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第十三幕
しおりを挟むぴちょりと乳首の上をなんかがうごめいている。片方はぬるぬるしててもう一方は摘ままれてるみたいに痛い。ぐりぐりするな。魔物かな。やっぱさっきの夢か、なんだよ、どうせならあのまま死なせてくれよ。
うっすらと目を開けると俺の胸の上に茶髪の頭があった。薄暗かったせいもあって一瞬カイかと思ったが頭から伸びている肩や背筋が絶対にカイじゃない。
しっかり筋肉が盛り上がっていて厚みがある。彫刻みたいだ。
ぼんやりみていると俺の乳首を舐めまくっているのは魔物ではないと判った。なんとなくだが察しはついた。俺は死ぬ間際に、もしかしたら死んだ直後かもしれないが、大好きなイワンに抱かれる夢を見ているのだろう。
本当の俺は魔物に食われてるんだろうな。
「ふふ……馬鹿みたい」
俺の声は掠れてて、美声だと誉めてもらってるいつもの声からは考えられないほどのダミ声だ。これはあまりにも酷すぎる。しかもララに文句つけといて自分も結局これかよ。下半身に忠実とか笑える。
俺が笑っていれば、乳首から舌がはなれて緑の瞳が俺を見る。
あーほんとイワンって格好よいなぁ。
俺の乳首舐めてヨダレだらけの唇してたって無駄に格好良い。すき。
手が動いたのでイワンの頭をなでなでした。意外に髪の毛が柔らかい。はは、いい夢だなぁ。
そんな俺の手をとって、ちゅっと指先にキスを落とす。はーやばいね、格好良い。うちの団員でも敵わない色男っぷり。
「目が…覚めましたか?」
なんかさっきもそれ聞いた気がするけど。
「覚めたくない、このまま死にたい」
「なっ……」
「だって好きなイワンに殺されて死ぬとか最高じゃない、はは、セックスのおまけもつくとか、俺の妄想すごすぎ……」
「???! 好き?? シャクナさんが? 私を?」
イワンが顔を真っ赤にして俺を見ている。ちょっと俺、さすがにそれはないわー。
「そこはきっとそんな反応じゃなくてさ、こう、クールに「そうか」くらいじゃないとさ」
「いえ、そんな…そんな落ち着いてはいられません!!」
「えー、氷の壁のイメージは不動だよ。落ち着こうよ」
「ぐっ……」
イワンが真っ赤な顔で口をへの字に結んでいる姿がおかしくて、俺はケラケラ笑った。俺の妄想ひどすぎるな。もっと恰好良いんだぞイワンは。
「今の貴方だって氷の華とは程遠いじゃないですか」
「だってもう死んだ? 死ぬ? し、どうでもいい」
死ぬはずなのに身体はだるいしやたら眠い。はふっと欠伸をすればイワンが口に啄ばむようにキスしてきた。それがくすぐったくて俺はまたケラケラ笑う。ふふふ、楽しい。
「どうせならララのベッドの上じゃなくて雲の上とか、そんな突拍子のないとこのが楽しかったかもな」
そしたら死んだって実感できるだろうに。
「すみません。とっさのことでララさんに部屋を借りました。ここはその……色々揃っていて丁度良かったので」
「色々?」
「挿入のための潤滑油とか、痛みを抑える麻酔香とか……」
「随分具体的な設定だな。俺そんなことララから聞いた事あったっけ?」
「それは判りませんが、設定ではないと言うか…、たぶんシャクナさんは勘違いをしてるというか寝ぼけてるんだと思うんですが……」
「ん?」
「貴方は生きています」
キスをしてたので間近にイワンの顔があって、その緑の瞳がじっと俺を見つめている。
「ははっ何言ってんの? 俺、イワンに刺されて死んだだろ? 今思い出すだけでもぞくぞくする……はぁ…凄い、格好良かったんだぞイワン・レイグナー。死ぬかと思った。あ、違うか、殺されたんだった。俺死んでた」
「いえ、だから生きています。あれは魔物だけ殺す魔剣です。神器とも呼ばれていますが、俺と総隊長しか扱えない武器で、使用許可に少々手間取りました。間に合って良かった」
イワンが俺を抱きかかえて上半身を起こしてくれる。すればとぷりと尻から何か流れ出た。そしてなぜか支えてくれるイワンの腕が……熱い。
そう、あまりにも肌に感触や体温をしっかりと感じてしまい、ぽかんと俺はイワンを見上げた。
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