荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第133話【魔道具破壊の準備】

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「魔法を使う人なんかは分かると思うけど、人の魔力って一晩休めばそれなりに回復しますよね?
 彼の魔力を倒れないギリギリまで吸い取っては休ませるを繰り返せば必要な魔力量を確保出来るのではないかと思うんですが……」

「え?
 そんなことが可能なの?」

「少なくともそんなやり方は聞いた事もないですね」

「魔力を抜くってどうやるんだよ?
 首輪の魔石に溜め込んでも身につけている限り消費もされるから少なくとも1ヶ月はかかるんじゃないのか?」

 僕の意見にそれぞれ違う反応を見せた三人に対してガーレンは青ざめた表情で震えていた。

「ま、魔力を全て取られてしまえば二度と魔道具士として活動することが出来ないばかりか限界を越えてしまえば精神が崩壊することになるだろう?
 そのやり方を安全に出来る方法はあるのか?」

「安全な方法?
 そんなものは無いですよ。
 だいたいこのやり方も今思いついただけなんですから」

「ひっ! ひいいっ!!
 た、助けてくれ!」

 僕の言葉の意味を理解したガーレンは腰を抜かして床にへたり込んだまま情けなく助けを求める。

「自分のしたことには責任を持たないといけませんね。
 うまくやりますから大丈夫ですよ……たぶん」

 僕はそう言うとへたり込むガーレンの肩に手を置いて効果のイメージをしながらスキルを使う。

カード収納ストレージ

「ぎゃあ! ま、魔力が!」

 僕の手にカードが現れると同時にガーレンがそう叫んで床に倒れてしまう。

「まさか、死んだの?」

 ルルベが倒れたガーレンを見てそう聞いてくる。

「魔力の8割を吸い上げたので気絶しただけですよ。
 この薬を飲ませて寝かせておけば明日には回復してると思います。
 それでこのやり方を10日ほど続けますので協力をして頂きたいです」

「と、10日?
 10日も続けるのか?」

 ガーレンの様子を見てゾラが気の毒そうにそう聞くので僕は「ええ、それが何か?」と答えておいた。

「――では、彼はギルドの反省室に入っていて貰います。
 その間に取り引きをした商人の捕縛手配をしますがそれはギルドに任せてもらって良いですか?」

「はい。
 どうせ僕たちでは探すことは出来ませんのでルルベさんにお任せします。
 では、彼が逃げないようにしっかりと監視するのと起きたら食事だけはきちんと食べさせてあげてください。
 そうでなければ魔力がしっかりと回復せず、本当に死んでしまうかもしれませんので……」

「わ、わかりました。
 そのように手配しておきますのでまた明日にでもギルドに顔を出してください」

 ルルベにそう言われた僕たちはうなずいてからギルドを後にした。

   *   *   *

 そんなやり取りを10日ほど続けた最後の日、精魂尽きた表情でガーレンが「もう勘弁してくださいお願いします」と土下座で懇願してきた。

「まあ、魔力は十分溜まったと思うので今日で終わりにしますよ。
 但し、足りなくてうまく行かなかったらまた最初からやり直しだけどね」

「……もう無理……です」

 僕の言葉を聞いたガーレンはそうつぶやいてそのままパタリと倒れ込んだ。

「今度こそ死んだ?」

「ショックで気絶しただけですよ。
 それよりも彼への罰は決まったんですか?」

「普通ならば鉱山で強制労働なんだけど、せっかくの魔道具士なんだから国の監視付きで魔道具を黙々と作らせようかなと思っているわ。
 確かにあなたには迷惑をかけたし彼が商人に渡さなければとなるんだけど魔道具士は貴重だからね。
 そのへんで勘弁して貰えるとギルドとしても助かるんですけどね」

「俺もそのあたりが落とし所かと思ってる。
 確かにコイツはまだ未熟だしレベルが上がれば国にとって有益な魔道具を作れるようになるだろうからここで処分は勿体ないからな」

 ルルベの意見にゾラが同意をしたので僕もうなずいた。

「あ、そうだ。
 魔道具を違法に売買していた商人は捕まえたわよ。
 今はギルドの反省室で国の魔道具管理部の役人が取り調べをしているところね。
 まあ、証拠は揃っているし財産没収のうえで強制労働ってところが妥当だと思ってるわ」

「まあ、その商人にしてもガーレンにしてもこの国の法律で裁いてくれれば僕は文句のつけようがないよ。
 正直言って僕が許せないのは実際に首輪を使ってノエルを悲しませたザガンだけだからね」

「その彼はどうするつもりなの?」

「ノエルに着けられている首輪を無事に外すことが出来たらどうするかを決めないといけないとは思ってる。
 今は行方不明となって関係者が探しまくっているだろうから証拠と共に役人に突き出してもヤツの家は豪商だから僕が誘拐したとなる可能性が高いんだよ」

「ならば何か案があるのかい?」

「今ヤツが僕の手元にいることを知っているのは数人だけなんでこのまま行方不明になってもらうのが一番簡単なんですけど、それではなんとなく僕の気持ちが晴れない気がするんです。
 なのでこちらの国の法律でヤツの罪状を確定して隷属の首輪をはめてあげるのがいいかと思いますがそんなことって出来ますか?」

 僕はルルベに向ってそう問いかける。

「……出来なくはないわね。
 その事件をおこした彼をギルドに連れて来れるならば被害者の証言と売り渡した商人の証言があれば不当に魔道具を手に入れて不当な使い方をした罪に問えると思います」

「どのくらいの罪になりそうですか?」

「あくまでアランガスタの法律に基づいた罪状ならば鉱山での強制労働5年ってところかしらね」

「5年ですか……短いような気もしますが仕方ないですね。
 後は親のやっている商会から圧力がなければいいですけどそう言うことがあるものなんですか?」

「無くはないけれど隷属の首輪を着けてしまえばその主人でなければ外すことが出来ないからあなたが登録の主人になってしまえば心配ないと思いますよ」

「わかりました。
 では、明日にもノエルの首輪を外してあげたいと思いますので無事に解決出来ればヤツはこちらに引き渡しますので後はお願いしたいと思います」

「わかりました。
 ただ、開放するのはギルドで部屋を準備しますのでそちらで行ってください。
 今回の件は万が一にも一般に漏れる訳にはいかない案件ですので内々に処理をさせて欲しいのです」

「ええ、良いですよ。
 こちらとしても不測の事態に備えてギルドの協力があったほうが安心出来ますから」

「では、明日はよろしくお願いします」

「はい」

 僕とルルベはそう言い合ってから握手をしてから別れた。
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