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3話 少年と神剣は出会う
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「眩しぃ! な、なに? 急になんで明るく?」
明るくなった部屋で困惑しながら部屋を見渡す。突然、光量が増えた事に部屋の様子が分からなかったディモだったが、徐々に目が慣れてくると部屋の様子が分かってきた。
部屋自体はかなり大きかったが、装飾品等はなにも置かれていなかった。ただ、部屋の中央には台座が設置されており、そこには一本の剣が突き刺さっていた。ディモはなにかに魅入られたように剣に近付くと小さく口ずさんだ。
「……。えっ? 今なにを僕は言ったの?」
ディモの小さな呟きに反応するように剣が突然輝き始める。そして光り輝いた状態がしばらく続くと点滅を始めた。
「こ、今度はなに?」
ディモが点滅している剣にゆっくりと近付くと、唐突に声が脳内に響いた。
『どの面下げて私に会いに来た!』
「えっ? な、なに? どこから声が?」
混乱した状態でディモが周りを見渡す。だが、そこには誰もおらず、部屋には自分しか居なかった。
『さっきから無視とは良い度胸だね! ああ? 泣き虫坊や!』
「ひょっとして剣が喋ってるの?」
『なにを言ってるんだい! 剣が喋る? そんな魔剣は聞いた事もないよ! そういえばさっきから身体が動かな……。ん? えっ? ぼ、坊や! 今の私の姿は!』
激しく点滅している剣から荒々しげな声が聞こえる。なんとか現状を理解したディモが剣に向かって問い掛ける。さらに激しく点滅しながら剣は喋っていたが、急に不安定な点滅になると焦ったように問い掛けてきたのでしょっちょくに答える。
「えっ? 剣ですけど?」
『やっぱりかよ! よく見れば坊やはアイツじゃなさそうだね。見た目が若すぎる。それで、あんた名前は?』
「ディモです。今は、かなりピンチな状態で生死の境にいます。出来れば助けて欲しいです……」
剣からの質問にディモは名乗りながら、自分の窮地を切々と訴えるのだった。
◇□◇□◇□
『はっはっは。なるほどねえ。魔族に襲われてるんだ。それは災難だね』
「笑い事じゃないですよ! このままだったら死ぬんですからね!」
『あんたはね』
「あなたも破壊されますよ!」
必死な説明を楽しそうに聞いていた剣にディモが切れる! その様子すらも楽しそうにしていた剣だったが、急に真剣な口調になると話し出した。
『ディモ。あんたは剣を握ったことはあるかい?』
「なんです急に? 使った事はありますよ」
『だったら、私を抜きな! 理由はよく分からないが、私を持ったら使いこなせるはずだ! 早くしな!』
剣の言葉が終わると同時に岩の扉がゆっくりと開く。そこから魔族男が口元をニヤケた状態で入ってきた。
「よう。俺の出迎えご苦労。後は血の雨を降らせてくれたら完璧だ。けっへっへっへ」
「うっ! うわぁぁぁぁ! で、出た!」
その場で腰が抜けた状態になったディモは顔面蒼白で後ずさりをする。台座の近くまで下がり、背中に台座が当たった状態で震えてるのを見て、魔族男がつまらなさそうな顔になる。
「ちっ! そこまで無様だと興がそがれるな。おい。お前等が好きにしろ。それを楽しく見学するわ。一番良い声をあいつから引き出した奴には褒美をやるぞ」
魔族男の声に後ろにいた魔物達が歓声を上げる。その大量の視線に晒されたディモは、震えながら涙を浮かべて台座に乗り上げたようになる。その姿に魔物達は嗜虐心を刺激されたようで、分かりやすく威嚇しながらわざと徐々に近付く。
「やめて! 来ないで! お願いだから! 謝るから!」
『はっはっは。謝っても無駄だろ。それよりも体勢としては、剣を抜きやすいと思うけどね』
のんきな声が脳に響く。その声に無意識に反応するように剣を抜いたディモを魔物達が狂喜乱舞しながら襲いかかってきた。
「おぉ! ちょっとはやる気になったようだな。そのまま普通に殺されるのはつまらないからな。少しは抵抗してもらわないとな。おい! お前等! 手足はやるから、それ以外は残せよ! ぎゃはっはっは!」
下品に笑いながら魔族男が舌なめずりをする。そんな様子を絶望した表情で見ていたディモだったが、剣が話しかけてきている事に気付いた。
『おい! 話を聞け! お前が持っている剣は一流の剣士だった私だ。なぜか剣になっているが、お前が許可してくれたら私が身体を操って代わりに戦ってやる』
「お願いします! ここから逃げ出すことができるなら、なんでもしますから!」
『よし! 契約成立だ』
再び剣が輝き出すとディモを中心として魔方陣が形成される。あまりの輝きに魔物達の足が止まり、魔族男も興味深そうに眺める。魔方陣と光りが消え去った後には、みっともなく取り乱していた少年ではなく鋭い目つきをした剣士の表情になっていた。
「ほう。さっきとはまるで別人だな」
「当たり前だ。さっさと襲って来なよ。それても勢いだけかい? はっ! 相変わらずの魔族は口先だけだね」
「はっはっは! よく言った! おい! さっきの訂正だ! 頭だけ俺のところに持ってこい! なめた口を利いたガキは俺が最後に踏み潰してやる」
ディモの挑発に、魔族男は顎をシャクって魔物達に攻撃をするように命令する。この部屋に入ってきた魔物の数は三〇体ほどで、先ほどまで剣が刺さっていた台座を中心にディモを取り囲み襲いかかってくるのだった。
明るくなった部屋で困惑しながら部屋を見渡す。突然、光量が増えた事に部屋の様子が分からなかったディモだったが、徐々に目が慣れてくると部屋の様子が分かってきた。
部屋自体はかなり大きかったが、装飾品等はなにも置かれていなかった。ただ、部屋の中央には台座が設置されており、そこには一本の剣が突き刺さっていた。ディモはなにかに魅入られたように剣に近付くと小さく口ずさんだ。
「……。えっ? 今なにを僕は言ったの?」
ディモの小さな呟きに反応するように剣が突然輝き始める。そして光り輝いた状態がしばらく続くと点滅を始めた。
「こ、今度はなに?」
ディモが点滅している剣にゆっくりと近付くと、唐突に声が脳内に響いた。
『どの面下げて私に会いに来た!』
「えっ? な、なに? どこから声が?」
混乱した状態でディモが周りを見渡す。だが、そこには誰もおらず、部屋には自分しか居なかった。
『さっきから無視とは良い度胸だね! ああ? 泣き虫坊や!』
「ひょっとして剣が喋ってるの?」
『なにを言ってるんだい! 剣が喋る? そんな魔剣は聞いた事もないよ! そういえばさっきから身体が動かな……。ん? えっ? ぼ、坊や! 今の私の姿は!』
激しく点滅している剣から荒々しげな声が聞こえる。なんとか現状を理解したディモが剣に向かって問い掛ける。さらに激しく点滅しながら剣は喋っていたが、急に不安定な点滅になると焦ったように問い掛けてきたのでしょっちょくに答える。
「えっ? 剣ですけど?」
『やっぱりかよ! よく見れば坊やはアイツじゃなさそうだね。見た目が若すぎる。それで、あんた名前は?』
「ディモです。今は、かなりピンチな状態で生死の境にいます。出来れば助けて欲しいです……」
剣からの質問にディモは名乗りながら、自分の窮地を切々と訴えるのだった。
◇□◇□◇□
『はっはっは。なるほどねえ。魔族に襲われてるんだ。それは災難だね』
「笑い事じゃないですよ! このままだったら死ぬんですからね!」
『あんたはね』
「あなたも破壊されますよ!」
必死な説明を楽しそうに聞いていた剣にディモが切れる! その様子すらも楽しそうにしていた剣だったが、急に真剣な口調になると話し出した。
『ディモ。あんたは剣を握ったことはあるかい?』
「なんです急に? 使った事はありますよ」
『だったら、私を抜きな! 理由はよく分からないが、私を持ったら使いこなせるはずだ! 早くしな!』
剣の言葉が終わると同時に岩の扉がゆっくりと開く。そこから魔族男が口元をニヤケた状態で入ってきた。
「よう。俺の出迎えご苦労。後は血の雨を降らせてくれたら完璧だ。けっへっへっへ」
「うっ! うわぁぁぁぁ! で、出た!」
その場で腰が抜けた状態になったディモは顔面蒼白で後ずさりをする。台座の近くまで下がり、背中に台座が当たった状態で震えてるのを見て、魔族男がつまらなさそうな顔になる。
「ちっ! そこまで無様だと興がそがれるな。おい。お前等が好きにしろ。それを楽しく見学するわ。一番良い声をあいつから引き出した奴には褒美をやるぞ」
魔族男の声に後ろにいた魔物達が歓声を上げる。その大量の視線に晒されたディモは、震えながら涙を浮かべて台座に乗り上げたようになる。その姿に魔物達は嗜虐心を刺激されたようで、分かりやすく威嚇しながらわざと徐々に近付く。
「やめて! 来ないで! お願いだから! 謝るから!」
『はっはっは。謝っても無駄だろ。それよりも体勢としては、剣を抜きやすいと思うけどね』
のんきな声が脳に響く。その声に無意識に反応するように剣を抜いたディモを魔物達が狂喜乱舞しながら襲いかかってきた。
「おぉ! ちょっとはやる気になったようだな。そのまま普通に殺されるのはつまらないからな。少しは抵抗してもらわないとな。おい! お前等! 手足はやるから、それ以外は残せよ! ぎゃはっはっは!」
下品に笑いながら魔族男が舌なめずりをする。そんな様子を絶望した表情で見ていたディモだったが、剣が話しかけてきている事に気付いた。
『おい! 話を聞け! お前が持っている剣は一流の剣士だった私だ。なぜか剣になっているが、お前が許可してくれたら私が身体を操って代わりに戦ってやる』
「お願いします! ここから逃げ出すことができるなら、なんでもしますから!」
『よし! 契約成立だ』
再び剣が輝き出すとディモを中心として魔方陣が形成される。あまりの輝きに魔物達の足が止まり、魔族男も興味深そうに眺める。魔方陣と光りが消え去った後には、みっともなく取り乱していた少年ではなく鋭い目つきをした剣士の表情になっていた。
「ほう。さっきとはまるで別人だな」
「当たり前だ。さっさと襲って来なよ。それても勢いだけかい? はっ! 相変わらずの魔族は口先だけだね」
「はっはっは! よく言った! おい! さっきの訂正だ! 頭だけ俺のところに持ってこい! なめた口を利いたガキは俺が最後に踏み潰してやる」
ディモの挑発に、魔族男は顎をシャクって魔物達に攻撃をするように命令する。この部屋に入ってきた魔物の数は三〇体ほどで、先ほどまで剣が刺さっていた台座を中心にディモを取り囲み襲いかかってくるのだった。
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