女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

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第63話【情報収集と治療サービス】

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「とても美味しかったです」

「ご馳走さまでした。
 ありがとうございました」

 コリア達は揃っておかわりをして満足そうにお礼を言ってきた。

 その言葉に他の者達も次々とお礼の言葉が続く。

「いえいえ、どう致しまして」

 美味しい食事と言うものは人の口を軽くするものだ。
 これにお酒があればさらに良かったのだが旅の途中の野営時に飲酒するのは常識的ではないとリリスに言われたので出すのはやめておいたがそれでも十分な話を聞くことが出来た。

「なるほど、バグーダの町は他の町に比べて女性の発言力があるのですね」

「ええ、斡旋ギルドのギルドマスターも町長様も女性ですし、そう言えば薬師ギルドのギルドマスターも代替わりの時に女性に代わったと聞いてるわ」

「ほうほう。それは何か理由があるんですかね?」

「んー。流石にその辺はあまり詳しくないの」

 コリアがそう話していると横で聞いていた御者の男性が補足説明を買って出てくれた。

「それは、バグーダの町が『温泉の町』と呼ばれるほどに観光に力を入れているのと関係しているんだ」

「温泉の町?」

 僕は温泉の響きに懐かしさと期待を込めて聞き返した。

「ああ、バグーダは地下脈に温泉が出る場所があってそれを観光資源として発展してきた町なんだ。
 元々は男性が町長を努めていたが前町長の娘さんが町長の役を引き継いだ時に観光ギルドのギルマスも兼任した事で女性がトップのギルドが任命されたって訳だ」

「ギルドの長ってその町の町長が任命するものなのですか?
 普通に領都の本部か支部の人事を決めているものだと思ってたよ」

「ああ、基本的にはその認識で合っているんだが、特に領民に影響のある斡旋ギルドと薬師ギルドに関してはそこの町長権限で領都本部に人事のお願い口出しが認められているんだ。
 その権限を使って『おもてなし』に理解の深い女性達を登用したそうだ」

「そうなんですね。
 女性の任命は揉めたりはしなかったのですか?」

「初めは揉めたらしいが町長が『結果を示す』と言って1年程で町の収益を2倍にしたそうで反対派も認めざるを選なかったようだ」

「1年で2倍!?
 それはまた相当優秀な女性だったのですね」

「まあ、おかげであまり仕事の出来なかった男達は他の町に流れていったがな。
 まっ、仕方ないと言えば仕方ないんだが……」

 御者の男性はそう言うと苦笑いをした。

「リリスは今の話を知ってた?」

 横で一緒に話を聞いていたリリスに聞くと「半分くらいは」と返ってきた。

「バグーダの町が温泉の町と言われている事とギルド関係に女性のトップが多いのは知ってたわ。
 斡旋ギルドの情報網があるから他の町の事もある程度は入ってきていたからね。
 でも、何故そうなったかまでは知らなかったわ」

 彼女は今聞いた話をメモをとりながら何か考え出したのでそっとしておいて僕は話をしてくれた人達にお礼を言った。

「――いい話をありがとうございました。
 ますますバグーダに行くのが楽しみになりました」

 その後も他の乗客からいくつかの有益な話を聞いたがそれらの話も一段落したので解散しようとした時に老夫婦の男性が話しかけてきた。

「ナオキ治癒士様。
 ひとつお願いがあるのですが……」

「はい。何でしょうか?」

「実は私の妻が馬車の揺れで腰を痛めたようなのです。
 もともと腰の状態は良いとは言えなかったのですが今回バグーダに住んでいる娘夫婦とその孫に会いたいと比較的揺れの少ない大型の馬車で移動を試みたのですがやはり痛みが出てしまったようだす」

 そう説明する男性の横で年配の女性が腰の痛みからか汗をかいていた。

(そう言えばこの女性はあまり食事もすすんでいなかった気がする。痛みで食欲もあまりなかったのだろう)

「今から奥様を診療させて貰っても良いですか?」

 僕の言葉に「宜しいのですか?」と男性が僕の手を握る。

 本来ならばリリスが対応するのだが先程から何かを考え込んでおり、僕が変わりに説明する事にした。

「このような場所ですし、本来ならば事前説明と承認書を要するのですが、今回はご本人と旦那さんの口頭了承で引き受けたいと思いますが宜しいでしょうか?
 また、僕の事をご存知のようですから治療方法に関してもご存知ですか?」

「はい。もちろん存じております。
 サナールに住んでいてあれ程の影響力を発揮された方の事を知らない方が難しいのでは無いでしょうか?」

「奥様もご了承頂けますか?」

「は、はい。宜しくお願いします。いたたた……」

 そこまで確認した僕はリリスの肩をトントンと叩いて「悪いけど少しばかり手伝ってくれるかな?」と言った。

「えっ!? 何かあったの?」

 考えの中に没頭していたリリスは予想どおり話の流れについてこれていなかったので結局もう一度説明する羽目になった。

「では、馬車の中で治療をしますので手を貸して貰えますか?」

 僕は年配女性の旦那さんに手を引いて貰い、馬車の中で治療にあたった。

「では、失礼します。
 時折、魔力流入の際に身体が熱く感じられる方もおられるようですがすぐに収まりますのでご心配無きようお願いします」

 老婦人が頷くと僕はゆっくりと治療を開始した。

「――これでもう大丈夫だと思いますが、まだどこか痛む所はありませんか?」

 治療を終えた老婦人は腰に手をやり、押したりしていたが先程まで座っているのも辛かった腰の痛みがすっかり無くなっていた。

「どこも痛くないです。
 これで安心して旅が続けられます。
 本当にありがとうございました。
 それで、治療費はいくらでしょうか?」

「お金はいりません。と言いたいのですがそちらの気持ちがおさまらないのであれば銀貨1枚ほど頂けますでしょうか?
 そして、それは先程一番有益な話をしてくれた御者の方にお礼として差し上げたいと思います」

 僕はそう言って受け取った銀貨を御者の男性に手渡した。

「本当にありがとうございました」

 老婦人が再度お礼を言った時、彼女のお腹が鳴るのが聞こえた。

「あらやだ、痛みが無くなったら食欲が戻ってきたわ」

「それは良かった。元気になられた何よりの証拠ですね」

 僕はそう言って食事を老婦人へと差し出した。
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