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第6話【思ったよりも厳しい現実】
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ギルドを出た僕は今夜泊まる宿を探していた。
(バルド町長からの報酬があるから数日間は何とかなるだろうからその間にギルドから仕事の依頼があればそれで生活費を稼げばいいだろう)
僕はそんな事を考えながら高くもなく安くもない普通の宿屋を選択して泊まる事にした。
次の日、早速ギルドに向かいリリスに仕事の依頼が来ていないかを確認すると、首を左右に振りながら「ありません」と答えた。
まあ、僕もいきなり依頼が入っているとは思ってなかったので「そうですか」と言い、その日は町の散策をして過ごした。
そんな感じで5日が過ぎて、手持ちのお金が少し心許なくなってきたので再度リリスに依頼の確認をしたところ難しい顔をした彼女が別室に案内してくれた。
「実は、治療に関する問い合わせはいくつかあるんです。
ですが、条件が合わない方やナオキさんのその……治療方法が受け入れられないとの事で依頼の取り下げをされる方がほとんどなんです。
さらに悪いことに条件の合わない……男性の方々から『男は診れないだと、ふざけるな!』とか『自分好みの若い女しか治療しないでそうでない時は法外な報酬を要求するクズだ!』とか『どんな怪我や病気も全て治せると嘘をつくとんでもない奴だ!』などのデマが流れていて余計に依頼が無い状態になってるんです」
「そんな!どうしてそんな事に?」
「基本的にはやっかみと不満ですね」
「触診は僕の能力を使う条件なのでこればかりは納得してもらうしか無いんだけど……」
「ええ、ナオキさんの言い分は分かります。分かるのですが、この町の人々は病気にしても怪我にしても、もともと薬師が調薬した薬で対応してきた経緯がありますので、例えば『薬師の薬では絶対に治らない怪我や病気』ならば試してみたいと思えるでしょうが、そうでなければわざわざ恥ずかしい思いをしてまでナオキさんの治療を受けたいとは思わないのです」
「では、どうすれば……」
「一介の受付嬢にすぎない私が言う事ではないのかもしれないですけど、この町で仕事をするならば転職をおすすめします」
「転職ですか!?」
「あ、すみません。間違えました。転職ではなくてもうひとつ主となる職業の登録をおすすめします。
つまり、治癒魔法士の仕事はたまたま依頼があった時に対応して、日頃は別の仕事で生活費を稼ぐスタイルですね」
「そう言われても僕には治癒魔法しか得意なものが無いからどうすればいいか分からないです」
「どんなことでも良いですから、他の人より優れていると感じるものを探しておいてください。
それさえ分かればギルドの方で仕事を探してみますので……」
(リリスの言葉に僕はあ然としていた。治療魔法を極めれば多くの苦しんでいる人を助ける事が出来ると思い、今の能力を選んだのに人々は自分が考えているほど万能な治癒など必要ないのだろうか)
「それか……」
僕が悩んでいるとリリスが別の提案も薦めてきた。
「それか、領都サナールへ行って知名度を上げる努力をするか……ですね。
今のナオキさんはいくら治療の腕が良くても知名度がありませんのではっきり言って信用がありません。
普通ならば治療を皆さんの前で行って認知してもらうのですが、あなたの治療方法では公開実演治療なんて出来る訳ないですよね」
(確かに胸を触りながら『治療してます』なんて言っても全く説得力が無いだろう。
それどころか痴漢・変態のレッテルが拡散するだけだろう)
「そうですね。領都になれば人も各地から集まってくるでしょうかし、もしかしたら僕の条件でも治療を受けてくれる人がいるかもしれないですね。
となるとすぐにでも出発したいと思いますが領都にはどうやったら行けるのですか?」
「一般的には定期的に乗り合い馬車が出ていますのでお金を払って馬車でいくのが現実的ですね。
ただ、領都までは馬車で5日間くらいかかるのでそれなりにお金もかかります。
具体的には金貨2枚ぐらいですね」
「き、金貨ですか。ちょっと今の僕には手が出ないですね」
僕は馬車の金額を聞いて本気で歩いて行こうかと思い始めていた時、ふとある事を思い出した。
「あの、アイテムボックスって知ってますか?」
「アイテム……ボックス。ですか?
いえ、聞いた事ありませんね。どういったものなのでしょうか?」
リリスは初めて聞く言葉に首を傾げながら僕に説明を求めた。
「アイテムボックスと言うのは魔法で物を別の空間に入れて運ぶ事の出来る能力の事で収納魔法とも呼ばれているものです。
これを使って大量の荷物を運んだりする依頼とかってあったりしますか?」
僕はそう言って側にあった植木鉢を収納して見せた。
「えっ!? 植木鉢は何処にいったのですか?」
目を丸くしてリリスが僕に質問する。
それに答えるように僕は収納した植木鉢をアイテムボックスから取り出して元の位置に置いた。
「こんな感じで重たい荷物なんかを移動させたい時に使えるんじゃないかと思うんですけど……」
その一連の流れを把握したリリスは「なんですか、そのインチキな能力は……」と言いながら思い当たる依頼の書類を準備してくれた。
(バルド町長からの報酬があるから数日間は何とかなるだろうからその間にギルドから仕事の依頼があればそれで生活費を稼げばいいだろう)
僕はそんな事を考えながら高くもなく安くもない普通の宿屋を選択して泊まる事にした。
次の日、早速ギルドに向かいリリスに仕事の依頼が来ていないかを確認すると、首を左右に振りながら「ありません」と答えた。
まあ、僕もいきなり依頼が入っているとは思ってなかったので「そうですか」と言い、その日は町の散策をして過ごした。
そんな感じで5日が過ぎて、手持ちのお金が少し心許なくなってきたので再度リリスに依頼の確認をしたところ難しい顔をした彼女が別室に案内してくれた。
「実は、治療に関する問い合わせはいくつかあるんです。
ですが、条件が合わない方やナオキさんのその……治療方法が受け入れられないとの事で依頼の取り下げをされる方がほとんどなんです。
さらに悪いことに条件の合わない……男性の方々から『男は診れないだと、ふざけるな!』とか『自分好みの若い女しか治療しないでそうでない時は法外な報酬を要求するクズだ!』とか『どんな怪我や病気も全て治せると嘘をつくとんでもない奴だ!』などのデマが流れていて余計に依頼が無い状態になってるんです」
「そんな!どうしてそんな事に?」
「基本的にはやっかみと不満ですね」
「触診は僕の能力を使う条件なのでこればかりは納得してもらうしか無いんだけど……」
「ええ、ナオキさんの言い分は分かります。分かるのですが、この町の人々は病気にしても怪我にしても、もともと薬師が調薬した薬で対応してきた経緯がありますので、例えば『薬師の薬では絶対に治らない怪我や病気』ならば試してみたいと思えるでしょうが、そうでなければわざわざ恥ずかしい思いをしてまでナオキさんの治療を受けたいとは思わないのです」
「では、どうすれば……」
「一介の受付嬢にすぎない私が言う事ではないのかもしれないですけど、この町で仕事をするならば転職をおすすめします」
「転職ですか!?」
「あ、すみません。間違えました。転職ではなくてもうひとつ主となる職業の登録をおすすめします。
つまり、治癒魔法士の仕事はたまたま依頼があった時に対応して、日頃は別の仕事で生活費を稼ぐスタイルですね」
「そう言われても僕には治癒魔法しか得意なものが無いからどうすればいいか分からないです」
「どんなことでも良いですから、他の人より優れていると感じるものを探しておいてください。
それさえ分かればギルドの方で仕事を探してみますので……」
(リリスの言葉に僕はあ然としていた。治療魔法を極めれば多くの苦しんでいる人を助ける事が出来ると思い、今の能力を選んだのに人々は自分が考えているほど万能な治癒など必要ないのだろうか)
「それか……」
僕が悩んでいるとリリスが別の提案も薦めてきた。
「それか、領都サナールへ行って知名度を上げる努力をするか……ですね。
今のナオキさんはいくら治療の腕が良くても知名度がありませんのではっきり言って信用がありません。
普通ならば治療を皆さんの前で行って認知してもらうのですが、あなたの治療方法では公開実演治療なんて出来る訳ないですよね」
(確かに胸を触りながら『治療してます』なんて言っても全く説得力が無いだろう。
それどころか痴漢・変態のレッテルが拡散するだけだろう)
「そうですね。領都になれば人も各地から集まってくるでしょうかし、もしかしたら僕の条件でも治療を受けてくれる人がいるかもしれないですね。
となるとすぐにでも出発したいと思いますが領都にはどうやったら行けるのですか?」
「一般的には定期的に乗り合い馬車が出ていますのでお金を払って馬車でいくのが現実的ですね。
ただ、領都までは馬車で5日間くらいかかるのでそれなりにお金もかかります。
具体的には金貨2枚ぐらいですね」
「き、金貨ですか。ちょっと今の僕には手が出ないですね」
僕は馬車の金額を聞いて本気で歩いて行こうかと思い始めていた時、ふとある事を思い出した。
「あの、アイテムボックスって知ってますか?」
「アイテム……ボックス。ですか?
いえ、聞いた事ありませんね。どういったものなのでしょうか?」
リリスは初めて聞く言葉に首を傾げながら僕に説明を求めた。
「アイテムボックスと言うのは魔法で物を別の空間に入れて運ぶ事の出来る能力の事で収納魔法とも呼ばれているものです。
これを使って大量の荷物を運んだりする依頼とかってあったりしますか?」
僕はそう言って側にあった植木鉢を収納して見せた。
「えっ!? 植木鉢は何処にいったのですか?」
目を丸くしてリリスが僕に質問する。
それに答えるように僕は収納した植木鉢をアイテムボックスから取り出して元の位置に置いた。
「こんな感じで重たい荷物なんかを移動させたい時に使えるんじゃないかと思うんですけど……」
その一連の流れを把握したリリスは「なんですか、そのインチキな能力は……」と言いながら思い当たる依頼の書類を準備してくれた。
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