ホンモノの自分へ

真冬

文字の大きさ
32 / 39

第31話「過去との対話②」

しおりを挟む
 いつ以来か小学生の頃の僕が目の前に現れた。

「やあ、久しぶりだね」
 一応、年上である僕から話しかける。

「顔つきが変わったね」

「変わったかもね」

「なにか楽しそうだね」
 小学生の僕は訝しむような表情を浮かべながら僕に言葉を投げつける。

「うーん…楽しいかもね」
 僕はしばらく思案してから彼に答えた。

「高校へ上がっても井上たちから嫌がらせを受けてるのに?」

「そうだね。この前も顔に大痣を作ったよ」
  僕は思い出したくないけど苦笑いを浮かべて彼に答える。

「今までと変わらないじゃん。何が楽しいの?」

 また僕はしばらく思案する。楽しい理由…。
「自分の居場所を見つけたんだ」

「一人でいることじゃないの?」

「そうだね。僕はずっと、一人でいるつもりだったよ。それが僕にとって正しい選択だと思ってた。でも、みんなと話していて初めて悪い人ばかりじゃないって気づけた」

「それはどんな人?」

 僕は彼らの顔を思い浮かべてもう一度思案する。
「うーん。一人は大雑把な性格の男子ともう一人はかっこいい男子、ちょっと天然の女子と僕に似てちょっと不器用だけど頭良い女子だよ」

「君にそんなに友だちが出来たんだね」

「僕もびっくりしてるよ」

「でも、彼らのせいで謹慎になっちゃったね」

「うん」

「そのせいで自分の事をすべて話さなくちゃいけなくなった。ずっと隠してたのに」

「うん」

「彼らに自分を知られたね」

「うん」

「そのせいで、彼らと関わりを持たなくちゃいけなくなった」

「うん」

「嫌じゃないの?」
 あっけにとられたような小学生の僕は僕を覗き見るように問いかけた。

「どうかな…嫌…だったかもね」

「嫌だった?」

「今までの僕は嫌だったかもしれない。でも、彼らと話していて感じるんだ。僕はここにいて良いんだって。誰かとつながることで自分がここに存在して良いんだって思えたんだ」

「じゃあ、彼らを内側に入れることが出来たの?」

「うん。おかげで暗闇が一気に眩しくなったし、騒がしくなったよ」

 すると、小学生の僕は「へぇ」となにか疑わしいような目で僕を見つめている。
「じゃあ、もう一度訊いていい?」

「いいよ」

「今、幸せ?」

「幸せ…だよ」
 断定して良いのか迷ったけど今の気持ちを正直に回答した。

「また楽しそうに笑うんだね」
 小学生の僕はまたなにか疑うような目で僕を覗き込むように見ていた。

「僕には君の言う幸せが想像できないな」
 小学生の僕はしばらく床を見つめて考え込んで僕の方を向き直った。

「これからも君のことを見ていていいかな?」

「もちろんだよ」

「僕が見えなかったものを見せてくれる?」

「多分…」

「いや、見せてるよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...