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気付けば時間が経過していました
少しずつ距離を詰める2人
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「やっぱり身体に精霊花があるのね! 凄い! 本当に主人公だ」
「どうしよう。本当に薔薇の令嬢ユーファネート・ライネワルトだわ。夢の通りの人だったら、私はいじめられちゃうの? あのはっきりと覚えている夢のように」
テンション高くはしゃいでいる希と、顔面蒼白で再び震えだしたフィネだった。転生者との言葉が理解できていないフィネの様子よりも、精霊花があるとの発言に意識がいっている希は、嬉しそうにしながら後ずさっているフィネを追いかけるように距離を詰めていく。
「ねえ。精霊花ってミソハギよね? どこにあるの? 背中? 肩? いつから出ていたの? 大きさは?」
「ひっ! ご、ごめんなさい! 許してください。本当にごめんなさい。ギュンター様、助けてください!」
勢いよく距離を詰めていく希に、のけぞりながらギュンターの背後に隠れるフィネ。そんな震えているフィネを確認したギュンターは、2人の間に立つと妹を引き剥がず。
「おい。ユーファ。怖がっているだろう。そこまでして問い詰める必要があるのか? その行動だけを見ていたら、俺はユーファを間違いなく拘束して、悪事について尋問するぞ」
「酷い! 私はフィネさんと仲良くなりたいだけですわ。フィネさん。私は薔薇の令嬢ではないですわよ。最近は落花生の令嬢と呼ばれておりますわ」
ギュンターから拳骨を落とされた希が涙目になって睨みつつも、フィネに向かっては満面の笑みを浮かべながら答える。薔薇の令嬢ではなく落花生の令嬢だと聞かされたフィネは、少し混乱しながらも夢の内容を思い出していた。
「落花生の令嬢? ライネワルト侯爵領では落花生が特産になっているからですか? え? でも、薔薇も有名だし、夢で出てきたのは悪役令嬢だと言われて……し、失礼いたしました!」
なにげに悪役令嬢とのキーワードを出したが、当の本人を前に悪役令嬢と言い放った事に、フィネは全身の血の気が引いたようになり貧血を起こす。そして、そのまま意識を飛ばしそうになったが、倒れるフィネをガッシリとした身体が抱きしめた。
「大丈夫か? ちょっとどこかで横になるか?」
「ありがとうございます。ギュンター様。やっぱり私を守ってくれるのは、清廉なる騎士ギュンター様だけです」
「いや、俺とフィネ……だっけ? 今日会うのが初めてだったと思うけど、そこまで俺を信頼するのはなぜだ? 出会った瞬間から抱き着いてきたよな? それに『清廉なる騎士』? そんなフレーズは聞いた事もないぞ」
目を潤ませながら抱き着いてくるフィネに、ギュンターが混乱しながら問いかけると、抱き付いたままの状態で語り始めた。希も近くで話を聞こうとしたが、フィネが怯えてしまったためにその場で待機を命じられてしまう。
「私は定期的に夢を見るのです。そして、その内容は物凄く明晰で、数年後の未来がハッキリと見えるのです。学院に入った私の事を守ってくれるのが、『雷獅子ギュンター』様なのです。身長は今よりもっと大きいですが、その凛々しい立ち振る舞い、やさしい瞳、流れるような髪、そして透き通るような綺麗な肌。雄々しくも優しい瞳に――」
「よし、少し待とうか。誰だそれ? 雷獅子ギュンター? そういえば1年前にユーファも同じ事を言っていたな。ユーファも同じ夢を見ていたのか?」
夢の内容だと前置きしながらも、徐々に熱を帯びながら語りだすフィネをギュンターは思わず止める。グイグイと近付いてくるフィネの身体を押さえながら、ユーファネートからも同じ『雷獅子ギュンター』との言葉を聞いた事を思い出したのか問い掛けてきた。
「え、ええ。そういえば言いましたわね。でも、今はフィネさんから話を聞いた方が良いのでは?」
希は、ギュンターからのツッコミを躱すとフィネに質問をするように伝える。腑に落ちないギュンターだったが、後でも問い詰める事は出来ると、フィネに向かって質問を続ける。
「他に夢は見るのか?」
「そうですね。そ、その。ユーファネート様と同じ学院に行くのですが、そこで私は色々とユーファネート様から虐め――邪魔をされるのです。そして、その場に颯爽と現れて助けて下さるのが雷獅子ギュンター様なのです!」
「お、おう。そ、そうか」
話ながらテンションが高くなる様子は、妹のユーファネートと同じだと感じながら、情報を集めていく。どうやら夢の話を本気で受け止めているらしく、きのこのダンジョンについても夢で見たとの事であった。その為に隣町からここまでやってきたとの事で、ギュンターはその根性を高く評価していた。
「若い娘が一人でここまでやって来たのか。それほどきのこのダンジョンは魅力的なのか?」
ギュンターはフィネの話を聞いて、きのこのダンジョンの評価を見直した方が良いのではと考えていた。そんな考えているギュンターの隣では、希がフィネとコミュニケーションを取ろうとお菓子で釣っていた。
「どうかしら。フィネさんの好きな落花生ですわよー」
「ぐっ! た、確かに私は落花生が好きですが、ユーファネート様がそれを知っているのは怖いですわ!」
「しかたない! 秘密兵器をだすわ。お兄様のマル秘情報を提供しましょう!」
「本当ですか! どんな対価を払えばいいですか!」
落花生のお菓子では釣れないフィネを、希は情報提供する事を提案する。それは魅力的だったのか、目を輝かせながらフィネはユーファネートに近付いて行くのだった。
「どうしよう。本当に薔薇の令嬢ユーファネート・ライネワルトだわ。夢の通りの人だったら、私はいじめられちゃうの? あのはっきりと覚えている夢のように」
テンション高くはしゃいでいる希と、顔面蒼白で再び震えだしたフィネだった。転生者との言葉が理解できていないフィネの様子よりも、精霊花があるとの発言に意識がいっている希は、嬉しそうにしながら後ずさっているフィネを追いかけるように距離を詰めていく。
「ねえ。精霊花ってミソハギよね? どこにあるの? 背中? 肩? いつから出ていたの? 大きさは?」
「ひっ! ご、ごめんなさい! 許してください。本当にごめんなさい。ギュンター様、助けてください!」
勢いよく距離を詰めていく希に、のけぞりながらギュンターの背後に隠れるフィネ。そんな震えているフィネを確認したギュンターは、2人の間に立つと妹を引き剥がず。
「おい。ユーファ。怖がっているだろう。そこまでして問い詰める必要があるのか? その行動だけを見ていたら、俺はユーファを間違いなく拘束して、悪事について尋問するぞ」
「酷い! 私はフィネさんと仲良くなりたいだけですわ。フィネさん。私は薔薇の令嬢ではないですわよ。最近は落花生の令嬢と呼ばれておりますわ」
ギュンターから拳骨を落とされた希が涙目になって睨みつつも、フィネに向かっては満面の笑みを浮かべながら答える。薔薇の令嬢ではなく落花生の令嬢だと聞かされたフィネは、少し混乱しながらも夢の内容を思い出していた。
「落花生の令嬢? ライネワルト侯爵領では落花生が特産になっているからですか? え? でも、薔薇も有名だし、夢で出てきたのは悪役令嬢だと言われて……し、失礼いたしました!」
なにげに悪役令嬢とのキーワードを出したが、当の本人を前に悪役令嬢と言い放った事に、フィネは全身の血の気が引いたようになり貧血を起こす。そして、そのまま意識を飛ばしそうになったが、倒れるフィネをガッシリとした身体が抱きしめた。
「大丈夫か? ちょっとどこかで横になるか?」
「ありがとうございます。ギュンター様。やっぱり私を守ってくれるのは、清廉なる騎士ギュンター様だけです」
「いや、俺とフィネ……だっけ? 今日会うのが初めてだったと思うけど、そこまで俺を信頼するのはなぜだ? 出会った瞬間から抱き着いてきたよな? それに『清廉なる騎士』? そんなフレーズは聞いた事もないぞ」
目を潤ませながら抱き着いてくるフィネに、ギュンターが混乱しながら問いかけると、抱き付いたままの状態で語り始めた。希も近くで話を聞こうとしたが、フィネが怯えてしまったためにその場で待機を命じられてしまう。
「私は定期的に夢を見るのです。そして、その内容は物凄く明晰で、数年後の未来がハッキリと見えるのです。学院に入った私の事を守ってくれるのが、『雷獅子ギュンター』様なのです。身長は今よりもっと大きいですが、その凛々しい立ち振る舞い、やさしい瞳、流れるような髪、そして透き通るような綺麗な肌。雄々しくも優しい瞳に――」
「よし、少し待とうか。誰だそれ? 雷獅子ギュンター? そういえば1年前にユーファも同じ事を言っていたな。ユーファも同じ夢を見ていたのか?」
夢の内容だと前置きしながらも、徐々に熱を帯びながら語りだすフィネをギュンターは思わず止める。グイグイと近付いてくるフィネの身体を押さえながら、ユーファネートからも同じ『雷獅子ギュンター』との言葉を聞いた事を思い出したのか問い掛けてきた。
「え、ええ。そういえば言いましたわね。でも、今はフィネさんから話を聞いた方が良いのでは?」
希は、ギュンターからのツッコミを躱すとフィネに質問をするように伝える。腑に落ちないギュンターだったが、後でも問い詰める事は出来ると、フィネに向かって質問を続ける。
「他に夢は見るのか?」
「そうですね。そ、その。ユーファネート様と同じ学院に行くのですが、そこで私は色々とユーファネート様から虐め――邪魔をされるのです。そして、その場に颯爽と現れて助けて下さるのが雷獅子ギュンター様なのです!」
「お、おう。そ、そうか」
話ながらテンションが高くなる様子は、妹のユーファネートと同じだと感じながら、情報を集めていく。どうやら夢の話を本気で受け止めているらしく、きのこのダンジョンについても夢で見たとの事であった。その為に隣町からここまでやってきたとの事で、ギュンターはその根性を高く評価していた。
「若い娘が一人でここまでやって来たのか。それほどきのこのダンジョンは魅力的なのか?」
ギュンターはフィネの話を聞いて、きのこのダンジョンの評価を見直した方が良いのではと考えていた。そんな考えているギュンターの隣では、希がフィネとコミュニケーションを取ろうとお菓子で釣っていた。
「どうかしら。フィネさんの好きな落花生ですわよー」
「ぐっ! た、確かに私は落花生が好きですが、ユーファネート様がそれを知っているのは怖いですわ!」
「しかたない! 秘密兵器をだすわ。お兄様のマル秘情報を提供しましょう!」
「本当ですか! どんな対価を払えばいいですか!」
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