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第10話 ギルマスの謝罪と父との遭遇
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次の日、私はポーションの納品のために馬車でギルドを訪れていた。
――からんからん。
私は納品報告のためにまっすぐに受付に向かって歩いていると私の姿を見つけた馴染の受付嬢が声をかけてきた。
「あ、サクラさん。体調のほうは大丈夫ですか?」
当然のことながら受付嬢にも私が倒れた話は知れておりポーションの納品の事よりも先に体調の心配をされた。
「もう大丈夫です。それよりもポーションの納品に来ましたのでギルドマスターとの面会は出来ますか?」
「あ、はい。すぐに確認してきますね」
受けさせてはそう言って執務室へと走っていく。
(そんなに慌てなくても良いんだけどな)
その後ろ姿を見ながら私が考えていると受付嬢はすぐに戻って来て私とを執務室へと案内してくれた。
「失礼します」
私が執務室へ入るとギルドマスターの表情が強張るのが分かったが、きっと父が何か言ったのだろうと予想をしたので私はそれに気がつかないふりをして依頼完了の報告をした。
「今回は無理を言ってすまなかったな、話はクナラから聞いたが相当に無理をしたようだな。言い忘れたこちらが悪いのだが難しければ連絡をしてくれれば出来ている数だけ納品して残りは出来次第で良かったのだがな。それに、聞いたところによるとクナラが久しぶりに調薬をしたそうじゃないか。腕は鈍ってなかったか?」
やはり父が説明をしていたようでギルドマスターは終始低姿勢で依頼完了報告書にサインをしてくれた。
「それで、報酬に関してなんですが。今回のポーション作成の半分は父が調薬したものですので報酬の半分は父に渡して貰えると助かります」
私がそう言ってから席を立とうとすると慌ててギルドマスターはそれを止める。
「いや、クナラからは今回の報酬は満額サクラ君へ渡して欲しいと念を押されているんだよ。だから君が全額受け取って欲しい。そして、どうしても半分渡したいならば君から直接渡してくれないか?」
どうもこのギルドマスターは父には弱いのか私の意見より父の意見を優先しているようだった。
「――わかりました。その代わりひとつ教えて貰えますか?」
「な、なんだね?」
「先日、父がこちらに来た時に治癒院の開業申請をすると言っていたと思いますが許可を出されたのですよね?」
「あ、ああ。治癒院は現在足りていないからな。開業出来る実力があれば許可は出すのは当たり前だ」
「そうですか。父は本当に治癒魔法士の資格をとってきたんですね。それで何処に院を構えると言っていましたか?」
「それを聞いてどうするんだね?」
「出来るだけ近づかないようにしたいと思っています。あの人は私の父親ではありますが私を捨てて修行に行った人であり、治癒魔法士となった今は私の商売敵とも言える存在になったからです」
「そうか。ならば大変申し訳ない事をした」
「どういう事ですか?」
「帰ってみれば分かる。俺からはそれしか言えん」
「なんですかそれ!? まさか家の工房を潰して治癒院にするとかじゃないですよね!?」
「心配するな。それだけは絶対にない」
「なら、何なんですか!」
意味がわからずに私はギルドマスターに説明を求めるが彼は頑なにそれを拒んだ。
「話は終わりだ。とにかく帰ることだな。暫く急ぎの依頼は控えるから体調を整えておいてくれ、流行り風邪が蔓延してきたら忙しくなるだろうからな」
ギルドマスターは一方的にそう告げると私を執務室から追い出したのだった。
◇◇◇
「なんなのよ、もう」
私はギルドマスターの態度に不満を持ちながらも依頼が完了した事を実感することで落ち着きを取り戻していく。
「とりあえず帰れば分かるのよね?」
私は馬車を操って工房へ向けて進みながらギルドマスターの発言について考えてみた。
(とりあえず、今の工房を治癒院にするつもりはないのよね? と、なると何処か別の建物を借りる事になるのよね。あまり近くじゃなければいいけど……)
私がそう考えながら工房の前まで来ると数年ぶりに見る父の姿があった。
(なんでここに居るのか知らないけどちょうど良かったわ。さっさと報酬の半分を渡してお引き取りいただく事にしよう)
勝手に出て行った父に対して怒りの気持ちもあったが納品用のポーションを代わりに作ってくれた事もあっていきなり殴りかかる事はやめておいたのだ。
「お帰りなさいませ」
馬車から降りた私との姿を見つけたロイルが私を迎え入れてくれる。
「ええ、ただいま。ところでどうしてこの人がここに居るわけ?」
いろいろな感情が混ざって父のことを『この人』と言ってしまった私だが父は特に気にした風もなく私の次の言葉をじっと待っているようだった。
「工房の前に突っ立ってられたら迷惑でしょ! どうせ話があるんでしょうから中に入りたければさっさと入りなさいよ」
私は父の顔をまともに見ないままにそう言って父の横を通り抜けて先に工房へと入って行く。
「――立派になったな」
すれ違いざまに久しぶりに聞く父の声が耳に残った。
――からんからん。
私は納品報告のためにまっすぐに受付に向かって歩いていると私の姿を見つけた馴染の受付嬢が声をかけてきた。
「あ、サクラさん。体調のほうは大丈夫ですか?」
当然のことながら受付嬢にも私が倒れた話は知れておりポーションの納品の事よりも先に体調の心配をされた。
「もう大丈夫です。それよりもポーションの納品に来ましたのでギルドマスターとの面会は出来ますか?」
「あ、はい。すぐに確認してきますね」
受けさせてはそう言って執務室へと走っていく。
(そんなに慌てなくても良いんだけどな)
その後ろ姿を見ながら私が考えていると受付嬢はすぐに戻って来て私とを執務室へと案内してくれた。
「失礼します」
私が執務室へ入るとギルドマスターの表情が強張るのが分かったが、きっと父が何か言ったのだろうと予想をしたので私はそれに気がつかないふりをして依頼完了の報告をした。
「今回は無理を言ってすまなかったな、話はクナラから聞いたが相当に無理をしたようだな。言い忘れたこちらが悪いのだが難しければ連絡をしてくれれば出来ている数だけ納品して残りは出来次第で良かったのだがな。それに、聞いたところによるとクナラが久しぶりに調薬をしたそうじゃないか。腕は鈍ってなかったか?」
やはり父が説明をしていたようでギルドマスターは終始低姿勢で依頼完了報告書にサインをしてくれた。
「それで、報酬に関してなんですが。今回のポーション作成の半分は父が調薬したものですので報酬の半分は父に渡して貰えると助かります」
私がそう言ってから席を立とうとすると慌ててギルドマスターはそれを止める。
「いや、クナラからは今回の報酬は満額サクラ君へ渡して欲しいと念を押されているんだよ。だから君が全額受け取って欲しい。そして、どうしても半分渡したいならば君から直接渡してくれないか?」
どうもこのギルドマスターは父には弱いのか私の意見より父の意見を優先しているようだった。
「――わかりました。その代わりひとつ教えて貰えますか?」
「な、なんだね?」
「先日、父がこちらに来た時に治癒院の開業申請をすると言っていたと思いますが許可を出されたのですよね?」
「あ、ああ。治癒院は現在足りていないからな。開業出来る実力があれば許可は出すのは当たり前だ」
「そうですか。父は本当に治癒魔法士の資格をとってきたんですね。それで何処に院を構えると言っていましたか?」
「それを聞いてどうするんだね?」
「出来るだけ近づかないようにしたいと思っています。あの人は私の父親ではありますが私を捨てて修行に行った人であり、治癒魔法士となった今は私の商売敵とも言える存在になったからです」
「そうか。ならば大変申し訳ない事をした」
「どういう事ですか?」
「帰ってみれば分かる。俺からはそれしか言えん」
「なんですかそれ!? まさか家の工房を潰して治癒院にするとかじゃないですよね!?」
「心配するな。それだけは絶対にない」
「なら、何なんですか!」
意味がわからずに私はギルドマスターに説明を求めるが彼は頑なにそれを拒んだ。
「話は終わりだ。とにかく帰ることだな。暫く急ぎの依頼は控えるから体調を整えておいてくれ、流行り風邪が蔓延してきたら忙しくなるだろうからな」
ギルドマスターは一方的にそう告げると私を執務室から追い出したのだった。
◇◇◇
「なんなのよ、もう」
私はギルドマスターの態度に不満を持ちながらも依頼が完了した事を実感することで落ち着きを取り戻していく。
「とりあえず帰れば分かるのよね?」
私は馬車を操って工房へ向けて進みながらギルドマスターの発言について考えてみた。
(とりあえず、今の工房を治癒院にするつもりはないのよね? と、なると何処か別の建物を借りる事になるのよね。あまり近くじゃなければいいけど……)
私がそう考えながら工房の前まで来ると数年ぶりに見る父の姿があった。
(なんでここに居るのか知らないけどちょうど良かったわ。さっさと報酬の半分を渡してお引き取りいただく事にしよう)
勝手に出て行った父に対して怒りの気持ちもあったが納品用のポーションを代わりに作ってくれた事もあっていきなり殴りかかる事はやめておいたのだ。
「お帰りなさいませ」
馬車から降りた私との姿を見つけたロイルが私を迎え入れてくれる。
「ええ、ただいま。ところでどうしてこの人がここに居るわけ?」
いろいろな感情が混ざって父のことを『この人』と言ってしまった私だが父は特に気にした風もなく私の次の言葉をじっと待っているようだった。
「工房の前に突っ立ってられたら迷惑でしょ! どうせ話があるんでしょうから中に入りたければさっさと入りなさいよ」
私は父の顔をまともに見ないままにそう言って父の横を通り抜けて先に工房へと入って行く。
「――立派になったな」
すれ違いざまに久しぶりに聞く父の声が耳に残った。
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