荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

文字の大きさ
81 / 201

第81話【隷属の首輪と旅立ちの準備】

しおりを挟む
「まず単刀直入にお聞きしますが『隷属の首輪』について何か知っている事はありませんか?」

 僕がザッハにそう問うと彼は苦々しい表情をして「私もそこまで詳しくはないのだが」と前置きをして話し始めた。

「我が王国の隣にあるアランガスタの国に魔道具を専門に扱う村がある。
 我が王国でもある程度の魔道具を作る職人は居るが、本当に高度なもののほとんどはその村の職人が手掛けているらしくそれこそギルド便を支えるゴーレム伝書鳩もこの村の職人が発明したものだ。
 隷属の首輪ほどの魔道具となるとこの村の職人が手掛けている可能性が高いと思う」

「そこへ行けば首輪の解除方法が分かるのでしょうか?」

「正直それは分からない。
 だが、今の時点で私が知っている情報ではそれが一番有力だと言える。
 だが、この村はアランガスタでも特別地区に指定されていて人の出入りに特に厳しいと言われている」

「その村に行くにはどうしたら良いのですか?」

 僕はザッハの言葉に躊躇ちゅうちょなくそう問いかける。

「全く方法がない訳ではないが、かなり厳しい条件がある。
 まず、アランガスタの王都へ行きそこでギルドに登録して身分証明書をつくるのだが我が国の斡旋ギルドのように簡単に登録出来る事はない」

「どういうことですか?」

「アランガスタのギルドは基本的に商業ギルドしかない。
 もともとその国に産まれた者は自動的に戸籍を得るがそうでない国外から来た者は商業ギルドに登録して身分証明書を発行してもらわなければ街に滞在することが出来ないそうだ。
 つまり、我々がアランガスタで活動するには何か商売をする目的で行くしかないと言うことだ。
 せめて君に商人スキルでもあれば問題なかったかもしれないが……」

「商売……ですか」

 僕は少し考えてザッハに言った。

「僕には物を売る商売は出来ませんが、この町のギルドでお世話になった仕事があります」

「うちのギルドで受けた仕事?」

「はい。
 僕はカード収納スキルを使った運送業をやろうと思います。
 個人でやるので『運び屋』としてですが、それを仕事として活動をすれば商業ギルドに登録出来ると思いませんか?」

「運び屋か……。
 確かにそれならば商人スキルがなくとも出来るだろう。
 だが、くれぐれもやりすぎには注意しろよ。
 今の君のスキル全開でやってしまうと直ぐに目をつけられて見動きが取れなくなるのは間違いないからな。
 ましてやアランガスタは国外になるから私みたいな地方のギルドマスター程度ではなんの力にもなれない事は理解してくれよ」

 ザッハはそう言うと一通の手紙を見せてくれた。

「今回の研修に来ていたロセリからの手紙だ。
 彼女はノーズの町に帰って今は運送部門で頑張っているそうだ。
 これは昨日ギルド便にて届いたのだが内容をみるとどうやらレベルがあがりそうなので君に会いたいとあった。
 だが、ノーズの町はロギナスの町から王都経由で15日はかかる距離にあるので簡単には向かわせる訳にはいかないと考えていたのだ」

「そのお話とアランガスタとどういった関係が?」

「ああ、ミナトはこの辺りの地理に詳しくないから分からないだろうが我が国からアランガスタの国への移動手段はノーズの町から出る馬車便しかないのだよ。
 ただ、馬車便とは言っても観光客などを受け入れている訳ではないので基本的に旅商人の馬車か商隊の馬車に乗せてもらうしかない。
 しかしアランガスタへの商隊馬車は全てテンマ運送が仕切っているので今回はやめたほうが良いだろう。
 もしこの件が発覚したら即拘束されるのは間違いないからな。
 となると後は旅商人となるが都合良くそんな者がいるとは思えない」

「では、どうすれば……」

 僕の当然の質問にザッハは「ううむ」と唸りながらため息をひとつついてから話を切り出した。

「実はひとりだけ『あて』があるのだが……。
 いや、しかし……ううむ」

 ザッハはそう言ってまた唸りながら考え始めた。

「どうしたのですか?
 なにかその人は問題でもあるのでしょうか?」

「問題……。
 そうだな、そいつは能力的には私が信用におけるレベルの人物ではある……あるのだか少々見た目と性格がな……」

「その人がどのような人であれ、アランガスタへ行くのにそれが最善ならば受け入れてうまくやりますので紹介をしてくれませんか?」

 悩むザッハに僕ははっきりとそう告げる。

「そうか、確かにそれが最善かもしれないな。
 よし、わかった。
 今からその人物を呼んでやるから自分で口説き落としてみろ」

 ザッハはそう言うと一度部屋を出て行き職員に指示を出すとまた部屋に戻ってきた。

「いま呼びに行ってもらったから暫くすれば来ることだろう。
 そちらの方はそれでいいとしてこちらの後始末をどうするか決めておかなければならないな。
 ザガンとその取り巻きについては王都を出てロギナスに向かうことはおそらく父親か誰かに伝えているだろう。
 あとはロギナスに正規の方法で入ったかどうかだが、君の話を聞いているとどうも怪しい気がするんだ」

「それは何故ですか?」

「ザガンの奴がノエル嬢を無理やり連れて行こうとしていたからだ。
 ただ彼女ノエルに会いに来ただけならば正規の手続きで町に入った方が当然いいのだが、もしはじめからさらうつもりだったならばロギナスの町に入った記録は無いほうが後でとぼけられるからな」

「なるほど、アイツの考えそうな事ですね。
 それは門兵の詰め所で分かるものなんですか?」

「そうだな。
 君のような一般人が聞いても教えてくれないだろうがギルドから問い合わせれば調べてはくれるだろう。
 だが今はやめておいた方がいいだろう」

「それは何故ですか?」

「いくらギルドといえどもなんの容疑もない者の情報を開示するように強制は出来ないのだよ。
 それにもし今、彼の事を調べればこの町でなにかトラブルがあったと知れ渡って君の動きがとりにくくなる恐れがあるからだ。
 少なくとも君が王国を出るまで……とは言わないがせめてノーズの町までたどり着くまでは他の者に悟られない方がいいだろう」

「わかりました。
 しかし、ザガンとその取り巻きはそれで良いですがノエル雑貨店はどうするのですか?
 ノエルさんが居なければ当然休むしかないけれど2~3日ならばともかく半月以上休むとなると常連客も噂話をするでしょうし、王都からもどんどん荷物が届いてしまうと思うのですが……」

「まあ、それは私に任せてもらえるか?
 数日間休んでから週に2~3日ほど職員を派遣して店番をさせようと思う。
 客に聞かれたら『自分で商品を仕入れに行っている』とでも答えておくさ」

「……それはありがたいのですが、それが嘘だとばれたらあなたの立場があぶないのではないですか?」

「なあに、ちょっとばかし依頼書を偽造してやれば言い訳はなんとでもなるさ」

「それは、ギルドマスターの発言としてはマズイのでは?」

「ははは。確かにそうだな。
 まあ、聞かなかったことにしてくれ。
 私も人間なんでね。
 犯罪者を擁護ようごするつもりはないし、世話になった者が困っている時には手を差し伸べるのが人情ってやつだろう?」

 ザッハはそう言ってニカッと笑った。

 ――コンコン。

 その時、入口のドアがノックされ先ほど呼んだ人物が到着したことを知らせてくれた。

「おう、来たか。入っていいぞ」

 ザッハが許可を出すと『カチャリ』とドアが開いた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...