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15 メイドリリの証言
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それからしばらくの間、じっと何かに耐えるようにしておられた旦那様が静かに口を開きました。
「申し訳ないが・・・一人ずつ話を聞いても良いだろうか」
アレンさんたちはリリさんを残して退出しました。
ここまでの展開はアレンさんの読み通りでしたから、きっと順番も決めていたのでしょう。
恐るべしイケオジ!
最後のクッキーに手を伸ばしたリリさんの顔をチラッと見て、旦那様はまずお詫びを口にされました。
「えっと・・・リリだったよね?いろいろと心配や迷惑をかけてしまった。それにきっと、つ・・・妻も君に頼っていたのだろうね。本当に申し訳なかった」
リリさんは黙ってペコっと頭を下げました。
「それで・・・恥を忍んで聞くのだけれど。つ・・・妻はなんという名前なのかな?」
「そこからですか・・・ルシア様ですよ」
「ルシア嬢か・・・きれいな名前だね」
「ええ、性格もとても穏やかで優しい方です。本当に素敵な方ですよ」
「そうか・・・なぜルシア嬢はこんな酷い状況に耐えていたのかな。心当たりはある?」
「奥様は・・・はっきり申し上げてご実家のために耐えておられたのだと思います。旦那様に毎週送られるお手紙の返事が無くても大丈夫だからと。でも旦那様はお父様が危篤だという手紙も完全無視!さすがにあの時は直視できないほど悲しんでおられました」
「そうか・・・」
「旦那様にお手紙が届いていなかったというのは理解しました。それでもあの時の奥様の悲しみを思うと・・・女王陛下とあの秘書の人・・・罪にならないなら殺してやりたい」
「うん、そうだね。みんなも辛かっただろうね」
「結婚式の準備の時もですよ・・・もしやご自分で出された返事の内容も?」
「うん・・・把握していない」
「奥様はお返事が無いのでウェディングドレスも作れず、指輪も準備できず・・・ブーケさえ贈られず・・・女としては最低の扱いをされたのですよ?しかもやっと来た返事の内容ときたら!色もデザインも何でもいい、指輪は不要、以上・・・ですからね。酷すぎますよ」
「うん、本当に酷いね」
「でも旦那様がなさったことではないのでしょう?だったら奥様の悲しみや怒りは、どこにぶつければ良いのでしょうか」
「それは・・・やっぱり私だよね・・・」
「奥様は憤る私たち使用人を宥めておられました。時には一緒に掃除をしたり、お洗濯も手伝って下さったり・・・食事だってみんなと一緒にって・・・」
リリさんは泣き出してしまいました。
唐突に自分の役割を思い出したのでしょうか?
旦那様は悲痛な表情でリリさんを見ておられます。
「えぐっっっ・・・ひっくっっ・・・お・・・奥様・・・奥様は・・・ずっと旦那様の・・・お帰りを・・・信じて・・・びえぇぇぇん」
リリさん迫真の演技です!
旦那様はぎゅっと目を瞑ってじっとしています。
「ねえ、リリ・・・君はルシア嬢を・・・奥様を好きかい?」
リリさんがガバッと顔を上げて旦那様を睨みました。
「大好きです!旦那様より・・・大大大好きです!」
「そうか・・・ありがとうね。彼女は・・・ものすごく良い人なんだね」
「旦那様・・・奥様と別れるのですか?・・・あんな素敵な方と・・・」
「別れるも何も・・・会ったこともない私が、何かを言えるわけないだろう?さすがに愛想を尽かされているよ・・・悲しいけれどね」
「旦那様は・・・アレンさんが言うように・・・女王陛下の愛人なんですか?」
「愛人か・・・違うけど、そう思われても仕方がない。後でみんなにちゃんと話すよ。約束する。でもルシア嬢はそう信じて出て行ったんだろうから・・・情けないよ」
「旦那様・・・奥様が戻ってこられたら土下座してでも引き留めてください。あんないい人もう二度と会えませんよ」
「そうしたいのはやまやまだけど・・・謝る資格が私にあるのかな・・・」
旦那様はリリさんにお礼を言って、次の方を呼ぶよう言われました。
リリさんはペコっとお辞儀をしてドアを開ける前に・・・チラッとこっちを見ました。
ダメです!
バレます!
ドキドキです!
旦那様は部屋の外に控えていたアレンさんを呼んで、秘書のランドルさんを連れてくるように言っています。
ソファに深く座りなおして掌で目を覆って、深い深い溜息を吐いていました。
小さくノックの音がしてランドルさんが入ってこられました。
やっぱり大きな箱を持っておられます。
旦那様はソファを指さして座るように促されてから口を開きました。
「ランドル・・・その箱は何?」
「これは・・・お預かりしていた手紙です」
「え?・・・こんなにあるのか・・・」
旦那様は箱の中身をテーブルの上にひっくり返しました。
「束になっているのは?何の分類かな?」
「差出人別に分類しています。このカラフルな物は一般ファンからのラブレターですね・・・こちらがご両親からの・・・そしてこの山が奥様からのものです」
「彼女はこんなにたくさんの手紙をくれていたのか!」
「はい・・・」
「そのラブレターとやらは捨ててくれていいが・・・君は全ての手紙を読んだのか?」
「はい・・・」
「両親からは何と?」
「婚約式のこととか結婚式のこと、後は家に戻るようにと何度も・・・」
「・・・彼女からは?」
「殆どが日々の出来事などの報告ですが・・・結婚準備と奥様のお父上のことは・・・申し訳なさ過ぎて口にできません・・・」
そう言ってランドルさんは、私が出した手紙の束から何通かを抜き出して旦那様に渡されました」
「これは通し番号?君が書いたのか?」
「はい・・・到着順に番号を振って管理しておりました」
「無駄に几帳面だな・・・あのくそ女はこれ全てに目を通しているということか?」
「いえ、内容を私の方で箇条書きにして、イーリス様にお渡ししておりました。直接お読みになることはありませんでした」
「バカにしやがって・・・殺してやりたいな・・・」
「申し訳ございません」
「いや、君じゃない。君も許せないが殺したいのはあの女だ」
「・・・・・・」
苦しそうな顔で俯くランドルさんをそのままに、旦那様は取り出された数通の手紙を読み始めました。
便箋を捲る音だけがします。
一通を読み終えた旦那様は、唇を嚙みしめながら二通目に手を伸ばされます。
そして三通目。
読み終えた旦那様は絞りだすような音を喉から漏らしました。
便箋を握り涙を流しておられます。
なんと感性の豊かな方でしょうか・・・
私なら見ず知らずの結婚相手が寄こした、愚痴だけが綴られた手紙など、読んでも泣けないと思います。
「お前は・・・お前はこの手紙を読んでも・・・なんとも思わなかったのか!」
旦那さまが怒鳴りました。
美人さんが本気で怒ると迫力が違います。
「すみません・・・でもその手紙は・・・何度もお願いして返事の許可を・・・」
「なにが返事の許可だ!私に言えばいいだろうが!お前はそれでも人間か!」
きゃぁぁぁぁ~旦那様!低い声も素敵です!
声を殺して絶賛しておりましたら、変な音が聞こえました。
どうもランドルさんが嗚咽を漏らし始めたようです。
怒られて泣くとか・・・子供ですか?
その時ノックの音が聞こえました。
「お前もここに居ろ」
そういうと旦那様はランドルさんを自分の横に座らせました。
次はどなたでしょう?
あっ!庭師のノベックさんです。
めちゃ優しいおじいちゃまです!
イケオジならぬイケジジです!
「申し訳ないが・・・一人ずつ話を聞いても良いだろうか」
アレンさんたちはリリさんを残して退出しました。
ここまでの展開はアレンさんの読み通りでしたから、きっと順番も決めていたのでしょう。
恐るべしイケオジ!
最後のクッキーに手を伸ばしたリリさんの顔をチラッと見て、旦那様はまずお詫びを口にされました。
「えっと・・・リリだったよね?いろいろと心配や迷惑をかけてしまった。それにきっと、つ・・・妻も君に頼っていたのだろうね。本当に申し訳なかった」
リリさんは黙ってペコっと頭を下げました。
「それで・・・恥を忍んで聞くのだけれど。つ・・・妻はなんという名前なのかな?」
「そこからですか・・・ルシア様ですよ」
「ルシア嬢か・・・きれいな名前だね」
「ええ、性格もとても穏やかで優しい方です。本当に素敵な方ですよ」
「そうか・・・なぜルシア嬢はこんな酷い状況に耐えていたのかな。心当たりはある?」
「奥様は・・・はっきり申し上げてご実家のために耐えておられたのだと思います。旦那様に毎週送られるお手紙の返事が無くても大丈夫だからと。でも旦那様はお父様が危篤だという手紙も完全無視!さすがにあの時は直視できないほど悲しんでおられました」
「そうか・・・」
「旦那様にお手紙が届いていなかったというのは理解しました。それでもあの時の奥様の悲しみを思うと・・・女王陛下とあの秘書の人・・・罪にならないなら殺してやりたい」
「うん、そうだね。みんなも辛かっただろうね」
「結婚式の準備の時もですよ・・・もしやご自分で出された返事の内容も?」
「うん・・・把握していない」
「奥様はお返事が無いのでウェディングドレスも作れず、指輪も準備できず・・・ブーケさえ贈られず・・・女としては最低の扱いをされたのですよ?しかもやっと来た返事の内容ときたら!色もデザインも何でもいい、指輪は不要、以上・・・ですからね。酷すぎますよ」
「うん、本当に酷いね」
「でも旦那様がなさったことではないのでしょう?だったら奥様の悲しみや怒りは、どこにぶつければ良いのでしょうか」
「それは・・・やっぱり私だよね・・・」
「奥様は憤る私たち使用人を宥めておられました。時には一緒に掃除をしたり、お洗濯も手伝って下さったり・・・食事だってみんなと一緒にって・・・」
リリさんは泣き出してしまいました。
唐突に自分の役割を思い出したのでしょうか?
旦那様は悲痛な表情でリリさんを見ておられます。
「えぐっっっ・・・ひっくっっ・・・お・・・奥様・・・奥様は・・・ずっと旦那様の・・・お帰りを・・・信じて・・・びえぇぇぇん」
リリさん迫真の演技です!
旦那様はぎゅっと目を瞑ってじっとしています。
「ねえ、リリ・・・君はルシア嬢を・・・奥様を好きかい?」
リリさんがガバッと顔を上げて旦那様を睨みました。
「大好きです!旦那様より・・・大大大好きです!」
「そうか・・・ありがとうね。彼女は・・・ものすごく良い人なんだね」
「旦那様・・・奥様と別れるのですか?・・・あんな素敵な方と・・・」
「別れるも何も・・・会ったこともない私が、何かを言えるわけないだろう?さすがに愛想を尽かされているよ・・・悲しいけれどね」
「旦那様は・・・アレンさんが言うように・・・女王陛下の愛人なんですか?」
「愛人か・・・違うけど、そう思われても仕方がない。後でみんなにちゃんと話すよ。約束する。でもルシア嬢はそう信じて出て行ったんだろうから・・・情けないよ」
「旦那様・・・奥様が戻ってこられたら土下座してでも引き留めてください。あんないい人もう二度と会えませんよ」
「そうしたいのはやまやまだけど・・・謝る資格が私にあるのかな・・・」
旦那様はリリさんにお礼を言って、次の方を呼ぶよう言われました。
リリさんはペコっとお辞儀をしてドアを開ける前に・・・チラッとこっちを見ました。
ダメです!
バレます!
ドキドキです!
旦那様は部屋の外に控えていたアレンさんを呼んで、秘書のランドルさんを連れてくるように言っています。
ソファに深く座りなおして掌で目を覆って、深い深い溜息を吐いていました。
小さくノックの音がしてランドルさんが入ってこられました。
やっぱり大きな箱を持っておられます。
旦那様はソファを指さして座るように促されてから口を開きました。
「ランドル・・・その箱は何?」
「これは・・・お預かりしていた手紙です」
「え?・・・こんなにあるのか・・・」
旦那様は箱の中身をテーブルの上にひっくり返しました。
「束になっているのは?何の分類かな?」
「差出人別に分類しています。このカラフルな物は一般ファンからのラブレターですね・・・こちらがご両親からの・・・そしてこの山が奥様からのものです」
「彼女はこんなにたくさんの手紙をくれていたのか!」
「はい・・・」
「そのラブレターとやらは捨ててくれていいが・・・君は全ての手紙を読んだのか?」
「はい・・・」
「両親からは何と?」
「婚約式のこととか結婚式のこと、後は家に戻るようにと何度も・・・」
「・・・彼女からは?」
「殆どが日々の出来事などの報告ですが・・・結婚準備と奥様のお父上のことは・・・申し訳なさ過ぎて口にできません・・・」
そう言ってランドルさんは、私が出した手紙の束から何通かを抜き出して旦那様に渡されました」
「これは通し番号?君が書いたのか?」
「はい・・・到着順に番号を振って管理しておりました」
「無駄に几帳面だな・・・あのくそ女はこれ全てに目を通しているということか?」
「いえ、内容を私の方で箇条書きにして、イーリス様にお渡ししておりました。直接お読みになることはありませんでした」
「バカにしやがって・・・殺してやりたいな・・・」
「申し訳ございません」
「いや、君じゃない。君も許せないが殺したいのはあの女だ」
「・・・・・・」
苦しそうな顔で俯くランドルさんをそのままに、旦那様は取り出された数通の手紙を読み始めました。
便箋を捲る音だけがします。
一通を読み終えた旦那様は、唇を嚙みしめながら二通目に手を伸ばされます。
そして三通目。
読み終えた旦那様は絞りだすような音を喉から漏らしました。
便箋を握り涙を流しておられます。
なんと感性の豊かな方でしょうか・・・
私なら見ず知らずの結婚相手が寄こした、愚痴だけが綴られた手紙など、読んでも泣けないと思います。
「お前は・・・お前はこの手紙を読んでも・・・なんとも思わなかったのか!」
旦那さまが怒鳴りました。
美人さんが本気で怒ると迫力が違います。
「すみません・・・でもその手紙は・・・何度もお願いして返事の許可を・・・」
「なにが返事の許可だ!私に言えばいいだろうが!お前はそれでも人間か!」
きゃぁぁぁぁ~旦那様!低い声も素敵です!
声を殺して絶賛しておりましたら、変な音が聞こえました。
どうもランドルさんが嗚咽を漏らし始めたようです。
怒られて泣くとか・・・子供ですか?
その時ノックの音が聞こえました。
「お前もここに居ろ」
そういうと旦那様はランドルさんを自分の横に座らせました。
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