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きのこのダンジョンの取り扱い
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ライネワルト侯爵家の嫡男ギュンターと、最近は落花生の令嬢と呼ばれているユーファネートの兄妹によって、きのこのダンジョンがライネワルト侯爵家が所有されると発表された。領民からは当初は庶民の食材を奪うのかと苦情が入ったが、それに対しての補填が行われるとの内容と、その金額に領民からの評価は急上昇した。
また、周囲の貴族からは嘲笑が起った。領内に出来たダンジョンを所有するのは貴族の義務だが、初心者レベルのダンジョンは、監視か破壊が標準であり、一般人でも破壊出来る物を大事に所有するなど貴族にあるまじき行為であると。相変わらずライネワルト侯爵は変わり者であると。
「ふふ。好きに言わせておきなさいな。ユーファネートが『ここは私に下さい!』と鼻息荒く言ってきたのよ? 間違いなくなにかがあるのでしょう。今は好きにさせておきなさい。そして、その嘲笑した貴族は記録しておきなさい。将来、ユーファネートがなにかを始めた時に、参加させるかの判断材料にするわ」
この1年で急成長したライネワルト侯爵家を妬む声は大きく、公爵夫人であるマルグレートは諜報部隊を強化しており、その内の一人からの報告を聞きながら答えていた。諜報部隊の強化はユーファネートからの提案でもあり、それまで地位の低かった諜報部隊出身の一族をまとめて雇い上げていた。
「まさか、ここまで忠誠度が上がるとは思わなかったわよ?」
一族の長でもあり、侍女長としても仕えている諜報部隊責任者の女性を見ながら、マルグレートは軽い感じで話す。そんな主人の顔を見ながら、侍女長は微笑みながら答えた。
「当然でございます。我ら一族は身体能力と命を売り払いながら生き延びていた一族です。まさか領地の一部を譲って頂けるとは思いもよりませんでした。我ら一族はライネワルト侯爵家に生涯の忠誠を誓います」
「もっと早く言ってくれたら良かったのに。ラーレとは友達だと思っていたのに」
「もったいないお言葉です。ですが、それとこれとでは話が違います。元々、我らも満足していたのですよ。ここまで高給で雇って下さるのはライネワルト侯爵家くらいですから。まさかユーファネート様の一言でここまで待遇が変わるとは思いませんでした」
ラーレの一族はユーファネートに恩義を感じており、今回のきのこのダンジョンを巡る貴族界の情報収集も、自主的に行っており、マルグレートが命じた頃には全ての情報が収集されて報告される状態であった。
「あの子のお陰で私は色々とやりやすくなったけど、今回のきのこのダンジョンはどうするつもりなのでしょうね。しばらくは魔物を増やして食材集めと言っていたけど。しばらく目を離さないようにしておいてね」
「もとろんでございます。ユーファネート様は我らの救世主。なにがあろうと守って見せます。ところで奥様。紅茶に合う新作のクッキーをユーファネート様が考えられたのですが、いかがでしょうか?」
「それは興味深いわね。じゃあ、ラーレも一緒しなさい。2人で食べて問題なければ王都の喫茶店でも提供を始めましょう」
ラーレの言葉にマルグレートは嬉しそうにしながら、紅茶のお代わりを求めるのだった。
◇□◇□◇□
「分りました! しばらくは7日に1回の割合できのこの魔物を狩れば良いのですね」
「ええ。そして出来る限りフィネが戦闘に参加するのよ。でも、危なくなったらすぐに逃げなさい」
希とフィネが出会ってから1ヶ月が経っていた。きのこのダンジョンを所有してから、ユーファネートがお菓子をあげた幼女の母親がダンジョン管理担当者となり、フィネを始めとする街の娘達がきのこの魔物と戦う事が決まっていた。強力なユニークモンスターが出た場合に備えて、フィネにはセバスチャンが所有していた中距離攻撃用の魔道具も渡されており、かなり身の安全には注意が払われていた。
「それにしてもセバスチャンさんが淹れる紅茶は絶品ですね。こんな美味しい紅茶を飲んだ事ありません!」
「お褒めにあずかり光栄です。ユーファネート様に捧げるために鍛錬を積んでおりますので、ユーファネート様がご友人と認められたフィネ様にお褒めに頂けるのは至上の喜びでございます」
「そ、そうですか。それにしても美味しー」
紅茶の感想を率直に述べているフィネに、セバスチャンが主人のユーファネートの為にいかに頑張っているのかを力説するように、喜色満面の笑みを浮かべながら答えていた。そのあまりの勢いに、若干引き気味になったフィネは頬を引き攣らせながら会話を終わらせると紅茶を飲み始める。
「フィネ。お兄様と私以外は夢には出てこなかったの?」
「あれ? まだその話はしてませんでしたか? えっと……そうですね。ユーファネート様とギュンター様とレオンハルト様は覚えています。それとセバスチャンさんも! いつもユーファネート様の背後に居ました。そして私には優しかったですね。後は色々と男女が出てくるのですが、名前まではちょっと……」
美味しそうにクッキーを頬張っているフィネを見ながら希が問いかけると、軽く首をかしげながら答えてくれた。首をかしげる仕草も可愛いわね。さすがは主人公と思いながら話を聞く希。しばらく情報を収集していた望みだったが、改まって真剣な顔になるとフィネに話しかけた。
「ねえ、フィネ。私に雇われる気はない?」
また、周囲の貴族からは嘲笑が起った。領内に出来たダンジョンを所有するのは貴族の義務だが、初心者レベルのダンジョンは、監視か破壊が標準であり、一般人でも破壊出来る物を大事に所有するなど貴族にあるまじき行為であると。相変わらずライネワルト侯爵は変わり者であると。
「ふふ。好きに言わせておきなさいな。ユーファネートが『ここは私に下さい!』と鼻息荒く言ってきたのよ? 間違いなくなにかがあるのでしょう。今は好きにさせておきなさい。そして、その嘲笑した貴族は記録しておきなさい。将来、ユーファネートがなにかを始めた時に、参加させるかの判断材料にするわ」
この1年で急成長したライネワルト侯爵家を妬む声は大きく、公爵夫人であるマルグレートは諜報部隊を強化しており、その内の一人からの報告を聞きながら答えていた。諜報部隊の強化はユーファネートからの提案でもあり、それまで地位の低かった諜報部隊出身の一族をまとめて雇い上げていた。
「まさか、ここまで忠誠度が上がるとは思わなかったわよ?」
一族の長でもあり、侍女長としても仕えている諜報部隊責任者の女性を見ながら、マルグレートは軽い感じで話す。そんな主人の顔を見ながら、侍女長は微笑みながら答えた。
「当然でございます。我ら一族は身体能力と命を売り払いながら生き延びていた一族です。まさか領地の一部を譲って頂けるとは思いもよりませんでした。我ら一族はライネワルト侯爵家に生涯の忠誠を誓います」
「もっと早く言ってくれたら良かったのに。ラーレとは友達だと思っていたのに」
「もったいないお言葉です。ですが、それとこれとでは話が違います。元々、我らも満足していたのですよ。ここまで高給で雇って下さるのはライネワルト侯爵家くらいですから。まさかユーファネート様の一言でここまで待遇が変わるとは思いませんでした」
ラーレの一族はユーファネートに恩義を感じており、今回のきのこのダンジョンを巡る貴族界の情報収集も、自主的に行っており、マルグレートが命じた頃には全ての情報が収集されて報告される状態であった。
「あの子のお陰で私は色々とやりやすくなったけど、今回のきのこのダンジョンはどうするつもりなのでしょうね。しばらくは魔物を増やして食材集めと言っていたけど。しばらく目を離さないようにしておいてね」
「もとろんでございます。ユーファネート様は我らの救世主。なにがあろうと守って見せます。ところで奥様。紅茶に合う新作のクッキーをユーファネート様が考えられたのですが、いかがでしょうか?」
「それは興味深いわね。じゃあ、ラーレも一緒しなさい。2人で食べて問題なければ王都の喫茶店でも提供を始めましょう」
ラーレの言葉にマルグレートは嬉しそうにしながら、紅茶のお代わりを求めるのだった。
◇□◇□◇□
「分りました! しばらくは7日に1回の割合できのこの魔物を狩れば良いのですね」
「ええ。そして出来る限りフィネが戦闘に参加するのよ。でも、危なくなったらすぐに逃げなさい」
希とフィネが出会ってから1ヶ月が経っていた。きのこのダンジョンを所有してから、ユーファネートがお菓子をあげた幼女の母親がダンジョン管理担当者となり、フィネを始めとする街の娘達がきのこの魔物と戦う事が決まっていた。強力なユニークモンスターが出た場合に備えて、フィネにはセバスチャンが所有していた中距離攻撃用の魔道具も渡されており、かなり身の安全には注意が払われていた。
「それにしてもセバスチャンさんが淹れる紅茶は絶品ですね。こんな美味しい紅茶を飲んだ事ありません!」
「お褒めにあずかり光栄です。ユーファネート様に捧げるために鍛錬を積んでおりますので、ユーファネート様がご友人と認められたフィネ様にお褒めに頂けるのは至上の喜びでございます」
「そ、そうですか。それにしても美味しー」
紅茶の感想を率直に述べているフィネに、セバスチャンが主人のユーファネートの為にいかに頑張っているのかを力説するように、喜色満面の笑みを浮かべながら答えていた。そのあまりの勢いに、若干引き気味になったフィネは頬を引き攣らせながら会話を終わらせると紅茶を飲み始める。
「フィネ。お兄様と私以外は夢には出てこなかったの?」
「あれ? まだその話はしてませんでしたか? えっと……そうですね。ユーファネート様とギュンター様とレオンハルト様は覚えています。それとセバスチャンさんも! いつもユーファネート様の背後に居ました。そして私には優しかったですね。後は色々と男女が出てくるのですが、名前まではちょっと……」
美味しそうにクッキーを頬張っているフィネを見ながら希が問いかけると、軽く首をかしげながら答えてくれた。首をかしげる仕草も可愛いわね。さすがは主人公と思いながら話を聞く希。しばらく情報を収集していた望みだったが、改まって真剣な顔になるとフィネに話しかけた。
「ねえ、フィネ。私に雇われる気はない?」
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