荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第39話【マリル雑貨店】

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「お連れのお部屋はこちらになります」

 係の男性に案内された部屋は少し奥まった通路の先にある質素な内装の部屋だった。

 イメージ的にはカプセルホテル的な感じで本当にただ泊まれるといった部屋だった。

(ロギナスで泊まっていた宿の半分の面積しかないぞ、これがこの宿の標準なのか特別狭い部屋なのかは比べようがないが、まあどうせ2日ばかり寝るだけだからこれで十分だろう)

 僕はそう考えて部屋の場所だけ憶えるとノエルとの待ちあわせ場所に戻った。

 受付前には既にノエルが待っており先ほど案内をしてくれた女性と話をしていた。

「ノエルさん、お待たせしました」

「それじゃあ今から私の用事に付き合ってくださいね」

 ノエルはそう言うと僕の手をとって宿から街へくりだした。

「大きな建物が多い街ですね」

 こちらの世界に来てからはロギナスの町しか見たことがなかったので全ての基準がそこにあったためエルガーの街並みはその建物の大きさに関心が向いていた。

「そうね。
 王都ほどではないけれどエルガーの街も大きな建物――特に3階建ての建物が多いのが特徴かもしれないわね」

 そうノエルに説明されてロギナスの町で見た建物のほとんどが2階建てまでだった事を思い出す。

「確かにロギナスでは斡旋ギルドの3階建てが凄く印象に残ってるくらいで他の建物はほとんど2階建てまででしたね。
 何か理由があるんですか?」

「私もロギナスの町に住むようになってまだ5年くらいだから詳しい事は知らないけれど、町の規模からして3階建てを建てるメリットがあまり無かったからと聞いた事があるくらいね」

「――確かにあの町の規模で人口があのくらいならばわざわざ技術もお金もいる3階建てにこだわる必要はないだろう」

 そんな事を話しながら僕達はあるお店の前にたどり着いていた。

 ――マリアーナ雑貨店。

 ロギナスにあるノエルの雑貨店よりもひとまわり大きな3階建ての建物は左右の店構えからしてもひときわ目立っていた。

「ここが馬車で話していた知り合いのやっているお店よ。
 1階と2階が店舗で3階が居住区になってるわ。
 多分彼女は2階の売り場に居ると思うから先に挨拶に行ってきてもいいかな?
 その間、ミナトさんはお店の商品を見ていて欲しいの」

 ノエルの言葉に僕はひとつ頷《うなず》くとノエルは笑顔で「ありがとう、ちょっと行ってくるわね」と言って2階への階段へと向かって行った。

(さて、女性同士の話は長いのが相場だろうから僕はゆっくりと商品を見てまわるとするか。
 もしかしたらノエルさんのお店を繁盛させるヒントがあるかもしれないからな)

 僕はそう思いながら1階の店舗に並べられた商品の数々をじっくりと見てまわる。

 1階は比較的安価な品物を中心とした雑貨が並べられている。

 日常的に使う料理の道具や生活雑貨の中でふと目に止まったものを手にとってみる。

「これはただの水筒?……じゃないよな。
 多分何か仕掛けがあるはず」

 僕はある水筒型の入れ物に興味を引かれて鑑定スキルで確認をしてみた。

【冷却機能付きの水筒:入れた水が冷たくなりそのまま保持される】

(冷却機能ってどうやってるんだろう……。
 僕のカードに付加処理を出来るみたいに氷魔法とかを水筒に付加させているんだろうか?)

「仕組みはよく分からないけどちょっと欲しいと思わせる品だよな。
 せっかくだから買ってみるかな」

 僕はそう呟くと水筒の値段を確認した。

【冷却機能付水筒:5万リアラ】

「ご、ごまんりあら?
 た、高い……のか? それともこんな付加機能がついた品物は総じてこのくらいが妥当なのか?」

 鑑定スキルでも物の詳細は分かってもその値段が妥当かは判断が出来ないのでそれこそ商売スキルを持つ者にみてもらうしか無さそうだった。

(とりあえず、後でノエルさんに聞いてみてから買うかどうかを判断しよう)

 金色マースの情報料やカード化の手数料が入ってきているので正直ふところは温かいのだが、ぼったくりにあってもいいかと言えば良くないに決まっているので欲しくても飛びつかないようにしている。

(とりあえずコイツは保留にして他の物を見てまわるか……)

 水筒を元々あった場所に戻してくるりと店内をまわった頃、二階に通じる階段から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「だから、まだ何も決まってないって何度も言ってるじゃない」

「そんなこと言って油断させてもは渡さないからね」

「だからとは何もないから、お父様が勝手に話を持ってきただけなのよ」

 片方の声は間違いなくノエルの声で言い合いをしているのが知り合いと言っていたマリル本人なのだろう。

 ブロンドの巻き髪にドレスとまではいかないが高級感のある服装で眼鏡をかけたやり手のお姉様タイプの女性だった。

(へえ、こっちの世界でも眼鏡ってあるんだな)

 僕がそんな事を考えているとこちらに気がついたノエルが手をあげて僕を呼んだ。

「ごめんなさい、待たせたわね。
 マリルにあなたの事を説明しても全く信じて貰えなかったから時間がかかってしまったの」

 ノエルが横にいるマリルに困った視線を向けて抗議をする。

「はじめまして。
 わたしがこのお店の責任者をしているマリルよ。
 あなたの事はノエルから聞いたけれど……」

 マリルはそう言うと僕を値踏みするような視線でじっとみつめてくる。

「ミナトといいます。
 今はノエルさんと一緒に王都へ向かう旅の途中となります。
 しかし、このお店は大きくて立派ですね。
 まだ一階しか見ていませんが品物の種類が多く、目移りをしてしまう品揃えだと思います」

 僕はとりあえずマリルに対して無難な受け答えをしようと考えていた。

「ふーん。
 これはまた随分と若い男を捕まえたわね。
 あなた、ミナトと言ったわよね?
 うちの店構えは一目みれば分かるでしょうけど品物がいいか悪いか値付けはまともかぼったくりか、あなたから見てどう見えるか教えてもらえるかしら?」

「ちょっと! 商売人のスキルを持ってない彼にその質問はないんじゃないの?」

「なに言ってるの?
 商売人のスキルが有ろうが無かろうが私達の業界で生きていこうと思うならばその程度の目利きが無いと商売において全敗するわよ。
 そんな当たり前の事が出来ない男と結婚するのをあなたのお父様が認める訳がないじゃない?
 で、どうなの?
 正直に答えてもらえるかしら?」

 マリルは僕の前に立ち、そう質問を投げかけた。
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