君

プロローグ

「君は誰なの」
「僕は…」


高校二年生の栗原咲希（くりはら　さき）は、悩みを抱えてこれまで生きてきた。咲希の主な悩みは家族のことである。誰だって悩みを抱えて生きている。自分より辛い人はたくさんいると自分に言い聞かせていたある日のこと。

突然、目の前に現れたのは知らない男の子だった。
同い年くらいだろうか。どこから現れたのか。なんでここにいるのか。
男の子はゆっくり咲希に近づいてきた。

「こんにちは。咲希さん。」
「君は誰なの？」
「僕は君。君って呼んでね。」

男の子はくすくすと笑いながら、咲希を見た。
咲希は「君…？」と不思議そうな顔をして男の子を見た。


咲希と男の子は運命の出会いだったのか、それとも出会ってはいけなかったのか。

でも君と出会って思ったことがある。
やっぱり君は、君なんだね。