女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
126 / 159

第126話【チート能力者の悪意③】

しおりを挟む
 ――話は少し遡る。

「俺様こそが真の王になるべきなのだよ」

 町の中心部から少しばかり外れた一軒の家の中でひとりの男が周りにそう宣言する。

「そのとおりでございます。神の目を持つ神の代行者『ゴッツァイ』様」

 その場には数十人からの男女が頭を下げてゴッツァイの前にひざまずいている。

「俺様の占いによると別の町でどんな怪我や病気も治るとまがい物の治療で民衆を洗脳する悪魔のような治癒士がこの平和な王都へと入り込んでいる。
 その者は今まさに人気だけで能力のない女王と結託して王国民を洗脳しようとしている。
 これに異を唱える事が出来るのは神の目を持つこの俺様しかいないだろう!」

 ゴッツァイがそう叫んで右手を突き上げると周りの人間達も同様に右手を突き上げて「そうだ!そうだ!」と同調する。

「あのような正体の分からない野郎を取り上げる今の女王には早々にご退場して貰って俺様の未来を見る能力でこの国をもっと豊かに、もっと国を拡大させてやろうと思うがどうだ?」

「お願いします! ゴッツァイ様の能力でこの腐りきった国に神の祝福を授けてください!」

 その場に居る者たちはゴッツァイの能力で洗脳状態に陥っていた。彼が黒と言えばそれが例え白であっても黒と答え、本来ならば間違っている事さえ正しいと信じ込んでしまう『ゴッツァイ神格化洗脳』である。

 初めはただの占い師だったゴッツァイだが、神から授かった目は見た者の不安を読み取る事が出来たのでそれを指摘し、さらに煽る事により彼の言う事が全て正しいと信じ込んでしまうように洗脳されていったのだ。

「では作戦を授けよう。ここに集まっている者たち以外にも数多くの同士が王都中に散らばっていることだろう。
 今回の作戦に適している人材を選別し、俺様からの勅命――つまり神命を授けよう。
 それを確実に実行出来れば神の代行者である俺様の直属幹部に……つまり神の下僕となれる事を約束しよう!」

「うおおおおお!!
 ゴッツァイ様! バンザイ!」

 その場に居た者たちはそう叫びながら我こそはと作戦への参加を表明した。

   *   *   *

「――女王様!!」

 僕は思わずそう叫んだが突然の事に何が起きたか分からず先程まで紅茶を出してくれたメイドを見ると氷のような冷たい目で倒れた女王を見下ろしていた。

「この国のために……」

 女王を刺したメイドはそう呟くと懐から取り出したもう一本のナイフを自らの胸に突き立てた。

「ああ――これで私もゴッツァイ様のお役に立てて神の元へ……」

 そう呟きながらその場に倒れ込んだ。

「早く治療を!」

 先に正気に戻り動いたのはリリスだった。

「ふたり同時には治療は出来ないけど女王様は絶対に助けなければならない。
 だけど自決したメイドも行為の真相を知るためには死なせる訳にはいかないわ」

 リリスの言葉に僕はふたりに対して状態を確認するが重症のメイドに対して女王陛下は即死の状態だった。

「仕方ない、メイドを回復させてから女王陛下を蘇生させる!
 リリスは彼女を治療したらすぐに自決をさせないように拘束をしてくれ!」

 僕はそうリリスに叫ぶと倒れているメイドを仰向けにしてすぐに治癒魔法をかけた。

「――完全治癒ヒール

 時間が惜しいのでいつもより早いペースでの魔力注入を進める。

「――よし! このくらいで良いだろう」

 重症だったメイドの傷が塞がったのを確認した僕はまだ気を失っている彼女をリリスに頼み女王陛下の蘇生を試みた。

「緊急事態なんで許可は取ってないですけど後で痴漢罪で死刑とか言わないでくださいね」

「そんなこと言う訳がないでしょ!」

 僕の呟きに突っ込むリリスに僕はひとつ大きく深呼吸をして女王陛下の胸に両手をあてて力強く魔法を唱えた。

「――完全治癒ヒール

 魔力の注入が始まると凄い勢いで魔力を吸い取られる感覚がする。

(蘇生魔法はこれで3度め、1度目はリリスに、2度めはオクリ村のミナさんに……。
 リリスの時は気が動転して魔力の注入をやりすぎて後遺症を治すのに一騒動あったよな。
 ミナさんの時は冷静に処置をしたけど魔力量がギリギリだったから倒れたっけ。
 今回もかなりきつい状態になるだろうけど、この人は国にとって必要な人だからなんとしてでも蘇生を成功させないと……)

 どれくらいの時間がたったのだろうか、蘇生魔法に必要な僕の中の魔力はほぼ尽きているのに蘇生が終わらない。

「陛下! 陛下!」

 女王陛下かのじょの側近が部屋に入ってくるなり蘇生中の彼女を抱き起こそうとした。

「駄目です! 今は蘇生中ですので触らないでください!」

 女王陛下に触れようとした側近をリリスが大声で静止する。

 先に治療した実行犯のメイドを拘束したリリスが部屋を飛び出して側近の者を呼んできていたのだ。

「しかし……」

 戸惑う側近の女性を静止したリリスはまだ何か言いたげな彼女に「こっちに拘束しているのが陛下を刺した犯人です。彼女も陛下を刺した後に自らの胸を刺して自決をしようとしましたがナオキの治癒魔法で一命を取りとめています」と部屋で何が起こったかの説明をした。

「なんとそんな事が……」

 側近の女性は信じられないとばかりにまだ意識のないメイドを見つめる。

 やがて女王陛下の身体が強く光を帯びて治癒魔法も最後の段階に入ろうとしていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...