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鈴の音の正体
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何も無い空間にリンッとどこからともなく鈴の音が響き渡る。その瞬間、先ほどまで怯えていた男達が倒れた。
これもまよ様の力なんだろうか。
「華雪、家に戻るのじゃ」
厳かな声でまよ様は私にそう言った。
「いや、遅かったのう」
そう、まよ様は呟いた。
何が遅かったんだろう? そう思った瞬間、遺跡の中からナニカが出てきた。
「久しぶりじゃな。蘇芳よ」
「お久しぶりです。叔母様」
出てきたナニカは長い黒髪をひとつに括った優しげな風貌の男性だった。でも、笑みを浮かべるために細められていた目の奥は笑っていない。
「それで? 叔母様の隣にいる貴女はどなたですか? 見ない顔ですが……」
あぁと、すおうと呼ばれた人物の笑みが深くなった。
「伽耶叔母様の娘……ですかね? 似ていますねぇ。しかも、西の血も入っている。素晴らしい」
舐め回すようにじっとりとした視線が私に向けられる。見た目は爽やかなのに……損な人だと俺は心の底から残念に思ったよ。
「蘇芳、なんのようじゃ。貴重な神石を使いおって」
「なんのとは……もちろん、そこの罪人の引き取りに来たんですよ」
指をさす、すおうの先に気絶した男がいる。突然気絶したのはこの人が何かしたせいなんだろうか?
「では、人を借りますね?」
「ダメじゃ、そなた神石はまだ持っておろう? それを使って帰れ」
「神石は貴重なので」
「我の許可なしでも使っていたであろうが。よい、神石の使用を許可する。使って帰れ」
珍しく厳しい声のまよ様に、すおう様は折れたようでわざとらしくため息を吐いた後、懐から石を取り出した。
あ、あれ、お母様からもらったネックレスに付いていたやつ!
そして、すおう様は全身から光を発しながら男どもと共に消えた。
まんま、俺が殿下から逃げる時に起こった現象と同じだ。
そして、範囲が広い。
「あれはお主も使用したことがあるはずじゃ」
まよ様は疲れたような顔をしていた。
「すおう様って?」
「我の甥じゃ。おそらく数年前の伽耶の行方不明の事件にも関わっていると我は踏んでおる」
お母様は父に攫われたんじゃなくて、攫うのに関与した人がいたってこと?
たしかに皇族の、しかも神力を持つお母様を攫うなんてあの父がそう簡単に出来るはずがない。
「詳しいことはまだ分からん。じゃが、この地を厭うておるはずの蘇芳がこちらにきたのはあの商人どもと繋がりがあるからじゃろう。我は巫女であり政治には関与出来ぬからのう」
「え、でも天皇様が来るんでしょう?」
「いや、来るが話すことは限定されておる。天皇には護衛がついておる、加えて我が政治に関連することを口にせぬよう見張っておる。我が今回の騒動で言えるとすれば、遺跡に盗みに入っていた奴らを捕まえたということだけじゃ」
ということは、すおう様が事件に関連してそうだと思っても、伝えることができないということか。なんとも面倒な。
「その商人を捕まえて取り調べるのは天皇お付きの影がする。蘇芳はその影を取り締まる1人じゃ」
あ、じゃあ詰んだんだ。だって、もしもの話だけどすおう様がこの窃盗事件の黒幕だったとしたら簡単に偽物の黒幕でもでっちあげて逃げられる。
「なんとも悔しいですね」
「うむ」
面倒臭い取り決めに、パンクしそう。その日は、まよ様と村人と肩を落として家に帰った。捕まえたのにね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【日記スペースby殿下】
隣国に着くと同時に馬がつぶれた。1週間で国を抜けたから当たり前だろうが、もう少し持つと思っていたから面倒臭い。適当に売り、新しい馬を手に入れた。
隣国は我が国よりも気温が低く、コートも買うことになった。山間部の盆地に位置するこの隣国は道も帝国と比べると狭く人が密集しているように感じる。
それから、言葉も所々違っており聞き取りにくかった。飯は不味い。
ルーナがいるであろう東の国は味が薄いらしい。ルーナはおそらく、食の違いに苦しんでいるだろう。言語も違ったというから孤独を感じているかもしれない。
だが、私はそれを好都合だと捉えている。
いくら母の生まれ故郷でも、言語が違えば心細いだろうし、それによって弱っているかもしれない。そこに私が行けば頼る者は私以外いない。不本意ながらもルーナは私に頼るのだ。その時に、ルーナも気がつくだろう。自分は私の側にいるべきだと言うことを。
伯爵がカヤを此方の国に連れてきた時も協力者がいたらしい。今も連絡をとっているという。私が呪具を取り扱う商人について知ったのも伯爵からだ。今回も協力してくれるらしい。
手渡された板のような呪具とルーナがよく大切にしていたネックレスに付いていた石が私の手元にある。これがあれば誰でもこの呪具を使えるらしい。
『娘を見つけた』
石板のような呪具には東の国の言語でそう一言、書かれていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※殿下が伯爵に渡された石は神石といい、神石は皇族などの膨大な神力を持つ者は転移として使用できます。しかし、神力をほとんど持たない、あるいは神力がない者には擬似神力として遺物が働くように作用します。
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これもまよ様の力なんだろうか。
「華雪、家に戻るのじゃ」
厳かな声でまよ様は私にそう言った。
「いや、遅かったのう」
そう、まよ様は呟いた。
何が遅かったんだろう? そう思った瞬間、遺跡の中からナニカが出てきた。
「久しぶりじゃな。蘇芳よ」
「お久しぶりです。叔母様」
出てきたナニカは長い黒髪をひとつに括った優しげな風貌の男性だった。でも、笑みを浮かべるために細められていた目の奥は笑っていない。
「それで? 叔母様の隣にいる貴女はどなたですか? 見ない顔ですが……」
あぁと、すおうと呼ばれた人物の笑みが深くなった。
「伽耶叔母様の娘……ですかね? 似ていますねぇ。しかも、西の血も入っている。素晴らしい」
舐め回すようにじっとりとした視線が私に向けられる。見た目は爽やかなのに……損な人だと俺は心の底から残念に思ったよ。
「蘇芳、なんのようじゃ。貴重な神石を使いおって」
「なんのとは……もちろん、そこの罪人の引き取りに来たんですよ」
指をさす、すおうの先に気絶した男がいる。突然気絶したのはこの人が何かしたせいなんだろうか?
「では、人を借りますね?」
「ダメじゃ、そなた神石はまだ持っておろう? それを使って帰れ」
「神石は貴重なので」
「我の許可なしでも使っていたであろうが。よい、神石の使用を許可する。使って帰れ」
珍しく厳しい声のまよ様に、すおう様は折れたようでわざとらしくため息を吐いた後、懐から石を取り出した。
あ、あれ、お母様からもらったネックレスに付いていたやつ!
そして、すおう様は全身から光を発しながら男どもと共に消えた。
まんま、俺が殿下から逃げる時に起こった現象と同じだ。
そして、範囲が広い。
「あれはお主も使用したことがあるはずじゃ」
まよ様は疲れたような顔をしていた。
「すおう様って?」
「我の甥じゃ。おそらく数年前の伽耶の行方不明の事件にも関わっていると我は踏んでおる」
お母様は父に攫われたんじゃなくて、攫うのに関与した人がいたってこと?
たしかに皇族の、しかも神力を持つお母様を攫うなんてあの父がそう簡単に出来るはずがない。
「詳しいことはまだ分からん。じゃが、この地を厭うておるはずの蘇芳がこちらにきたのはあの商人どもと繋がりがあるからじゃろう。我は巫女であり政治には関与出来ぬからのう」
「え、でも天皇様が来るんでしょう?」
「いや、来るが話すことは限定されておる。天皇には護衛がついておる、加えて我が政治に関連することを口にせぬよう見張っておる。我が今回の騒動で言えるとすれば、遺跡に盗みに入っていた奴らを捕まえたということだけじゃ」
ということは、すおう様が事件に関連してそうだと思っても、伝えることができないということか。なんとも面倒な。
「その商人を捕まえて取り調べるのは天皇お付きの影がする。蘇芳はその影を取り締まる1人じゃ」
あ、じゃあ詰んだんだ。だって、もしもの話だけどすおう様がこの窃盗事件の黒幕だったとしたら簡単に偽物の黒幕でもでっちあげて逃げられる。
「なんとも悔しいですね」
「うむ」
面倒臭い取り決めに、パンクしそう。その日は、まよ様と村人と肩を落として家に帰った。捕まえたのにね。
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【日記スペースby殿下】
隣国に着くと同時に馬がつぶれた。1週間で国を抜けたから当たり前だろうが、もう少し持つと思っていたから面倒臭い。適当に売り、新しい馬を手に入れた。
隣国は我が国よりも気温が低く、コートも買うことになった。山間部の盆地に位置するこの隣国は道も帝国と比べると狭く人が密集しているように感じる。
それから、言葉も所々違っており聞き取りにくかった。飯は不味い。
ルーナがいるであろう東の国は味が薄いらしい。ルーナはおそらく、食の違いに苦しんでいるだろう。言語も違ったというから孤独を感じているかもしれない。
だが、私はそれを好都合だと捉えている。
いくら母の生まれ故郷でも、言語が違えば心細いだろうし、それによって弱っているかもしれない。そこに私が行けば頼る者は私以外いない。不本意ながらもルーナは私に頼るのだ。その時に、ルーナも気がつくだろう。自分は私の側にいるべきだと言うことを。
伯爵がカヤを此方の国に連れてきた時も協力者がいたらしい。今も連絡をとっているという。私が呪具を取り扱う商人について知ったのも伯爵からだ。今回も協力してくれるらしい。
手渡された板のような呪具とルーナがよく大切にしていたネックレスに付いていた石が私の手元にある。これがあれば誰でもこの呪具を使えるらしい。
『娘を見つけた』
石板のような呪具には東の国の言語でそう一言、書かれていた。
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※殿下が伯爵に渡された石は神石といい、神石は皇族などの膨大な神力を持つ者は転移として使用できます。しかし、神力をほとんど持たない、あるいは神力がない者には擬似神力として遺物が働くように作用します。
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