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第2話 魔法従魔
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慰労会も無事に終わり、俺たちはそれぞれの宿へと解散する。俺の取っていた宿は食堂の近くにある比較的安い宿だ。どうせ明日には引き払って旅に出ることになるのだ、節約するに越したことはない。そもそも魔王討伐による報奨金を受け取った俺だが、国からの宮仕えを固辞した為だろうか他の者に比べて桁が二つほど少なかったらしい。本当に心が狭いやつらだ。
俺が宿のドアを開けて入り、宿代をカウンターに置くと宿屋の主人が黙って部屋の鍵を渡してくる。値段が安いので余計なサービスはしない主義なのだろうが、意外と居心地が良くて俺はこの主人を気に入っていた。
「主人。明日、王都を離れるからこれで弁当を五つ作っておいてくれないか?」
「五つですね? 少々お代が多いようですが?」
「今までの礼だ。とっておいてくれ」
「ありがとうございます。では明朝に準備しておきます」
日頃はあまり喋らない主人だったが、通常の倍にあたる金額を置いたので気を良くしたのだろう。日頃は見せない笑顔で金を仕舞うとお辞儀をして奥の部屋に入って行ったのだった。
「さてと……」
装飾品のないシンプルな部屋のベッドに俺はどかりと寝転ぶと明日からの旅について考えをまとめる。
「路銀もそう多くあるわけでもないし、乗合馬車を使うのが現実的だろう」
王都と出ると決めたことで、次に向かう地方を決める必要がある。ゼオンとローザはノーズ地方の領都であるアビルボーザへ向かうことが決まっている。ウォーリアとリリスもおそらくだがゼオンの治める領都に店を構えることになるだろう。
「俺はどうするかな……」
正直、特にどこで暮らそうが気にならなかったので彼らとは全く違う地方へ行っても良かったのだが、侯爵家当主となったゼオンが治める町ならば多少問題が起こっても融通が利くだろうという楽観的な考えでノーズ地方へ向かうことに決めたのだった。
「――まあ、のんびり向かえば良いだろう」
俺はベッドから起き上がると魔法鞄に手をかけて中から魔法石を数個取り出すと部屋の隅にあったテーブルの上に並べてから慎重に魔力を練り出す。
「少し長めの旅になるだろうからな。少し楽が出来るように作っておくとしよう」
俺はそう呟いてから部屋に結界を張り、魔法石に手をかざすと魔法の詠唱を始める。
「赤き魔力は外に放ち、青き魔力は内なる元へ。緑は風に舞い上がり黄は地に深く潜り込む。光は全てを跳ね返し、闇は全てを飲み込んでいく。そして聖は癒しの糧となる。七つの魔力よ、ここに一つとなり我が身の分身となれ」
魔法詠唱が終わり、七つの色が重なり球体となると、虹色の光が包み込み、やがて一つの生命体が姿を現した。その姿はハンドボール大のまるまるとした、羽の短い鳥。ふわふわの羽毛があり手触りは最高だ。どこから見ても到底飛べそうにないフォルムだったが、その重力を無視したかのような短い羽根をぱたぱたと動かすと、ふわりとその身体が宙を舞う。
「成功だな。お前の名は『ハビル』と名付けよう」
今、俺が作った生物のようなものは『魔法従魔』と呼ばれる存在で、高い魔法知識とその存在を形成する魔力量、そして核となる魔法石が必要で、ほんの一握りの魔導士しか生み出すことが出来ないもので、多くは主に要人護衛に配置される魔法生物だった。
『ぴぃ』
ぱたぱたとホバリング状態で宙に浮いたままのハビルは俺の目の前で鳴き声をあげる。何か言いたいことでもあるのだろうか?
「そうだな。言葉が話せないと意思の疎通が面倒だよな。ちょっと待ってろ」
俺は新たに魔法鞄から取り出した魔法石に魔法を付与したものをアクセサリー状態に加工し、ハビルの胴回りに一周ぐるりとベルトのように巻いた。
「これで意思の疎通が出来るはずだ」
俺がドヤ顔でハビルにそう言うと、それを理解したかのようにハビルがいきなり話し始めたのだった。
『あんたが俺様を作り出したのか?』
「ああ、そうだ」
初めて話すハビルは自らの事を『俺様』と言う、かなり我の強そうな魔法従魔だった。
『ふうん。俺様を作り出せるからにはそれなりの腕のようだが顔はいまいちだな。却下。それで、俺様が守ることになる契約者は何処にいる? せめて若い女だとやる気がでるんだがな』
魔法従魔として生まれる際には契約者を守るために生まれた生物であることが魔法石に魂のように刻まれている。だからハビルも生み出した俺に対して契約者を紹介するように尋ねたのだ。
「――俺だ」
きょろきょろと部屋の中を見まわすハビルを片手で捕まえるとそう告げた。
「若い女じゃなくて残念だったな」
『なんだと!? 俺様を作ったあんたが契約者だって?』
「そうだ。何か問題でもあるか?」
俺に掴まれたままじっと俺の顔を見るハビル。その真っ白な身体はみるみるうちに青へと変わる。
『何だ、その化け物のような魔力量は!? それだけの魔力があれば俺様なんて必要ないだろ?』
青く変色したハビルは俺の潜在能力を垣間見て強がりを吐く。無理をしているのは身体の色を見れば明白だったが、敢えて俺はそれには触れずに話を進める。
「ちょっと旅先が遠いからな。道中、暇なんだよ。それにハビルは見た目モフモフで他の人から警戒されにくい。それを連れている俺も警戒心を下げられる効果が期待できるからな。ああ、乗合馬車で子供とかと一緒になったら大変だが、頑張ってくれ」
『俺様におもちゃになれと言うのか!?』
「そうは言ってない。ただ、相手をしてやってくれと言っているだけだ」
『同じ事だ! 断固拒否する』
青い身体のまま、ハビルは俺に対して拒否の意思を見せるが主人と魔法従魔の関係で断る選択肢などないと思い知るがよい。
いつまでも抗議をしてくるハビルに俺は沈黙処理を施すと明日の出発に向けてベッドに寝転んだのだった。
俺が宿のドアを開けて入り、宿代をカウンターに置くと宿屋の主人が黙って部屋の鍵を渡してくる。値段が安いので余計なサービスはしない主義なのだろうが、意外と居心地が良くて俺はこの主人を気に入っていた。
「主人。明日、王都を離れるからこれで弁当を五つ作っておいてくれないか?」
「五つですね? 少々お代が多いようですが?」
「今までの礼だ。とっておいてくれ」
「ありがとうございます。では明朝に準備しておきます」
日頃はあまり喋らない主人だったが、通常の倍にあたる金額を置いたので気を良くしたのだろう。日頃は見せない笑顔で金を仕舞うとお辞儀をして奥の部屋に入って行ったのだった。
「さてと……」
装飾品のないシンプルな部屋のベッドに俺はどかりと寝転ぶと明日からの旅について考えをまとめる。
「路銀もそう多くあるわけでもないし、乗合馬車を使うのが現実的だろう」
王都と出ると決めたことで、次に向かう地方を決める必要がある。ゼオンとローザはノーズ地方の領都であるアビルボーザへ向かうことが決まっている。ウォーリアとリリスもおそらくだがゼオンの治める領都に店を構えることになるだろう。
「俺はどうするかな……」
正直、特にどこで暮らそうが気にならなかったので彼らとは全く違う地方へ行っても良かったのだが、侯爵家当主となったゼオンが治める町ならば多少問題が起こっても融通が利くだろうという楽観的な考えでノーズ地方へ向かうことに決めたのだった。
「――まあ、のんびり向かえば良いだろう」
俺はベッドから起き上がると魔法鞄に手をかけて中から魔法石を数個取り出すと部屋の隅にあったテーブルの上に並べてから慎重に魔力を練り出す。
「少し長めの旅になるだろうからな。少し楽が出来るように作っておくとしよう」
俺はそう呟いてから部屋に結界を張り、魔法石に手をかざすと魔法の詠唱を始める。
「赤き魔力は外に放ち、青き魔力は内なる元へ。緑は風に舞い上がり黄は地に深く潜り込む。光は全てを跳ね返し、闇は全てを飲み込んでいく。そして聖は癒しの糧となる。七つの魔力よ、ここに一つとなり我が身の分身となれ」
魔法詠唱が終わり、七つの色が重なり球体となると、虹色の光が包み込み、やがて一つの生命体が姿を現した。その姿はハンドボール大のまるまるとした、羽の短い鳥。ふわふわの羽毛があり手触りは最高だ。どこから見ても到底飛べそうにないフォルムだったが、その重力を無視したかのような短い羽根をぱたぱたと動かすと、ふわりとその身体が宙を舞う。
「成功だな。お前の名は『ハビル』と名付けよう」
今、俺が作った生物のようなものは『魔法従魔』と呼ばれる存在で、高い魔法知識とその存在を形成する魔力量、そして核となる魔法石が必要で、ほんの一握りの魔導士しか生み出すことが出来ないもので、多くは主に要人護衛に配置される魔法生物だった。
『ぴぃ』
ぱたぱたとホバリング状態で宙に浮いたままのハビルは俺の目の前で鳴き声をあげる。何か言いたいことでもあるのだろうか?
「そうだな。言葉が話せないと意思の疎通が面倒だよな。ちょっと待ってろ」
俺は新たに魔法鞄から取り出した魔法石に魔法を付与したものをアクセサリー状態に加工し、ハビルの胴回りに一周ぐるりとベルトのように巻いた。
「これで意思の疎通が出来るはずだ」
俺がドヤ顔でハビルにそう言うと、それを理解したかのようにハビルがいきなり話し始めたのだった。
『あんたが俺様を作り出したのか?』
「ああ、そうだ」
初めて話すハビルは自らの事を『俺様』と言う、かなり我の強そうな魔法従魔だった。
『ふうん。俺様を作り出せるからにはそれなりの腕のようだが顔はいまいちだな。却下。それで、俺様が守ることになる契約者は何処にいる? せめて若い女だとやる気がでるんだがな』
魔法従魔として生まれる際には契約者を守るために生まれた生物であることが魔法石に魂のように刻まれている。だからハビルも生み出した俺に対して契約者を紹介するように尋ねたのだ。
「――俺だ」
きょろきょろと部屋の中を見まわすハビルを片手で捕まえるとそう告げた。
「若い女じゃなくて残念だったな」
『なんだと!? 俺様を作ったあんたが契約者だって?』
「そうだ。何か問題でもあるか?」
俺に掴まれたままじっと俺の顔を見るハビル。その真っ白な身体はみるみるうちに青へと変わる。
『何だ、その化け物のような魔力量は!? それだけの魔力があれば俺様なんて必要ないだろ?』
青く変色したハビルは俺の潜在能力を垣間見て強がりを吐く。無理をしているのは身体の色を見れば明白だったが、敢えて俺はそれには触れずに話を進める。
「ちょっと旅先が遠いからな。道中、暇なんだよ。それにハビルは見た目モフモフで他の人から警戒されにくい。それを連れている俺も警戒心を下げられる効果が期待できるからな。ああ、乗合馬車で子供とかと一緒になったら大変だが、頑張ってくれ」
『俺様におもちゃになれと言うのか!?』
「そうは言ってない。ただ、相手をしてやってくれと言っているだけだ」
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