少女漫画の当て馬キャラと恋人になったけどキャラ変激しすぎませんか??

和泉臨音

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第三章 新隊員の選抜条件おかしくないですか??

第九話*side衛

 
「僕のまもるの良さが解らないなんて可哀想な奴だな。ああ、いや、そのまま理解しないでくれ。君の毒牙が衛に及ぶことがないから僕の部隊に呼んだのだから。それでいい。君はそのまま見た目が美しい花の蜜だけ吸っていてくれ」

 いつの間にか事務室にやってきていた一条寺少尉に俺は後ろから柔らかく抱き締められていた。

「おはよう、衛。元気になったみたいで良かった。心配していたんだよ」
「えっと、おはよう、ございます。ご心配をおかけしました」

 ふわりと香る甘い香りにスッと心が軽くなる。自分が思っていたよりもだいぶ緊張していたようだ。

「ははっ、頼まれてもムサ苦しい男になんぞ惚れはしないから安心しろ」
「それは良かった」

 ニコリと嫌味なほど綺麗に微笑む赤毛の麗人に対して、一条寺少尉も極上の笑みを返す。

 この赤毛の麗人は誰なのだろう? 聴き間違いでなければ「陽真」と少尉を呼び捨てにしていたけど。

「ゲッ、鮮血夜叉せんけつやしゃ!」

 今度はガチャりと扉の開く音が聞こえ、続く足音と共に五木いつき先輩の声がした。

「せんけつやしゃ? ……って妖魔殲滅せんめつ中に味方までなぶり殺して、その返り血を浴びた姿から名付けられたっていう、いわくつき隊員の名前では?」

 なぜ今その名前が? 五木先輩を見ようとしたが一条寺少尉にホールドされてしまい身動きが取れない。
 なんだろう。飼い猫を抱っこして離さない飼い主みたいな……そんな状態になっている。

「衛は何でも知っていて偉いな。そう、彼女がその鮮血夜叉だよ」

 かの、じょ? 鮮血、夜叉? え??

「人をそんなふざけた名前で呼ぶなっ! 五木、きみの首もはねてやろうか?」
「ヒィ、おい、隊長殿! これはどういうことなんだよ」
「おう、なんだなんだ、朝から盛り上がって……あっ、日凪もういいのか? あまり無理はするなよ」
「……おはようございます、皆様お揃いで…」

 俺が仕方なく借りてきた猫のように少尉の腕の中で大人しくしていれば、続々と夜蝶部隊の隊員たちが出勤してきた。

 そんな彼らを見れば一条寺少尉は名残惜しそうに俺から離れると赤毛の麗人の隣にたつ。
 俺は五木先輩、三枝先輩、四ツ谷よつやさんの隣に移動し、少尉たちと向かい合った。

「では、全員揃ったから改めて紹介しよう。今日付で夜蝶部隊所属となった百園薫子ももぞのかおるこ曹長だ。鮮血夜叉の噂は知ってると思うが、女性関係さえ問題がなければ成敗されることはないので安心してほしい」
「そういえば、仲間をったって話は本当なのか?」
「殺ってはいない。七分殺し位だ」
「なんだ。意外と優しいんだな」

 情報量が多すぎて処理しきれない俺の横で、三枝先輩は変なところに感心している。

「ただいま紹介にあずかった、百園薫子だ。正直男しかいないムサ苦しい部隊になんぞ来たくはなかったが、陽真もとい一条寺少尉には借りがあるため仕方なく所属することとなった」

 やっぱり陽真はるまと呼び捨てにしている。三枝先輩や五木先輩ですら苗字で呼んでいるのに……。

「……百園ももぞのサンは隊長の又従姉弟なんです。親戚ですので名前呼びなんですよ……」
「っ!? あ、え、そ、そうなんですね」

 いつの間にか俺の隣に立っていた四ツ谷さんが俺に説明をしてくれる。
 それにしてもなぜ俺の疑問が判ったんだろう。

 思わず四ツ谷さんを見れば、ふふっと力なく微笑まれる。

「……ちなみに百園サンは女性ですが、前の部隊で女子隊員を囲いハーレムを作り、尚且つ女子隊員に不埒な行動を常習的にしていた上官を数名病院送りにしたんです……」
「それで、鮮血夜叉ですか」

 目立たないようひっそり生きてきた俺からすれば、誰かのために戦える百園曹長は英雄に思える。

「……ええ、彼女も敵の多い方です。厄介者ばかり増えていきますね……」
「ハッ、敵が多いのはそもそもアイツが女ったらしすぎて節操がないからだろ!」
「五木先輩は百園曹長をご存知なのですか?」
「あはは、こいつ前にいた部隊で婚約までしてた彼女に「運命の人が現れたから」って振られてさ、その運命の人ってのが何を隠そう」
「バッ! 三枝! その話はするなっ!!」

 みなまで聞かずともなんとなく話が読めたので、三枝先輩に掴みかかる五木先輩がまるで大人と小学生の取っ組み合いみたいになっていたが、そっとしておくことにした。
 
 少尉たちを見やれば百園曹長は四ツ谷さんとなにやら書類を見ており、その横でやんわり微笑む一条寺少尉と目があったので、吸い寄せられるように近寄る。
 もちろん職務中なので過度な接触はしない。
 日常会話をするのに適切な位置に俺が立てば、少尉はそっと怪我をしている俺の腕を撫でた。

 
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