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13 クサナギ
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「あれはクサナギだよ。あまのむらくものつるぎ。君も日本史に興味があるなら知っているだろう?」
山上教授の声に僕は即答した。
「はい、三種の神器ですよね。こんな形をしているのですか…このレプリカは原寸大ですか?」
「いや、違う…とも言い切れない。見たことが無いからね、誰一人として」
サーフェスもそのレプリカをじっと見ていたがフッと息を吐いて微笑んだ。
「近いけど違いますね。もっと長いですよ、持ち手の部分も刃の部分も、あと十センチ位は長い。色はもっと青味が強いな」
僕と教授はゆっくりとサーフェスの方を見た。
「そうだ、きっと八幡君も山上教授も知らないと思うけど、クサナギとほぼ同じ剣があるんですよ?同一人物によって同時期に鍛刀されたんです。二つ並べてどちらかをと言われたヤマトタケルが手にした方にクサナギって名前にをつけたのです」
山上教授がおそるおそる尋ねた。
「もう一つの方は?」
「オオクニという名前になりました。これは鍛刀した鍛人(かぬち)の奥方が命名したのです」
「そうなの?草薙ってヤマタノオロチから出て来たんじゃないの?」
僕は貧相な知識で反論を試みた。
「常識的に言って蛇の尻尾かっら刀が出るわけないじゃん。ヤマタノオロチっていうのは山の多い場所から年に一度村に出てくる落人のことだ」
「えっ!」
山上教授が立ち上がった。
「年に一度だけ山から降りてきて村を襲うんだよ。娘も攫って妻にしてしまうんだ。まあその子孫が今でも生存しているから、本能としての繫殖行動だよね。それを退治するために村人が武人を雇ったんだ。その落人の大将が落としていった剣がクサナギってことになっているけれど本当は違うよ」
「ではなぜそれがクサナギになったのかな?」
「その方が都合が良かっただけでしょうね。だってさぁヤマトタケルの手に渡るまでに何年たってると思う?絶対に朽ちてるって」
「まあ…それはそうかもしれないが…」
「ヤマトタケルが持っている剣に威厳を持たせたかったのでしょうけれど、かなり無理がありますよね。そもそもヤマトタケルって…」
そこまで軽い口調で話していたサーフェスが口を閉じてあたりの気配をうかがった。
「ど…どうしたの?」
「いる…」
僕と山上教授はサーフェスにつられて緊張した。
その時ガラッと扉が開き、若い男性が入ってきた。
「教授、お茶を入れ替えましょう」
「ああ、君か。そうだね、頼もうか」
「コーヒーでいいですか?お二人は?」
「コーヒーでお願いします」
その男性は出されていた茶器を盆にのせて、さっさと部屋を出て行った。
僕たちは一斉に息を吐いた。
「あれは研究員の武田君だ。驚かすなよオオクニ君」
「いつからいますか?彼は」
「武田君?そうだなぁ…二年くらいかな?非常勤だからたまにしか来ないけど、彼の特技は凄いんだ」
「特技?」
「ああ、膨大な資料の中から適切な文章を見つけ出す能力が秀でている。まるで全部呼んでいるかのように、ぱっと見つけてくるんだよ。便利な男さ」
「ははは~そりゃ凄いですね。でもきっと彼はもう来ないですよ」
「え?なぜ?」
それには答えず、サーフェスがニコッと笑って言った。
「そろそろ冒険に出ましょうか。教授はどうします?良ければ行きませんか?」
「冒険って…」
サーフェスは静かに立ち上がり、教授の方へ手を伸ばした。
山上教授の声に僕は即答した。
「はい、三種の神器ですよね。こんな形をしているのですか…このレプリカは原寸大ですか?」
「いや、違う…とも言い切れない。見たことが無いからね、誰一人として」
サーフェスもそのレプリカをじっと見ていたがフッと息を吐いて微笑んだ。
「近いけど違いますね。もっと長いですよ、持ち手の部分も刃の部分も、あと十センチ位は長い。色はもっと青味が強いな」
僕と教授はゆっくりとサーフェスの方を見た。
「そうだ、きっと八幡君も山上教授も知らないと思うけど、クサナギとほぼ同じ剣があるんですよ?同一人物によって同時期に鍛刀されたんです。二つ並べてどちらかをと言われたヤマトタケルが手にした方にクサナギって名前にをつけたのです」
山上教授がおそるおそる尋ねた。
「もう一つの方は?」
「オオクニという名前になりました。これは鍛刀した鍛人(かぬち)の奥方が命名したのです」
「そうなの?草薙ってヤマタノオロチから出て来たんじゃないの?」
僕は貧相な知識で反論を試みた。
「常識的に言って蛇の尻尾かっら刀が出るわけないじゃん。ヤマタノオロチっていうのは山の多い場所から年に一度村に出てくる落人のことだ」
「えっ!」
山上教授が立ち上がった。
「年に一度だけ山から降りてきて村を襲うんだよ。娘も攫って妻にしてしまうんだ。まあその子孫が今でも生存しているから、本能としての繫殖行動だよね。それを退治するために村人が武人を雇ったんだ。その落人の大将が落としていった剣がクサナギってことになっているけれど本当は違うよ」
「ではなぜそれがクサナギになったのかな?」
「その方が都合が良かっただけでしょうね。だってさぁヤマトタケルの手に渡るまでに何年たってると思う?絶対に朽ちてるって」
「まあ…それはそうかもしれないが…」
「ヤマトタケルが持っている剣に威厳を持たせたかったのでしょうけれど、かなり無理がありますよね。そもそもヤマトタケルって…」
そこまで軽い口調で話していたサーフェスが口を閉じてあたりの気配をうかがった。
「ど…どうしたの?」
「いる…」
僕と山上教授はサーフェスにつられて緊張した。
その時ガラッと扉が開き、若い男性が入ってきた。
「教授、お茶を入れ替えましょう」
「ああ、君か。そうだね、頼もうか」
「コーヒーでいいですか?お二人は?」
「コーヒーでお願いします」
その男性は出されていた茶器を盆にのせて、さっさと部屋を出て行った。
僕たちは一斉に息を吐いた。
「あれは研究員の武田君だ。驚かすなよオオクニ君」
「いつからいますか?彼は」
「武田君?そうだなぁ…二年くらいかな?非常勤だからたまにしか来ないけど、彼の特技は凄いんだ」
「特技?」
「ああ、膨大な資料の中から適切な文章を見つけ出す能力が秀でている。まるで全部呼んでいるかのように、ぱっと見つけてくるんだよ。便利な男さ」
「ははは~そりゃ凄いですね。でもきっと彼はもう来ないですよ」
「え?なぜ?」
それには答えず、サーフェスがニコッと笑って言った。
「そろそろ冒険に出ましょうか。教授はどうします?良ければ行きませんか?」
「冒険って…」
サーフェスは静かに立ち上がり、教授の方へ手を伸ばした。
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