酔いどれ悪役令嬢は今日も素面で後悔する【R18】

ひとまる

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3.ああ、何て悪女だ

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目が飛び出そうなくらい驚いたメルティにキースリンデは更に熱のこもった表情で顔を近付ける。





「婚約者なのだから、問題無いだろう?」





明らかに『男』の顔をしたキースリンデが、のけ反ろうとしたメルティの後頭部を包むように手をまわし、啄むような口づけではなく、メルティを捕食してしまいそうに、深く口付けた。



「んんっ!!!」



口腔内に自分の舌ではない、何かが入り込み、歯茎を辿り隅々まで貪り尽くすように暴れまわる。飲み込み切れない唾液が口の端から落ちるのにも構えない程、激しい口付けにメルティは只目を白黒させるしか出来なかった。



い、息がっ!!死ぬ、私死にますわ──っ!!!



パニックになりかけた処でやっとキースリンデの唇が離される。肺に空気を取り込み、乱れた呼吸を繰り返していると、その様子を熱のこもった視線で見られていることに気がついた。



「キース…リンデ…殿下──?」



息も絶え絶えに名前を呼ぶと、切なそうに目を細められた。



「キースと、そう呼んでくれ。私もルティと呼ぶ。良いか?」



「ひぇ!!そんな恐れ多いですわ…!!」



それはヒロインが…キースリンデを攻略したときの台詞ではとメルティは驚きを隠せなかった。素直に頷かないメルティに少し不機嫌になったキースリンデはまたもやメルティの後頭部に手を添えて顔を近付ける。



「早く頷かないとこのまま、口付けするが、良いか?」



「わ!わかりましたわ!!ききき……キース様!!」





もうどうにでもなれと、初めて婚約者の愛称を呼ぶ。キースリンデは嬉しそうに微笑み、ちゅっとメルティの額に口付けた。



「では、ルティ、明日学園で待っている」



甘い声色で呟かれ、今度こそメルティは羞恥で顔を上げられなくなったのだった──











◆◆◆







キースリンデはロッズ公爵家から帰途につく馬車の中で、必死に猛る自身の雄芯を治めようとひたすら瞑想していた。



あれ程─……



嫌いだと、苦手だと思っていた婚約者に欲情している自分が居る。ましてや余りの可愛さについ手を出しそうになってしまった。



メルティの潤んだ瞳。

震えながらも初々しく口付けを受け入れる姿──



柔らかな口腔内…誘うような甘い香り



全てがキースリンデを虜にしていた。



メルティを全て自分の物にしたいと、誰にも望んだことのないような独占欲が湧く。一体この気持ちは何なのか─…



キースリンデは気が付いていた。





「ああ、何て悪女だ──」





そう言ったキースリンデの瞳は、今まで見たことないほど優しい色を灯していた──







◆◆◆





「あら、庶民がまだ学園にいらっしゃったの?図太い神経だこと」



学園に復学して初っ端からメルティはハンナへの『悪役令嬢』作戦を決行していた。勿論強めのお酒を一杯ひっかけている。



「ひ、酷いです。メルティ様」



うるうると涙を滲ませるハンナにメルティは更に詰め寄る。



「私が居ない間、キース様と何も無かったでしょうね。キース様は私の婚約者、それを理解なさってますわよねぇ?」



意地悪く微笑むメルティの言葉に、先ほどまでうるうるとしていたハンナが真顔になる。



「『キース様』って今呼びました?」



「っ!!!」



まずい!ヒロインの前でキースリンデ殿下を愛称で呼んでしまいましたわ!!



一瞬でメルティの顔は真っ青になる。真面目な性格故に、昨夜キースリンデを愛称で呼べるように練習したのが仇となった。しかし今は『悪役令嬢』なのだ。任務を全うしなければ。



「なぁに?婚約者の私が、キース様を愛称で呼んで問題でも?」



「有り得ない……」



今まで儚げな美少女にしか見えなかったハンナの表情が一瞬で険しく変化した。そしてメルティを睨みつけたのだ。



「悪役令嬢なんかに負けないわ!」



そう言って去っていくハンナの後ろ姿をメルティは呆然として見つめた。──今、『悪役令嬢』って聞こえたような……



まさか……彼女も異世界転生をしてきた同志なのだろうか!!



メルティはドキドキする胸に手を当てて、自分を落ち着かせた。



「だ、大丈夫ですわ…、私には命の水(強めのお酒)がありますわ!!」



祈るように強めのお酒が入った小瓶を握り締めた。まさか、その姿を物陰から誰かに見られていたことにメルティは気付かなかったのだった──







◆◆◆





キースリンデは人が変わったように悪女らしく振舞う婚約者を複雑な気持ちで見つめていると、後ろからハンナに話しかけられた。



「キースリンデ様、今お話しても良いですか?」



「ああ、構わないよ」



ニコニコと微笑むハンナが以前は可愛く感じたが、メルティと過ごすうちにハンナの笑顔に違和感を覚えるようになり、自然とキースリンデはハンナとの距離を取るようになったのだった。



「私、見ちゃったんです。メルティ様が怪しい薬を持っているところを。あれって、『媚薬』ではないでしょうか?もしかしたらキースリンデ様にご使用されているのではと思い心配になっちゃいまして」



ハンナの言葉にキースリンデは固まった。思い当たる節はあるのだ。嫌いなはずの婚約者に惹かれ、雄芯が疼く。この症状が全て媚薬を盛られていたからだとしたら……全て説明がつく。



「確認してみた方がいいのではないでしょうか?」



「そ……、そうだな。ありがとう、ハンナ嬢」



ショックを受けたようなキースリンデを見て、ハンナは口端を上げた。



「キースリンデ様、お可哀そうに。ハンナはいつでも味方ですからね。何でも相談してくださいね。いつでも待ってますから」



甘い声を上げてすり寄るハンナにキースリンデは貼り付けたような笑顔で応える。それに気付かずハンナは満足そうに微笑むのであった。

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