女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

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第93話【リリスの臨時受付嬢講義①】

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「はあ……。
 結局、断われなかったわね。
 権力を傘に着て頼み込むのはずるいと思わない?」

 交渉の後で明日からの流れを確認した僕達は一旦宿に戻り夕食を食べながら明日からの事を話し合っていた。

「とりあえず2週間ほど斡旋ギルドに行って、向こうが選んだ受付嬢候補の娘に基礎を叩き込んで第三番窓口の担当が出来るように仕込んでくるわね。
 で、ナオキの治療補助については……」

 リリスがそう言いながら隣で黙々と食事を食べるナナリーを見てまた、ため息をついた。

「まあ、あの条件ですぐに差し出せる人材といえばあなたしか居ないわよね……。
 どうこう言っても始まらないからとりあえず私が気をつけている事や明日からの患者さんの情報を教えるから今日はこの宿に泊まりなさい。
 簡単に考えてたらナオキに迷惑ばかりかかるだけでなくて患者さんにも迷惑がかかる事をしっかりと肝に銘じて真剣にやってね」

 ナナリーはリリスの言葉に食べる手を止めてコクコクと頷く。

「まあ、僕の方は毎日2~3人くらいだしロギスさんも同行する事が多いから多分大丈夫なんじゃないかな?
 もちろん今までリリスが居てくれたからスムーズにいってたのは十分理解してるつもりだけどね」

「母が無茶を言ってすみません。
 私が受付嬢の資格を持っていれば話は早かったのでしょうけど、まだまだあと2~3年は今の案内所で経験を積むように言われてるので今回は『せめてリリスさんの代わりにナオキ様の手助けをしなさい』と言いつけられて来たのです」

 ナナリーは申し訳ないといった感じで頭を下げながら説明を受ける。

「出来るだけ早く仕事を叩き込んでくるから無理をしないようにしてね。
 何かトラブルがあったら斡旋ギルドに居るからすぐに連絡してくださいね」

 リリスはそう言うと自分の手帳から必要な情報をメモに書き写してナナリーに渡した。

「じゃあ、とりあえず明日からお願いするわね」

「私も同じ部屋に泊まって良いんですか?」

「あなたは隣の部屋を取ったでしょ!」

「あははは。やっぱりそうですよね。明日の準備をして寝るようにします」

 ナナリーはそう言うと隣の部屋に入っていった。

「さて、ナオキにもきちんと話しておかないといけないわね」

 リリスは自分達の部屋に入るとドアを閉めてから僕に座るように言ってから紅茶を淹れてくれ、僕の向かい側に腰をおろすとゆっくりと話を始めた。

「今回の件は斡旋ギルドの受付嬢のひとりとその相手が結婚する事から始まったようだけど、本当の事は分かったものじゃないわよ。
 あのギルマスのやる事だからまだ本気でナオキの事を狙ってるのかも知れないしナオキだけじゃなく私も取り込もうとしているのかも知れない。
 とにかく知り合いだからとナナリーとは必要以上にふたりきりにならない事ね」

「なんだよ。そんな事を心配していたのか?
 アーリーさんはどうだか分からないけどナナリーさんはリリスが居るからともうとっくに僕の事は諦めてるだろう?」

「だとしたら良いけどね」

 リリスは僕の言葉を不満げに返すと明日の準備を済ませてからいつもの治癒魔法を掛けて欲しいと言って僕の前に座った。

「――完全回復ヒール

 怪我や病気ではないが身体の不調や肌の不調も治す治癒魔法を仕事後のマッサージを受けるように処置してもらうリリスの肌はいきいきしており髪の毛も艶々だった。

「いつもありがとね。
 これで今夜もぐっすりと眠れそうよ」

 リリスはそう言うと「お先に」といつもの定位置に潜り込んで休んだ。

   *   *   *

「――おはようこざいます」

 次の日の朝、僕達が朝食を食べ終わろうとしている頃にナナリーがいつものように横の椅子に座り挨拶をしてきた。

「もう少し早く起きた方が良いわよ」

 リリスの言葉に「ごめんなさい。仕事内容の確認をしていたら寝るのが遅くなって寝坊をしてしまいました」とナナリーが謝る。

「熱心なのは良いけど時間の遅刻は相手に与える印象の中でも一番初めに与える悪い印象になるから気をつけてね」

「はい。ごめんなさい」

 しゅんとなるナナリーに僕が「まあ、患者さんの約束に遅れた訳じゃ無いんだから」とフォローをする。

「私は今から斡旋ギルドへ向かうから、ナナリーは朝食後にナオキと一緒に薬師ギルドへ行ってロギスさんに案内をして貰ってね。
 何か不測の事態があれば連絡をお願いね」

 食事を終えたリリスはそう言うと椅子から立ち上がりカバンを持って「じゃあ行ってくるわね」と宿を出た。

 僕はナナリーが朝食を食べ終わるのを待ってから薬師ギルドへと向かう事にした。

   *   *   *

 ――からんからん。

 リリスは斡旋ギルドの表口を開けて中に入る。

 もちろんギルドには職員が入る専用の裏口があるが、リリスにはまだ使用の許可が出ていないので表から入るしか無かった。

「すみません。ギルドマスターは居ますか?」

 まだ早い時間だったので職員もまばらで棚の整理をする者や床の掃除をする者など各自が自分に割り当てられている仕事を行っていた。

「アーリー様ですか?
 多分執務室にいらっしゃると思いますが、あなたみたいな人がアーリー様に直接用件があるとは思えないですが何のご要件ですか?」

 リリスが来る事はまだ周知されていなかったらしく、ギルマスを指名するリリスを怪訝そうな表情で用件を聞く女性がいきなり後ろから叩かれた。

 ――パシン。

「いったーい。
 誰ですか!? いきなり後ろから叩いたのは?」

 彼女が振り向くとくるくると丸めた書類を持ち、コメカミを引きつらせながら仁王立ちするアーリーの姿がそこにあった。
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