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2 なぜ心が動くのか
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昼休みになって、普段の僕では考えられないような行動を起こした。
「オオクニ君、昼食は?良かったら一緒に食べないか?」
「ああ、ありがとう。君はお弁当ではないの?」
「うん、僕はいつも学食か購買でパンを買うんだ。君は?」
「そうなんだ、じゃあ学食で食べてみたいな。いい?」
「もちろんだ。学食のA定食はなかなかお勧めだよ」
僕たちは一緒に別棟にある学食に向かった。
私学ということもあり、中庭や裏庭もゆったりと整備されていて、ベンチで昼食をとっている学生も多い。
学食は早く行くと混み合うけれど、今の時間帯ならすぐに食券も買える。
オオクニ君と僕はA定食が乗ったプレートを持って、窓際の空き席に落ち着いた。
「うん、おいしいね。僕は日本食好きだから大満足だ」
「そう?それなら良かった。家でも日本食かい?」
「日本食というほど大した食事はしてないよ。コンビニのサンドイッチかおにぎりかカップ麺だね」
「ご家族は?」
「今は一人暮らしさ。そもそも長くいるつもりは無し、目的が達成できたらすぐにでも戻るつもりだから」
「目的?」
「うん、まあいろいろあるんだよ。さあ、冷めないうちに食べてしまおう。このあと図書室に案内してほしいんだけど良いかな」
「ああ、勿論だ。僕も毎日ほとんど食後は図書室だしね」
「それなら良かった。それにしてもこの野菜を煮た料理、最高だね。懐かしい気分になる」
「筑前煮が?僕は少々飽きてるけど。まあ旨いよね。鶏肉も大きいし」
男子校の学食らしく茶碗は得ドンブリかというほど大きい。
小食の僕はいつも減らしてもらうのだが、オオクニ君はもりもりと平らげている。
箸の使い方など、僕よりも優雅で上品だった。
「御馳走様でした」
オオクニ君は声に出してそう言うと両手を合わせてペコッと頭を下げた。
僕はそんなオオクニ君の姿に、古き良き日本人の姿を見た気がした。
食器を下げた時も、学食のおばさんに明るくお礼を言っていたオオクニ君。
僕たち日本人がいつの間にかどこかに置き去りにしてしまった大切なものを、外国で暮らしていた彼が持ち続けていることに少なからず驚いた。
図書室についた僕はオオクニ君に尋ねた。
「日本語の読み書きは?」
「う~ん、たぶん大丈夫だと思うけど」
「どんなジャンルを探しているの?」
「日本の歴史だよ。できれば古代史から順に勉強したい」
「ふぅ~ん。ではこっちかな」
僕は歴史書コーナーに案内した。
「日本の古代史なら縄文とか弥生からかな…僕としては面白いとは思えないけどね」
「お勧めは?」
「知識として縄文弥生時代を知るのは悪くないけど、面白いと思えるのは断然ヤマト時代からだよ。日本に初めて国家として誕生したのがヤマト王権なんだけど、初代天皇とか神話の誕生とか?まあ現実とは思えないような内容だけれど、なんというかワクワクするんだ」
「へぇ~…初代の辺りか…君の推薦する本を読みたいな。選んでくれる?」
「いいよ、だったらこの本だな…」
僕は何度も読み返した古代史の本を抜き出した。
「これはね、僕が尊敬する山上教授が書いた本なんだ。僕は山上教授の授業を受けたくて受験する大学を選んだんだよ」
「それは楽しみだね」
「わからない言葉があったら書き出しておいてくれ。僕でよければ解説するよ」
僕たちは図書貸し出しの手続きをして教室に戻った。
午後の授業も終え、僕はいつものように帰宅の準備をした。
オオクニ君と一緒に帰ろうと思っていたけれど、何かの手続きがあるのか、担任の松本先生に呼ばれて、彼は職員室に向かった。
「じゃあ僕は先に帰るね」
「うん、また明日」
海沿いの国道をゆっくりと歩く。
僕はこの時間がとても好きだ。
この時間だけはなぜかポジティブな考えを持つことができる。
僕はオオクニ君のことを考えた。
思春期の男子に使う言葉では無いかもしれないが、オオクニ君は美しい人だった。
もしかしたら僕はそっちの気があるのではないかと自問したほど、彼を見た瞬間に心を奪われた。
見た目も声も仕草も、彼の全てが僕の心を鷲掴みにしたんだ。
『もしかして初恋?いやいやいやいや!ないないないない!』
自分でもバカみたいだと思ったけれど、本当に初恋なのかというほどにときめいている。
サーフェス・オオクニに明日も会えると思っただけで、僕は少し駆け出したいような気分になった。
でもそんな楽しい気持ちを台無しにする現実が待ち受けていた。
「お帰りなさい、トオルさん。お母様がお帰りですよ」
「母さんが?」
「ええ、お帰りになったら居間に来るようにとの事です」
「そう…ありがとう明美さん」
僕は自室に鞄を放り投げて、のろのろと居間に向かった。
中から楽し気な笑い声が聞こえる。
僕は大きなため息を吐いてから部屋のドアをノックした。
「母さん?トオルです」
ドアが開いて香水の匂いが廊下に流れ出した。
「あら、ちょっと見ない間に背が伸びたのね。さあ早く入りなさい。紹介したい人がいるのよ。こっちよ、こっち」
僕は手を引かれてソファーに座らされた。
「やあ、こんにちは。君がトオル君か。私は草薙守と言います。今日から君の家庭教師になるんだ。よろしくね」
「家庭教師?ですか?」
「うん、君の母上とはパリで知り合ったんだ。僕は世界中を旅しているんだけれど、そろそろ日本に帰ろうかと思っていたからご一緒したんだよ。飛行機の中で君の家庭教師を依頼されてね。衣食住を保証するっていう魅力に負けたのさ」
「オオクニ君、昼食は?良かったら一緒に食べないか?」
「ああ、ありがとう。君はお弁当ではないの?」
「うん、僕はいつも学食か購買でパンを買うんだ。君は?」
「そうなんだ、じゃあ学食で食べてみたいな。いい?」
「もちろんだ。学食のA定食はなかなかお勧めだよ」
僕たちは一緒に別棟にある学食に向かった。
私学ということもあり、中庭や裏庭もゆったりと整備されていて、ベンチで昼食をとっている学生も多い。
学食は早く行くと混み合うけれど、今の時間帯ならすぐに食券も買える。
オオクニ君と僕はA定食が乗ったプレートを持って、窓際の空き席に落ち着いた。
「うん、おいしいね。僕は日本食好きだから大満足だ」
「そう?それなら良かった。家でも日本食かい?」
「日本食というほど大した食事はしてないよ。コンビニのサンドイッチかおにぎりかカップ麺だね」
「ご家族は?」
「今は一人暮らしさ。そもそも長くいるつもりは無し、目的が達成できたらすぐにでも戻るつもりだから」
「目的?」
「うん、まあいろいろあるんだよ。さあ、冷めないうちに食べてしまおう。このあと図書室に案内してほしいんだけど良いかな」
「ああ、勿論だ。僕も毎日ほとんど食後は図書室だしね」
「それなら良かった。それにしてもこの野菜を煮た料理、最高だね。懐かしい気分になる」
「筑前煮が?僕は少々飽きてるけど。まあ旨いよね。鶏肉も大きいし」
男子校の学食らしく茶碗は得ドンブリかというほど大きい。
小食の僕はいつも減らしてもらうのだが、オオクニ君はもりもりと平らげている。
箸の使い方など、僕よりも優雅で上品だった。
「御馳走様でした」
オオクニ君は声に出してそう言うと両手を合わせてペコッと頭を下げた。
僕はそんなオオクニ君の姿に、古き良き日本人の姿を見た気がした。
食器を下げた時も、学食のおばさんに明るくお礼を言っていたオオクニ君。
僕たち日本人がいつの間にかどこかに置き去りにしてしまった大切なものを、外国で暮らしていた彼が持ち続けていることに少なからず驚いた。
図書室についた僕はオオクニ君に尋ねた。
「日本語の読み書きは?」
「う~ん、たぶん大丈夫だと思うけど」
「どんなジャンルを探しているの?」
「日本の歴史だよ。できれば古代史から順に勉強したい」
「ふぅ~ん。ではこっちかな」
僕は歴史書コーナーに案内した。
「日本の古代史なら縄文とか弥生からかな…僕としては面白いとは思えないけどね」
「お勧めは?」
「知識として縄文弥生時代を知るのは悪くないけど、面白いと思えるのは断然ヤマト時代からだよ。日本に初めて国家として誕生したのがヤマト王権なんだけど、初代天皇とか神話の誕生とか?まあ現実とは思えないような内容だけれど、なんというかワクワクするんだ」
「へぇ~…初代の辺りか…君の推薦する本を読みたいな。選んでくれる?」
「いいよ、だったらこの本だな…」
僕は何度も読み返した古代史の本を抜き出した。
「これはね、僕が尊敬する山上教授が書いた本なんだ。僕は山上教授の授業を受けたくて受験する大学を選んだんだよ」
「それは楽しみだね」
「わからない言葉があったら書き出しておいてくれ。僕でよければ解説するよ」
僕たちは図書貸し出しの手続きをして教室に戻った。
午後の授業も終え、僕はいつものように帰宅の準備をした。
オオクニ君と一緒に帰ろうと思っていたけれど、何かの手続きがあるのか、担任の松本先生に呼ばれて、彼は職員室に向かった。
「じゃあ僕は先に帰るね」
「うん、また明日」
海沿いの国道をゆっくりと歩く。
僕はこの時間がとても好きだ。
この時間だけはなぜかポジティブな考えを持つことができる。
僕はオオクニ君のことを考えた。
思春期の男子に使う言葉では無いかもしれないが、オオクニ君は美しい人だった。
もしかしたら僕はそっちの気があるのではないかと自問したほど、彼を見た瞬間に心を奪われた。
見た目も声も仕草も、彼の全てが僕の心を鷲掴みにしたんだ。
『もしかして初恋?いやいやいやいや!ないないないない!』
自分でもバカみたいだと思ったけれど、本当に初恋なのかというほどにときめいている。
サーフェス・オオクニに明日も会えると思っただけで、僕は少し駆け出したいような気分になった。
でもそんな楽しい気持ちを台無しにする現実が待ち受けていた。
「お帰りなさい、トオルさん。お母様がお帰りですよ」
「母さんが?」
「ええ、お帰りになったら居間に来るようにとの事です」
「そう…ありがとう明美さん」
僕は自室に鞄を放り投げて、のろのろと居間に向かった。
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僕は大きなため息を吐いてから部屋のドアをノックした。
「母さん?トオルです」
ドアが開いて香水の匂いが廊下に流れ出した。
「あら、ちょっと見ない間に背が伸びたのね。さあ早く入りなさい。紹介したい人がいるのよ。こっちよ、こっち」
僕は手を引かれてソファーに座らされた。
「やあ、こんにちは。君がトオル君か。私は草薙守と言います。今日から君の家庭教師になるんだ。よろしくね」
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