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本編
(30)誘い
しおりを挟む食事の席には全員揃っていた。
そこで俺は、レーヴンを王子として王宮に連れていきたいこと、任務は終わったがキルクハルグへの道中もグリムラフ、ホルフに同行してほしいことを伝えた。
俺の王子としての財源は本来レーヴンのための物なので、帰りの支払いはレーヴン持ちになってしまう可能性も伝えた。だが王子の護衛をすることには変わりないし、王宮から支払いはされるはずだ。
それに対してレーヴンは眉を寄せて複雑な顔をしていたが、グリムラフは「だったら10倍請求するねー!」とレーヴンに言い寄っていた。
俺の話の後、レーヴンは竜の加護を受けるつもりはない、と言った。
加護については俺は何も言うつもりは無かった。これからのレーヴンの人生だ、竜の加護は大きい力になる。
それに父上にお会いして、王子と認めていただいてから受ける方が、面倒なことにもならないだろうと思った。
エールックも落ち着いており、俺達と一緒にキルクハルグに戻ると言ってくれた。
ロアはルハルグ様に託すことになるのでここで別れることになる。それが判っているのかずっとホルフにくっついたままだった。
旅をしていて、全員でこんなに穏やかな食事をしたことはなかったように思う。
きっとそれは俺の気持ちの部分も大きくて、自分は王子だとみんなに偽っている罪悪感がなくなったからなのだろう。
グリムラフ達の話に、俺は久しぶりに自然に笑うことが出来た。
食事を終えて部屋に戻るとメモが置かれていた。
部屋割りは俺とエールックがそれぞれ二人部屋を一部屋づつ使い、レーヴン達が四人で一部屋を使う事になっている。今夜は一人で眠りたいと伝えると、みんなから心配顔をされたが押し切ることは出来た。
先ほど下に降りた時にはなかったものだったが、メモを見れば筆跡や内容から誰のものかはすぐにわかった。
そこには「二人だけで話がしたい」と書かれており、外に出てきてほしいと時間が指定されていた。
外は月明りもあるし、そんなに遠くに行かなければ問題ないだろう。
俺はそう判断して指定された時間になれば、もう寝ているかもしれないみんなを起こさないように静かに外に出た。
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