転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連

文字の大きさ
37 / 61

37

しおりを挟む
 この件はイースによってすぐに王と王妃に報告された。
 今回の疫病への対策は、トーマスを中心に進めることとなった。
 ウサキチはすぐそこに迫った危機に対応するべく、姿を変えると言い出した。

「全てを白日の下に晒した今、シューンのぬいぐるみでいる必要は無い。第二形態へ進化しようと思う。ちなみに最終形態を晒すのは、邪神と相対する時だ」

 大層な物言いに、ワクワクしたサリーだが、ウサキチが進化だと言い張るその姿に、片眉を上げて非難の目を向けた。

「あんたの言う第二って……しょぼくない?」

「失礼な奴だな。かっこよくないか?」

「同意しかねるわ……」

 ウサキチの進化系……それは緑色の帽子だった。

「特殊部隊のベレーとかさぁ、かっこいいキャップとかビーニーとかあるでしょうに……なぜその幼稚園帽子……しかも黄色とか……」

「そ……そうかぁ? 良いと思ったのだが。百年前は最新型と言われたのに……」

「蟀谷の所の刺しゅう……ほんとに幼稚園児の制服帽子じゃん」

「これは王家の紋章だぞ?」

「ダッサ」

「シューンは気に入っていた!」

「マジで?」

「懐かしいと言っていたぞ」

「……」

 サリーの中でやはりシューンは瞬ではないかという疑問が顔を出す。
 しかし、本人があれほど否定しているのだ。
 触れるべきではないと思ったサリーは、その思いに蓋をした。

「まあ本人が良いなら良いんじゃない? それで? 何か特殊な能力でもあるの?」

「頭を覆っていることで脳への衝撃を緩和できる。それに、私とシューンの思考回路が常にリンクすることで、神の使者として与えられた能力を共有できるんだ」

「へぇ、見た目はアレだけど、なかなか優秀じゃない」

「そうだろ?」

 自慢げなところが小憎らしい。

「ウサキチの抜け殻はどうするの?」

「あれはオブジェとして寝室に飾る」

「オブジェ……」

「シューンの形見のようなものだ」

 サリーは黙って拳を握った。
 ふと窓の外を見る。
 何事も無いように広がる青空が小憎らしいとサリーは思った。
 城門の外では、市民たちが生きるための営みを繰り返している。
 そんな彼らの日常を守るべく、シューンという子供が命を捧げるのだ。

「理不尽だわ……」

 サリーの言葉に、黄色い帽子がぺしゃッと萎んだ。

「あんたのことは何て呼べばいいの?」

「今まで通りで良くないか?」

「ウサギじゃないのにウサキチって変じゃん」

「じゃあこれならどうだ?」

 黄色い帽子からペコっと長い耳が生えた。

「あら、かわいい」

「だろ? これで行こう」

「ねえ、シューンが成長してこの帽子が似合わなくなったらどうするの?」

「帽子ということが重要なのであって、そのデザインは関係ないさ。その年齢に似合うデザインに変わっていくだけだ」

 納得していいのかどうか迷ったサリーは口を噤んだ。
 ドアが開き、イースが顔を出した。

「サリー、そしてウサキチも。父と母が呼んでいる」

「はい、畏まりました。シューン殿下は?」

「既に到着しているよ」

 急ぎ足で王の執務室に向かうと、シューンの他にサムとトーマス、そしてロバートと第一王子側近のマーカスがいた。

「遅くなりました」

 サリーはテーブルにウサキチの抜け殻と帽子を置いて礼をした。
 王妃が口を開いた。

「サリー。全て聞きました。あなたのことは絶対に守ります。能力のことも公表はしません。でも今ここにいる者たちは知っているわ。そのことは許してね」

 サリーはイースの顔を見た。
 メイドの分際で王妃に直答などできるはずもない。
 察した王が口を開く。

「直答を許す。ここにいる者たちは仲間だ。今後も遠慮なく発言をしてほしい」

 全員が頭を下げた。
 王妃が続ける。

「あなたは辛い過去を持っているのね。しかもここでも辛い役割を担うのね」

 サリーが口を開いた。

「恐れながら……確かに我が子と離れたことはとても悲しいですし、辛い経験でした。でも今はシューン殿下のことを一番に考えたいと思っています。過去には戻れませんが、未来は変えられえると信じています」

 イースが小さく拍手をした。
 王が言う。

「これよりサリーはメイドという身分では無く、シューンのガヴァネスとして、常に側にあり慈しみ励ましてほしい」

「ありがたきお言葉でございます」

 シューンがサリーに近づき手を繋いだ。

「ライラはそこなロバートと婚姻を結び、ロバートの妻として、また助手としてそなたを補佐する役目をになってもらう。問題ないか?」

「ライラの件、寛大なご裁断を賜り心からお礼申し上げます」

「うん、かの者の実家の件は聞き及んでいる。しかし、ここで断罪すると邪教を信じる者たちにいらぬ刺激を与えることになるだろう。今は監視を強化するに留めておく。それはサルーン伯爵家も同様だ」

「心得ました」

 サリーがロバートの顔を見た。

「ライラには?」

 ロバートがひとつ頷いて口を開いた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...