せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連

文字の大きさ
15 / 43

15 メイドリリの証言 

しおりを挟む
それからしばらくの間、じっと何かに耐えるようにしておられた旦那様が静かに口を開きました。

「申し訳ないが・・・一人ずつ話を聞いても良いだろうか」

アレンさんたちはリリさんを残して退出しました。
ここまでの展開はアレンさんの読み通りでしたから、きっと順番も決めていたのでしょう。
恐るべしイケオジ!

最後のクッキーに手を伸ばしたリリさんの顔をチラッと見て、旦那様はまずお詫びを口にされました。

「えっと・・・リリだったよね?いろいろと心配や迷惑をかけてしまった。それにきっと、つ・・・妻も君に頼っていたのだろうね。本当に申し訳なかった」

リリさんは黙ってペコっと頭を下げました。

「それで・・・恥を忍んで聞くのだけれど。つ・・・妻はなんという名前なのかな?」

「そこからですか・・・ルシア様ですよ」

「ルシア嬢か・・・きれいな名前だね」

「ええ、性格もとても穏やかで優しい方です。本当に素敵な方ですよ」

「そうか・・・なぜルシア嬢はこんな酷い状況に耐えていたのかな。心当たりはある?」

「奥様は・・・はっきり申し上げてご実家のために耐えておられたのだと思います。旦那様に毎週送られるお手紙の返事が無くても大丈夫だからと。でも旦那様はお父様が危篤だという手紙も完全無視!さすがにあの時は直視できないほど悲しんでおられました」

「そうか・・・」

「旦那様にお手紙が届いていなかったというのは理解しました。それでもあの時の奥様の悲しみを思うと・・・女王陛下とあの秘書の人・・・罪にならないなら殺してやりたい」

「うん、そうだね。みんなも辛かっただろうね」

「結婚式の準備の時もですよ・・・もしやご自分で出された返事の内容も?」

「うん・・・把握していない」

「奥様はお返事が無いのでウェディングドレスも作れず、指輪も準備できず・・・ブーケさえ贈られず・・・女としては最低の扱いをされたのですよ?しかもやっと来た返事の内容ときたら!色もデザインも何でもいい、指輪は不要、以上・・・ですからね。酷すぎますよ」

「うん、本当に酷いね」

「でも旦那様がなさったことではないのでしょう?だったら奥様の悲しみや怒りは、どこにぶつければ良いのでしょうか」

「それは・・・やっぱり私だよね・・・」

「奥様は憤る私たち使用人を宥めておられました。時には一緒に掃除をしたり、お洗濯も手伝って下さったり・・・食事だってみんなと一緒にって・・・」

リリさんは泣き出してしまいました。
唐突に自分の役割を思い出したのでしょうか?
旦那様は悲痛な表情でリリさんを見ておられます。

「えぐっっっ・・・ひっくっっ・・・お・・・奥様・・・奥様は・・・ずっと旦那様の・・・お帰りを・・・信じて・・・びえぇぇぇん」

リリさん迫真の演技です!
旦那様はぎゅっと目を瞑ってじっとしています。

「ねえ、リリ・・・君はルシア嬢を・・・奥様を好きかい?」

リリさんがガバッと顔を上げて旦那様を睨みました。

「大好きです!旦那様より・・・大大大好きです!」

「そうか・・・ありがとうね。彼女は・・・ものすごく良い人なんだね」

「旦那様・・・奥様と別れるのですか?・・・あんな素敵な方と・・・」

「別れるも何も・・・会ったこともない私が、何かを言えるわけないだろう?さすがに愛想を尽かされているよ・・・悲しいけれどね」

「旦那様は・・・アレンさんが言うように・・・女王陛下の愛人なんですか?」

「愛人か・・・違うけど、そう思われても仕方がない。後でみんなにちゃんと話すよ。約束する。でもルシア嬢はそう信じて出て行ったんだろうから・・・情けないよ」

「旦那様・・・奥様が戻ってこられたら土下座してでも引き留めてください。あんないい人もう二度と会えませんよ」

「そうしたいのはやまやまだけど・・・謝る資格が私にあるのかな・・・」

旦那様はリリさんにお礼を言って、次の方を呼ぶよう言われました。
リリさんはペコっとお辞儀をしてドアを開ける前に・・・チラッとこっちを見ました。
ダメです!
バレます!
ドキドキです!

旦那様は部屋の外に控えていたアレンさんを呼んで、秘書のランドルさんを連れてくるように言っています。
ソファに深く座りなおして掌で目を覆って、深い深い溜息を吐いていました。

小さくノックの音がしてランドルさんが入ってこられました。
やっぱり大きな箱を持っておられます。
旦那様はソファを指さして座るように促されてから口を開きました。

「ランドル・・・その箱は何?」

「これは・・・お預かりしていた手紙です」

「え?・・・こんなにあるのか・・・」

旦那様は箱の中身をテーブルの上にひっくり返しました。

「束になっているのは?何の分類かな?」

「差出人別に分類しています。このカラフルな物は一般ファンからのラブレターですね・・・こちらがご両親からの・・・そしてこの山が奥様からのものです」

「彼女はこんなにたくさんの手紙をくれていたのか!」

「はい・・・」

「そのラブレターとやらは捨ててくれていいが・・・君は全ての手紙を読んだのか?」

「はい・・・」

「両親からは何と?」

「婚約式のこととか結婚式のこと、後は家に戻るようにと何度も・・・」

「・・・彼女からは?」

「殆どが日々の出来事などの報告ですが・・・結婚準備と奥様のお父上のことは・・・申し訳なさ過ぎて口にできません・・・」

そう言ってランドルさんは、私が出した手紙の束から何通かを抜き出して旦那様に渡されました」

「これは通し番号?君が書いたのか?」

「はい・・・到着順に番号を振って管理しておりました」

「無駄に几帳面だな・・・あのくそ女はこれ全てに目を通しているということか?」

「いえ、内容を私の方で箇条書きにして、イーリス様にお渡ししておりました。直接お読みになることはありませんでした」

「バカにしやがって・・・殺してやりたいな・・・」

「申し訳ございません」

「いや、君じゃない。君も許せないが殺したいのはあの女だ」

「・・・・・・」

苦しそうな顔で俯くランドルさんをそのままに、旦那様は取り出された数通の手紙を読み始めました。
便箋を捲る音だけがします。
一通を読み終えた旦那様は、唇を嚙みしめながら二通目に手を伸ばされます。
そして三通目。
読み終えた旦那様は絞りだすような音を喉から漏らしました。
便箋を握り涙を流しておられます。
なんと感性の豊かな方でしょうか・・・
私なら見ず知らずの結婚相手が寄こした、愚痴だけが綴られた手紙など、読んでも泣けないと思います。

「お前は・・・お前はこの手紙を読んでも・・・なんとも思わなかったのか!」

旦那さまが怒鳴りました。
美人さんが本気で怒ると迫力が違います。

「すみません・・・でもその手紙は・・・何度もお願いして返事の許可を・・・」

「なにが返事の許可だ!私に言えばいいだろうが!お前はそれでも人間か!」

きゃぁぁぁぁ~旦那様!低い声も素敵です!
声を殺して絶賛しておりましたら、変な音が聞こえました。
どうもランドルさんが嗚咽を漏らし始めたようです。
怒られて泣くとか・・・子供ですか?
その時ノックの音が聞こえました。

「お前もここに居ろ」

そういうと旦那様はランドルさんを自分の横に座らせました。
次はどなたでしょう?
あっ!庭師のノベックさんです。
めちゃ優しいおじいちゃまです!
イケオジならぬイケジジです!
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ! 小説家になろうにも書いてます。

処理中です...