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大好きなルルーシアを前にテンションが上がるアマデウスとは裏腹に、食が進まないルルーシア。
「どうしたの? おいしくないかい?」
アマデウスがルルーシアに声を掛けた。
「いえ、とても美味しゅうございます。きっと殿下と初めて学園で過ごしていることに胃が驚いているのだと思いますわ」
「ははは! 相変わらずルルは可愛らしいことを言う。でももう少し食べないと倒れてしまうよ。午後からは何の授業なの?」
「午後からは音楽と歴史ですわ」
「どちらも眠くなりそうな授業だね。コーヒーを飲んでおいた方がいい」
「まあ! 殿下ったら」
結局ほとんど手がつかないままルルーシアはランチを終えた。
給仕がデザートとコーヒーを運んでくる。
「さあ、ルル。このババロアは絶品なんだ。きっと君も気に入るよ」
ルルーシアはスプーンを手にとって微笑んだ。
「まあ! 甘酸っぱくて美味しいです」
「そうだろう? あまり甘いものは食べない僕でもこのババロアだけはペロッと食べるんだ。中に散らされている小さなフルーツが星のようできれいだろ? さあ、コーヒーも冷めないうちにどうぞ。ルルはミルクを入れるんだよね?」
「ありがとうございます」
アマデウスの心遣いにホッと息を吐いたルルーシアが、テラスから校庭を眺めた。
「きれいな景色ですのね」
「うん、北の森はほとんど自然林だから雄大な景色が楽しめるよね。東の庭にはバラ園があるんだ。良かったら明日にでも案内しよう」
「楽しみですわ」
予鈴が鳴り、それぞれの教室に戻る時間になった。
「ルル、今夜は叔父上が来られるから僕はこれで帰るんだ。送れなくて申し訳ないけれど気を付けて帰ってね」
「ありがとうございます。どうぞ王弟殿下によろしくお伝えくださいませ」
手を振って去って行くアマデウスに頭を下げながら、アリアがルルーシアに言う。
「やっぱりどう考えてもルルにぞっこんって感じよね」
「……きっとお辛いでしょうね」
「アランは誤解だって言ってたわ。今度詳しく聞いてみなくちゃ」
「アリア、もう良いのよ。殿下はとても気遣ってくださっているもの。それだけで十分よ。この上殿下の愛情を求めるなんて……」
「何言ってるの! ダメよそんな弱気じゃ! あんな女なんて蹴散らさなきゃ!」
アリアがフンスカと鼻息を荒くしている。
ルルーシアは今朝からずっと泣くのを我慢しているのを悟られまいと笑顔を浮かべた。
授業を終えて迎えの馬車に乗り込んだルルーシアは、座席に凭れ掛かり盛大な溜息を吐いた。
「お嬢様、今日はどうでしたか?」
キャロラインが冷やしたおしぼりを渡しながら聞く。
「授業は思っていたより簡単だわ。殿下が誘ってくださってランチをご一緒したの」
「まあ! 左様ですか。それはようございました」
「でもそのランチに行く前に、殿下と例のご令嬢が顔を寄せ合ってお話しなさっているのを見てしまって。今夜は王弟殿下がおいでになるから行けないと言われていたのを聞いちゃった」
キャロラインがグッと掌を握った。
「調べてみますか?」
「いいえ、今更調べたからといってどうしようもないでしょう? それに殿下はいつもと同じように優しく接してくださったの。私が皇太子妃になることでお母様のお国との交易が強固になるんだもの……そうよ、これは政略結婚なの。貴族令嬢に生まれた者の義務だわ」
「お嬢様……」
「殿下はきちんとそれを理解して役割を果たしておいでだわ。私が……私が殿下を愛してしまったことが間違いなのよ……」
「そんな!」
ルルーシアはそれきり何も言わず車窓に視線を向けた。
ゴトゴトと揺れる窓から見える西の空が茜色に染まり、ずっと遠くの山々が切り絵のように浮かんでいた。
「今日は雲一つない星空になりそうね」
家に戻ったルルーシアは食欲がないと夕食を断り、早めにベッドに潜り込んだのだった。
「どうしたの? おいしくないかい?」
アマデウスがルルーシアに声を掛けた。
「いえ、とても美味しゅうございます。きっと殿下と初めて学園で過ごしていることに胃が驚いているのだと思いますわ」
「ははは! 相変わらずルルは可愛らしいことを言う。でももう少し食べないと倒れてしまうよ。午後からは何の授業なの?」
「午後からは音楽と歴史ですわ」
「どちらも眠くなりそうな授業だね。コーヒーを飲んでおいた方がいい」
「まあ! 殿下ったら」
結局ほとんど手がつかないままルルーシアはランチを終えた。
給仕がデザートとコーヒーを運んでくる。
「さあ、ルル。このババロアは絶品なんだ。きっと君も気に入るよ」
ルルーシアはスプーンを手にとって微笑んだ。
「まあ! 甘酸っぱくて美味しいです」
「そうだろう? あまり甘いものは食べない僕でもこのババロアだけはペロッと食べるんだ。中に散らされている小さなフルーツが星のようできれいだろ? さあ、コーヒーも冷めないうちにどうぞ。ルルはミルクを入れるんだよね?」
「ありがとうございます」
アマデウスの心遣いにホッと息を吐いたルルーシアが、テラスから校庭を眺めた。
「きれいな景色ですのね」
「うん、北の森はほとんど自然林だから雄大な景色が楽しめるよね。東の庭にはバラ園があるんだ。良かったら明日にでも案内しよう」
「楽しみですわ」
予鈴が鳴り、それぞれの教室に戻る時間になった。
「ルル、今夜は叔父上が来られるから僕はこれで帰るんだ。送れなくて申し訳ないけれど気を付けて帰ってね」
「ありがとうございます。どうぞ王弟殿下によろしくお伝えくださいませ」
手を振って去って行くアマデウスに頭を下げながら、アリアがルルーシアに言う。
「やっぱりどう考えてもルルにぞっこんって感じよね」
「……きっとお辛いでしょうね」
「アランは誤解だって言ってたわ。今度詳しく聞いてみなくちゃ」
「アリア、もう良いのよ。殿下はとても気遣ってくださっているもの。それだけで十分よ。この上殿下の愛情を求めるなんて……」
「何言ってるの! ダメよそんな弱気じゃ! あんな女なんて蹴散らさなきゃ!」
アリアがフンスカと鼻息を荒くしている。
ルルーシアは今朝からずっと泣くのを我慢しているのを悟られまいと笑顔を浮かべた。
授業を終えて迎えの馬車に乗り込んだルルーシアは、座席に凭れ掛かり盛大な溜息を吐いた。
「お嬢様、今日はどうでしたか?」
キャロラインが冷やしたおしぼりを渡しながら聞く。
「授業は思っていたより簡単だわ。殿下が誘ってくださってランチをご一緒したの」
「まあ! 左様ですか。それはようございました」
「でもそのランチに行く前に、殿下と例のご令嬢が顔を寄せ合ってお話しなさっているのを見てしまって。今夜は王弟殿下がおいでになるから行けないと言われていたのを聞いちゃった」
キャロラインがグッと掌を握った。
「調べてみますか?」
「いいえ、今更調べたからといってどうしようもないでしょう? それに殿下はいつもと同じように優しく接してくださったの。私が皇太子妃になることでお母様のお国との交易が強固になるんだもの……そうよ、これは政略結婚なの。貴族令嬢に生まれた者の義務だわ」
「お嬢様……」
「殿下はきちんとそれを理解して役割を果たしておいでだわ。私が……私が殿下を愛してしまったことが間違いなのよ……」
「そんな!」
ルルーシアはそれきり何も言わず車窓に視線を向けた。
ゴトゴトと揺れる窓から見える西の空が茜色に染まり、ずっと遠くの山々が切り絵のように浮かんでいた。
「今日は雲一つない星空になりそうね」
家に戻ったルルーシアは食欲がないと夕食を断り、早めにベッドに潜り込んだのだった。
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