを殺っておくか」
あいつというのはユウカに一番、最初に斬られた連合軍の豪傑シルヴァーノのことだ。
シルヴァーノは名前にちなんでいるのか、全身を陽光で煌めく銀色のきれいな甲冑に身を包み、装飾の施された美しい長剣を手にした偉丈夫だった。
うん、きれいだね。
きれいだが、それは戦いに向いていないだろう。
もしや、エリアスのところの武将の脳内はお花畑なのか?
エリアス――シモン・エリアスはエリアス家の当主で名門貴族の筆頭に名を連ねる貴公子だ。
見た目も金髪碧眼の二枚目でかなりの自信家、黄金の鎧に身を固め、身なりと言動は立派だがいざという時の決断力に欠ける中身の無い男。
そんなシモン・エリアスが諸侯連合軍の盟主を務めている。
血統と戦力だけなら、連合軍屈指の実力者だからな。
でもって、件の豪傑シルヴァーノの主でもある。
「試してみるか」
俺はクロススピアを馬の鞍に留め、弓を構える。
これが何とも怖いことにかなりの速度で駆ける馬上で行っているのだ。
恐るべし、フレデリク! 恐るべし、戦闘民族!
矢をつがえ、シルヴァーノの頭に狙いを定め、放った。
「ははっ!?」
思わず、どこかのネズ〇ーみたいな変な声が出てしまったぞ。
いや、何が起こったって、やった俺本人が信じられないことが起こった。
この世界にミサイルはないと言ったな。
あれは嘘だ!
俺が撃つ矢がミサイルだったようだ!!
押し寄せる諸侯連合軍を前に最強の将軍であるフレデリクが出る必要はないと出陣したユウカが雑兵を軽く蹴散らし、力を見せつけた後、『自分に挑める者はいるか?』と挑発し、一騎討ち戦に突入する。
このゲーム、シミュレーションRPGなだけに発生した一騎討ちというイベントの効果は絶大なものがあるのだ。
勝てば大幅に士気は上昇するし、相手の手駒を一つ減らせる。
いいこと尽くめな訳だよ。
逆に負けたら、目も当てられないんだが、ユウカは自分が負けるとはこれっぽちも思っていなかったはずだ。
その証拠に諸侯連合軍の豪傑どもは簡単に討ち取られていく。
五人以上は斬ったんだから、ユウカが強すぎなのか、豪傑が自称で弱かったのか。
どっちなんだろうな?
それにしても大剣を操る小柄な少女にやられるのって、『ねえ、どんな気分?』と聞きたいところだがユウカの活躍はここまでなんだよな。
ユウカの強さにビビりだした諸侯連合軍が誰が出るかでもめだしたところで義勇軍を率いて、諸侯連合軍に参加していたベーオウルフの次弟ユーリウスが名乗りを上げる。
下賤の輩が云々と諸侯は当然のように却下しようとするところをゾフィーア皇女が『雑兵一人が死んでも痛くも痒くもないし、その男、雑兵に見えぬではないか?』と見られた者を凍らせると定評のあるアイスブルーの瞳で妖艶に微笑えんだ。
氷の皇女の微笑みに全会一致でユーリウスが一騎討ちの場へと赴く。
それまでにも反乱軍との戦いで名を馳せているユーリウスだが、この一騎討ちが全国デビューの挨拶代わりとなる。
なんの補正か知らないが、あれほど絶対的な強さを持っていたユウカがほぼ何の抵抗も出来ないまま、一刀で斬り殺されてしまう。
そんなことをさせるかってんだ!
対策を(出来る限り)練って、(頭の中で)シミュレーション済みだから、万全なはずだ。
まず、あいつらは主人公だから、変な補正が邪魔してくる可能性を否定出来ないだろう。
じゃあ、どうするのかということになる。
ならば、抗えないくらいにやれば、どうにも出来んだろうと考えた。
いわゆる力押し、脳筋と言われても仕方ないがそれ以外にないだろう。
何しろ、ベーオウルフ、ユーリウス、フェリックの三人はこの世界屈指の戦闘力の持ち主だからな。
いくら、俺が最強と位置付けられているにしても三人で来られたら、さすがにまずい。
つまり、どうするべきか?
ユウカと一緒に戦うのは駄目だ。
変なフラグでユウカが怪我くらいで済めばいいがもしもということもある。
危険すぎるだろう。
チェンヴァレンくんも駄目だな。
あいつはまだ、成長途上だ。
伸びしろはあるんだが、あの三人が相手となると厳しい。
では手の打ちようがないのか?
否! 断じて否!
俺には切り札がある。
真紅の飛竜ヴェルミリオンさ!
あいつに手伝ってもらうのが最上の策と俺は判断した。
ユウカを出陣させて、変なフラグが立つと困るので副将の俺が代わりに軍を率いて、陣頭に立っている。
ユウカはどこにいるって?
チェンヴァレンくんと一緒に砦でおとなしく、様子を見ているようにと言い含めてある。
なにせ、何が起こるか、分からないからだ。
俺やユウカはイレギュラーな存在だと思われる。
物語が本来とは異なる道筋に変化する。
そんなことがないとも言い切れない。
虎の子の弓兵千名も温存しておくことに意味があるのだ。
分かるのは後さ。
そう信じるしかない。
「さてと、それじゃあ、行きますかね」
俺は頭から足の先まで真っ黒けという見るからに怪しい姿で陣頭に立っている。
味方からは俺がいるというだけで士気が上がっているようだ。
さすが、最強の名は伊達じゃない!
それにしてもチェンヴァレンくん。
間に合わせしか用意出来なかったにしろ、いささか趣味が悪くないか、この甲冑……。
頭は顔まですっぽりと隠してしまうフルヘルムってやつだろう。
デザインが黒いバケツに視線を確保する隙間があるだけにしか、見えないんだが?
他の部分も酷いもので篭手が左右デザインが違う。
それ以前に着け心地も違うぞ!
適当に集めて持ってきた感が半端ないな。
脛当てもそんな感じがするから、せめて、左右を確認してから持ってこようか、チェンヴァレンくん。
説教は後でいいとして、だ。
出立前に念の為にユウカやチェンヴァレンくんと模擬戦を行って、勝手に体が動くというのを確認はしておいた。
しかし、これから始まるのは実戦だからな。
繰り返す、これは演習ではない、な訳だ。
さて、本当に人を斬れるんだろうか。
だが、俺はユウカの為なら、鬼にも悪魔にもなれるだろう。
いや、ならなくはいけない!
「まず、派手に動き回って、あいつらを釣るとするか」
砦の守備兵から選りすぐりの鉄騎兵五百を借りて、連合軍の陣を目掛け、突撃を敢行する。
普通に考えると無謀の一言だ。
ところがフレデリクの武勇は突き抜けて、頭がおかしいレベルなのでどうにか、なってしまうんだな、これが!
恐ろしいことにゲーム内では率いる部隊にも効果が及ぶ。
これがどういうことかと言うと圧倒的な戦闘力を有する指揮官に率いられた部隊は狂信者さながらの狂戦士になる訳だ。
『我らには軍神の加護があるぞ』的なノリなんだろう。
ともあれ、俺はフレデリクとなるべく、ばれないようにする為、いつも使っている特殊な形状のハルバードを使っていない。
今回の戦いでは十字状の穂先の槍、十字槍を持ってきた。
予備の武器として、左右にロングソードを二振り佩き、投げナイフに弓も担いでいる。
今のところは馬上でクロススピアを振っているだけで『まるで人がごみのようだ』という状態だ。
一振りで十人くらいが真っ二つになっていくんだが、フレデリクおかしくないか?
正直、人を殺しているという感覚がまるでないんだが……。
「まずはあいつを殺っておくか」
あいつというのはユウカに一番、最初に斬られた連合軍の豪傑シルヴァーノのことだ。
シルヴァーノは名前にちなんでいるのか、全身を陽光で煌めく銀色のきれいな甲冑に身を包み、装飾の施された美しい長剣を手にした偉丈夫だった。
うん、きれいだね。
きれいだが、それは戦いに向いていないだろう。
もしや、エリアスのところの武将の脳内はお花畑なのか?
エリアス――シモン・エリアスはエリアス家の当主で名門貴族の筆頭に名を連ねる貴公子だ。
見た目も金髪碧眼の二枚目でかなりの自信家、黄金の鎧に身を固め、身なりと言動は立派だがいざという時の決断力に欠ける中身の無い男。
そんなシモン・エリアスが諸侯連合軍の盟主を務めている。
血統と戦力だけなら、連合軍屈指の実力者だからな。
でもって、件の豪傑シルヴァーノの主でもある。
「試してみるか」
俺はクロススピアを馬の鞍に留め、弓を構える。
これが何とも怖いことにかなりの速度で駆ける馬上で行っているのだ。
恐るべし、フレデリク! 恐るべし、戦闘民族!
矢をつがえ、シルヴァーノの頭に狙いを定め、放った。
「ははっ!?」
思わず、どこかのネズ〇ーみたいな変な声が出てしまったぞ。
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