荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

文字の大きさ
28 / 201

第28話【カード収納スキルレベル8】

しおりを挟む
 サーシャとノエルがミナトの事を話し合いながら食事をする頃、僕の方はノエルの気持ちが僕に向いていないのは自分が未熟であると思い、次のレベルを目指して精進していた。

(まあ、嫌いと言われた訳じゃないし恋愛対象に年齢はあまり重要ではないと言ってたから、もっといろんな事が出来るようになれば自ずと結果はでてくるだろう。
 今は焦らずにあまりグイグイとしつこく迫るのはやめて自己研鑽じこけんさんに励むとするかな)

 そう決めた僕はレベルがあがるまで配達依頼以外ではノエルに会わない、食事などにも誘わないと決めて町の外れで数週間の間収納の特訓をしていた。

「――カード収納ストレージ

 手当り次第にカード化してもほとんど経験値は増える様子が無いのでレベル7で覚えた生き物のカード化に重点を置くため虫や小動物を次々とカード化していった。

「――あ、やばい。
 頭がくらくらしてきたということはそろそろ魔力が尽きるのか……。
 今日はこのくらいにして休むとしよう。
 あ、この捕まえた生き物は持って帰っても使い道かないから全て開放して帰ろうか……」

 僕は残り少なくなった魔力に気をつけながら次々とカードから生き物を開放していく。

 最後の一匹を開放し終わったとき、脳内で待っていたレベルアップの情報が駆け巡った。

「うおっ!? ゲームとかと違って経験値が数値化されてないからいつもいきなりのレベルアップでびっくりするんだよな」

 僕はそう呟きながら内容の確認をしようとしたが予想以上に魔力を使っていたらしく、不覚にもその場で意識を失ってしまっていた。

   *   *   *

 ――ぼんやりとした意識の中でどこからか小さな子供の声が聞こえてくる。
 
「あ、めをさましたみたいだよ。おかあさん」

 ベッドの布団で寝かされていた僕が目を覚ますと僕の顔を覗き込んでいた人影がパタパタと足音をたてて誰かを呼びに行った。

 端的に聞こえた内容から子供が母親を呼びに行ったと思えるが魔力枯渇の一歩手前まで使った魔力はまだ完全には回復しておらず身体のあちこちが悲鳴をあげていた。

 奥の部屋からゆっくりとした足音とパタパタと軽い足音が混じり合いながら部屋に入ってきた。

「お体の調子はいかがですか?」

 まだベッドから起き上がれない僕の顔を覗き込んできたのは30歳前後に見える優しそうな女性だった。

 その側では5歳くらいの女の子が一緒になって僕の顔を覗き込んでいた。

「まだ、思うように体が動かせないようですね。
 状況から僕が倒れていたのを介抱してくれたようで、ありがとうございました。
 出来ればもう少しだけこのまま休ませて頂けると助かります」

 僕が首だけ彼女らに向けてそう告げると微笑みながら頷いて「ええ、構いませんよ」と言ってくれた。

「すみません。
 ではお言葉に甘えてもう少し眠らせて貰います」

 僕はそう告げると安心をしてまた眠りに落ちていった。

 ――結局、僕が起きれるようになったのは次の日の夕の鐘を過ぎた頃でほぼ丸一日以上眠っていたらしい。

「うーん。
 やっと身体が動くようになってきた」

 僕はベッドから起きると大きく伸びをしてから今回の分析と反省をした。

(今回は本当にまずい判断をしてしまったようだ。
 これが町ではなく森とかなら獣に襲われているだろうし、いや町でも悪い人に見つかっていたら身ぐるみを剥がされる程度ならばいい方で最悪殺されていてもおかしくは無かっただろう。
 今後はもう二度と無理はしないかするとしても信用のおける人と一緒の時だけにしよう)

 そう自分の中でまとめた時、部屋のドアが開いて介抱してくれた女性が様子を見にきてくれた。

「あ、起きれるようになられたのですね、良かったです。
 もし、よければ食事を食べられませんか?」

「いえ、助けていただいたうえに食事まで受けては申し訳ないですよ」

 そう言った矢先に僕のお腹がグーと鳴る。

「丸一日以上眠られていたんですからお腹も空くはずですよ。
 大したものはありませんがどうぞ遠慮せずにご一緒してください」

 そこまで言われれば無理に断るのも悪いと案内させるままに食堂へと向った。

 用意されていた食事はごく一般的な家庭料理でいつも宿の食堂や外食ばかりの僕にはどこか懐かしい感じのする食事だった。

「ごちそうさまでした。
 この度は本当にありがとうございました。
 見ず知らずの僕を泊めて頂いたうえに食事まで頂戴してしまい感謝しかありません。
 お礼と言えるほどのものではないですけどこれを受け取ってください」

 僕はそう言うとウエストポーチから何枚かのカードを取り出した。

「カード……ですか?」

「はい。
 実は僕はカード収納スキル持ちなんです。
 あまりメジャーなスキルではないので……いえ、あまり使えると認識されていないスキルですのでびっくりされるかもしれませんがいくつかの品物がこのカードに圧縮収納されているのです。
 本来ならばこのカードを元に戻すには圧縮した人間が必要なのですけど昨日は倒れてしまいましたが有用な使い方が出来るようになったのでお試しも兼ねてあなたにプレゼントさせてください」

 僕はそう言うと取り出したカードを彼女を持たせてから追加の付与を施した。

「――条件圧縮コンデスト

 僕がスキルを使うと持っていたカードが一瞬スッと赤みがかってすぐに消えた。

 裏を見ると小さな魔法陣のような模様が浮かび上がっており一目で何か特別な物へと変わった事を認識させた。

「これで僕以外の人でもこのカードを開放させる事が出来るようになりました。
 ただ『誰でも』となると少々問題が出るので少し改良してカードと紐づけした人のみ開放出来るようにしてみました」

「えっと、すみません。
 よく意味がわからないのですけれど……」

 いきなりカードを持たされ、聞きなれない言葉を次々と話す僕に戸惑いを隠しきれない彼女に僕は慌てて謝った。

「あ、すみません。
 説明を急ぎすぎましたね。
 では、試しにひとつ開放してみましょうか」

 僕はそう言うと彼女からカードを一度戻してもらい、その中から金色こんじきマースのカードを取り出すと彼女に持ってもらい開放の言葉を唱えてもらう。

「――暗号解放リリース

 彼女の声に反応したカードは彼女の手のひらの上に金色こんじきマースを出現させた。

「キャー!」

 ぴちぴちぴち

 びっくりした彼女は金色こんじきマースを床に落としてしまう。

 それはそうだろう。いきなり説明も無しにカードから魚が現れて手に乗っているのだから……。

(しまった。べつのものにするかまな板の上で開放して貰えば良かった)

 と後悔しながらまた平謝りをする僕がそこにいた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...