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29話 魔石が生まれ、トラブルも生まれる
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ディモがよろず屋で購入した調味料をヘレーナに見せながら説明していると、身体に違和感を感じた。それが魔石を生み出すタイミングだと知っているディモは、いつものようにポケットからハンカチを出すとベッドの上に置いた。
「急にどうしたんだい? それにディモの魔力が……。あっ! 魔石が生まれるのかい?」
「そうだよ! いつもはクズ魔石で数が多いからハンカチの上に出すようにしてるんだよ。たまに良いのが出るから、それはお姉ちゃんにあげるね」
「ディモが出した魔石にクズ魔石なんてないよ。どんな魔石が出ても、お姉ちゃんはもらうからね!」
ヘレーナの言葉にディモは嬉しそうに頷く。そして身体を巡る魔力が右手に集中してきた事を感じて、ハンカチの上に手をかざしているとヘレーナが手を重ねてきた。
「お姉ちゃん?」
「ん? 私が魔力を流したらどうなるかなって? ディモと手をつなぎたいってのもあるけどね」
首を傾げながら確認してくるディモにヘレーナが軽い感じで返事をする。ディモとヘレーナの魔力が混ざり合い、部屋に不思議な色が満ち溢れる。そして、今までよりも大きな光が部屋中を照らすと、あまりの眩しさに二人は思わず目をつぶってしまった。
「すごい明るさだったね。えっ?」
「どうしたんだい? なにか……。おぉ、これは凄い魔石だね」
目を開けたディモがハンカチの上に出来た魔石に視線を向けると、そこにはアーモンド形をした小指ほどの魔石が転がっていた。ルビーと水晶を合体させたよう形状で赤色をしており、今まで生み出してきた中では最大かつ最高の輝きを放つ魔石だった。
「凄い……。凄いよ! お姉ちゃん! こんな魔石を生み出した事も見た事もないや!」
「お姉ちゃんも、このクラスの魔石はあまり見た事ないね。それにしても一日一回しかディモが魔石を生み出せないのが残念だね。何度も出来れば色々と試せるのに」
「また、明日試そうよ。ところで、さっきは魔力に属性を持たせたの? 僕が生み出す魔石は無属性がほとんどだけど、この色だったら間違いなく火属性ませきだよね!」
ヘレーナの手を取りつつ、ベッドの上で何度も飛び上がりながら興奮した表情でディモが叫ぶ。そんな様子を嬉しそうに見ながらヘレーナは答えた。
「確かに、さっきは魔力に火属性を意識して注いだよ。私の得意な属性が火だからね」
「明日は水属性を試してみようよ! 上手くいけば水属性魔石を買わなくても、自分で作れるかもしれないよ! 旅の途中で水不足に悩まなくて美味しいご飯がいっぱい作れるよ! やったね! お姉ちゃん!」
「魔石を生み出す能力も二人が協力すれば属性が付与できるのも凄い話なのに、料理の話が出てくるのはさすがディモだね。それに、もう出来た気分になっている顔も可愛いよぉぉぉぉ」
二人でベッドの上で飛び跳ねながら、アメーリエが呼びに来るまで楽しんでいた。しばらく喜びを爆発させていると静かに扉が開いてアメーリエが入ってきた。
「お客様。申し訳ありません。ベッドの上で飛び跳ねるのは隣のお客様にも迷惑が掛かりますのでご遠慮ください」
「ごめんなさい! ちょっと嬉しい事があって……。気を付けます」
「……。次から気を付けてね。うちみたいに優しい宿屋じゃない場合もあるよ。後、ご飯の準備が出来たよ」
腰に手を当ててながらアメーリエが注意をしてきた。小さくなりながら謝罪するディモの様子に反省している事を感じたアメーリエは軽くため息を吐くと、いつもの砕けた口調で再度注意をするのだった。そして、二人は夕食の準備が整ったとの話に部屋を出て一階の食堂に向かう。
「森の安らぎ亭は食事が美味しんだよね。楽しみにしてるんだよ!」
「ディモがこの宿を選んだのも美味しい物が食べられるのがあるからね。不味かったら承知しないよ」
「そんな わけないでしょ! 間違いなく美味しいから!」
ヘレーナの脅しにアメーリエが頬を膨らませながら二人をテーブルに案内する。着席した二人に果実水とエールを手渡し、ナッツが入ったお皿をテーブルに置いた。
「このナッツは私からのサービスだよ」
「気が利くじゃないかい。料理も楽しみにしておいてやるよ」
「もう。お姉ちゃんはそんな言い方して。アメーリエさん。本当に楽しみにしてるからね!」
「ここかぁぁぁ! ここに俺の弟を襲った奴が居るらしいなぁぁぁ!」
乾杯をしてナッツを食べながら夕食が出てくるのを楽しみにしていたディモとヘレーナの耳に、宿屋の外から耳障りな大声が聞こえてきた。そして、食堂に大量の男達がなだれ込み、その中の一人がヘレーナを指さして叫んだ。
「あっ! あいつだ! 兄貴! あいつだよ。俺をひどい目にあわせたのは!」
「んー。誰だっけ? 全く覚えてないねえ。あっ! アメーリエ! エールをもう三杯持ってきておくれ」
「えっ? な、なに? お客様。店の中で暴れるのは……。きゃぁぁ」
男から指さされたヘレーナは相手が誰だか分かっていないようで、騒動に気付いて慌てて厨房から飛び出してきたアメーリエに気にする事なく注文をしようとする。ただ事ではない店の雰囲気に気圧されながらも、騒いでいる男達に注意をしようとしたアメーリエだったが、思いっきり突き飛ばされてしまった。
「兄貴。ここは例の宿屋ですぜ? どうせなら……」
「おう! それはいいな。ついでのやっちまうか。女も二人いるから楽しめそうだしな」
ヘレーナに無視された男が兄貴と呼んだ男に下品な顔で話しかける。話の内容を理解した男はいやらしく笑うと、ヘレーナとアメーリエを全身なめるように見て、舌なめずりをするのだった。
「急にどうしたんだい? それにディモの魔力が……。あっ! 魔石が生まれるのかい?」
「そうだよ! いつもはクズ魔石で数が多いからハンカチの上に出すようにしてるんだよ。たまに良いのが出るから、それはお姉ちゃんにあげるね」
「ディモが出した魔石にクズ魔石なんてないよ。どんな魔石が出ても、お姉ちゃんはもらうからね!」
ヘレーナの言葉にディモは嬉しそうに頷く。そして身体を巡る魔力が右手に集中してきた事を感じて、ハンカチの上に手をかざしているとヘレーナが手を重ねてきた。
「お姉ちゃん?」
「ん? 私が魔力を流したらどうなるかなって? ディモと手をつなぎたいってのもあるけどね」
首を傾げながら確認してくるディモにヘレーナが軽い感じで返事をする。ディモとヘレーナの魔力が混ざり合い、部屋に不思議な色が満ち溢れる。そして、今までよりも大きな光が部屋中を照らすと、あまりの眩しさに二人は思わず目をつぶってしまった。
「すごい明るさだったね。えっ?」
「どうしたんだい? なにか……。おぉ、これは凄い魔石だね」
目を開けたディモがハンカチの上に出来た魔石に視線を向けると、そこにはアーモンド形をした小指ほどの魔石が転がっていた。ルビーと水晶を合体させたよう形状で赤色をしており、今まで生み出してきた中では最大かつ最高の輝きを放つ魔石だった。
「凄い……。凄いよ! お姉ちゃん! こんな魔石を生み出した事も見た事もないや!」
「お姉ちゃんも、このクラスの魔石はあまり見た事ないね。それにしても一日一回しかディモが魔石を生み出せないのが残念だね。何度も出来れば色々と試せるのに」
「また、明日試そうよ。ところで、さっきは魔力に属性を持たせたの? 僕が生み出す魔石は無属性がほとんどだけど、この色だったら間違いなく火属性ませきだよね!」
ヘレーナの手を取りつつ、ベッドの上で何度も飛び上がりながら興奮した表情でディモが叫ぶ。そんな様子を嬉しそうに見ながらヘレーナは答えた。
「確かに、さっきは魔力に火属性を意識して注いだよ。私の得意な属性が火だからね」
「明日は水属性を試してみようよ! 上手くいけば水属性魔石を買わなくても、自分で作れるかもしれないよ! 旅の途中で水不足に悩まなくて美味しいご飯がいっぱい作れるよ! やったね! お姉ちゃん!」
「魔石を生み出す能力も二人が協力すれば属性が付与できるのも凄い話なのに、料理の話が出てくるのはさすがディモだね。それに、もう出来た気分になっている顔も可愛いよぉぉぉぉ」
二人でベッドの上で飛び跳ねながら、アメーリエが呼びに来るまで楽しんでいた。しばらく喜びを爆発させていると静かに扉が開いてアメーリエが入ってきた。
「お客様。申し訳ありません。ベッドの上で飛び跳ねるのは隣のお客様にも迷惑が掛かりますのでご遠慮ください」
「ごめんなさい! ちょっと嬉しい事があって……。気を付けます」
「……。次から気を付けてね。うちみたいに優しい宿屋じゃない場合もあるよ。後、ご飯の準備が出来たよ」
腰に手を当ててながらアメーリエが注意をしてきた。小さくなりながら謝罪するディモの様子に反省している事を感じたアメーリエは軽くため息を吐くと、いつもの砕けた口調で再度注意をするのだった。そして、二人は夕食の準備が整ったとの話に部屋を出て一階の食堂に向かう。
「森の安らぎ亭は食事が美味しんだよね。楽しみにしてるんだよ!」
「ディモがこの宿を選んだのも美味しい物が食べられるのがあるからね。不味かったら承知しないよ」
「そんな わけないでしょ! 間違いなく美味しいから!」
ヘレーナの脅しにアメーリエが頬を膨らませながら二人をテーブルに案内する。着席した二人に果実水とエールを手渡し、ナッツが入ったお皿をテーブルに置いた。
「このナッツは私からのサービスだよ」
「気が利くじゃないかい。料理も楽しみにしておいてやるよ」
「もう。お姉ちゃんはそんな言い方して。アメーリエさん。本当に楽しみにしてるからね!」
「ここかぁぁぁ! ここに俺の弟を襲った奴が居るらしいなぁぁぁ!」
乾杯をしてナッツを食べながら夕食が出てくるのを楽しみにしていたディモとヘレーナの耳に、宿屋の外から耳障りな大声が聞こえてきた。そして、食堂に大量の男達がなだれ込み、その中の一人がヘレーナを指さして叫んだ。
「あっ! あいつだ! 兄貴! あいつだよ。俺をひどい目にあわせたのは!」
「んー。誰だっけ? 全く覚えてないねえ。あっ! アメーリエ! エールをもう三杯持ってきておくれ」
「えっ? な、なに? お客様。店の中で暴れるのは……。きゃぁぁ」
男から指さされたヘレーナは相手が誰だか分かっていないようで、騒動に気付いて慌てて厨房から飛び出してきたアメーリエに気にする事なく注文をしようとする。ただ事ではない店の雰囲気に気圧されながらも、騒いでいる男達に注意をしようとしたアメーリエだったが、思いっきり突き飛ばされてしまった。
「兄貴。ここは例の宿屋ですぜ? どうせなら……」
「おう! それはいいな。ついでのやっちまうか。女も二人いるから楽しめそうだしな」
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