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アマデウス王太子側近 アリア・ロックス侯爵令嬢 サマンサ・フロレンシア伯爵令嬢
ルルーシア王太子妃側近 アラン・フェリシア侯爵令息 マリオ・メントール伯爵令息
王太子には女性の側近がつき、王太子妃には男性の側近が付くというのは異例中の異例だ。
しかもそれを提案したのが王弟キリウス殿下であり、アランもアリアも了承したということになる。
「マリオはものすごく頭の良い奴だよ。判断力がずば抜けている。アリアに似たタイプだね。ほら、卒業式の時に一緒に壇上に並んだだろ? あいつさ」
「ああ、あの赤い髪の方ですわね? ということは今年の優秀学生は全員側近に?」
「うん、全員が側近試験に合格した。もし執務室を共にするなら、あの日壇上に上がった者たちが全員揃って将来の国政を担うってことだ」
「……」
ルルーシアとしては複雑な思いだ。
執務室を一緒にすればアリアとも一緒に居られるが、サマンサとも毎日顔を合わせるということになる。
しかし、執務室を分ければ我が夫とサマンサが何をしているのかを疑い続けることになるのだ。
「ああ……なるほど」
そのためにアリアは王太子の側近になることに同意したのだと納得したルルーシアは、アリアの友情に感謝した。
「対外的には、男の僕では気が付かない細やかな部分を側近たちがカバーするってことらしい。君の場合はその逆だね。女性では思いつかない力技やゴリ押しのような政策も、彼らが矢面に立って進めるということだ。もちろんベテランの文官も僕とルルにそれぞれ2名ずつ配置される。こちらは僕が男性文官で、ルルは女性文官だよ」
「一見すれば合理的ですわね」
ルルーシアは披露宴準備のために控室を出た。
残されたアマデウスは、ひとり窓辺に立ちふっと溜息をつく。
「叔父上は何をお考えなのだろうか……」
その声は饗応の間から聞こえる楽し気な音に紛れていった。
そしてその日の夜、一般的には初夜となるが、この国の慣習として歴代の王族の墓参が済まないと同衾は許されない。
墓参も大切な行事のひとつで、王太子夫妻とぞれぞれの専属侍女侍従がひとつの馬車に、もうひとつの馬車には新しく側近となった者たちが乗り込む。
その二台の馬車は、沿道に並ぶ国民達の祝福を受けながら、歴代の王族が眠る「王の谷」へと向かうのだ。
出発は明日の国内貴族を招待した披露宴が終わった翌日の早朝で、見送るのは国王と王妃、そしてこの国の政治を担う宰相とサミットを形成する貴族たち。
披露宴には国内貴族の全てが招待されるが、登城できるのは各家二名までと決められている。
もちろん強制ではないし、領地の状況や経済的な理由から参加を見送る貴族家もあってしかるべしなのだが、今回はガーデンパーティーという気楽さもあって、前回(現国王の披露宴)よりも参加者が多かった。
王宮の中でも一番広い中央広場を会場とし、料理は広場の両脇に準備されている。
混雑を避けるため、料理と飲み物のテーブルが交互に並び、和やかな雰囲気の中で披露宴は進んでいた。
「素敵なカップルですこと。凛々しい王太子と聡明で美しい王太子妃の誕生ですわ」
「これで我が国も安泰ですな」
談笑するグループをしれっと冷めた目で見ながら、ワイングラスを片手に話す2人の男がいた。
「なあフェリシア、正直に言え。お前がフロレンシアの馬車を壊したんだろ?」
ロックス侯爵が表情を変えずに言う。
「バカな事を言うな。俺はお前だとばかり思っていたぞ」
フェリシア侯爵がロックス侯爵の顔を見ずに返した。
「じゃあメリディアン?」
「いや、あいつじゃないだろ。もし奴が動いたなら、馬車を壊して動けなくするなんて生ぬるいことなどするものか」
「そりゃそうだな。あいつが動いた瞬間、フロレンシアの野郎は息をしてないだろうからな」
フェリシア侯爵が眉間に皺を寄せた。
「じゃあ誰だ?」
「俺は王弟殿下だと思う。あの人はなんだかんだ言って甥をものすごく可愛がってるから。これ以上立場を悪くするのを避けたのではないかな」
「ああ、あり得るな。それに、側妃は構わんが正妃を蔑ろにする行為は絶対に許さないとあのアホに言い放ったと聞いた。そういえば、お前んとこの娘、えらく優秀なんだな。まさか本当に側近になるとはなぁ」
「ああ、あの子の本気というものを父親の俺でさえ初めて見たよ。お前んとこの息子にも、えらく世話になったようだ。礼を言うよ」
「いやいや、あいつが不甲斐ないばかりにアリアちゃんが働く羽目になったんだ。あの程度で詫びになるとは思ってないよ」
ふと広場に視線を送ったふたりの目に映ったのは、心から嬉しそうな笑顔でルルーシアを見つめるアマデウスと、王族としての完璧な笑顔を貼り付けたルルーシアが踊る姿だった。
ルルーシア王太子妃側近 アラン・フェリシア侯爵令息 マリオ・メントール伯爵令息
王太子には女性の側近がつき、王太子妃には男性の側近が付くというのは異例中の異例だ。
しかもそれを提案したのが王弟キリウス殿下であり、アランもアリアも了承したということになる。
「マリオはものすごく頭の良い奴だよ。判断力がずば抜けている。アリアに似たタイプだね。ほら、卒業式の時に一緒に壇上に並んだだろ? あいつさ」
「ああ、あの赤い髪の方ですわね? ということは今年の優秀学生は全員側近に?」
「うん、全員が側近試験に合格した。もし執務室を共にするなら、あの日壇上に上がった者たちが全員揃って将来の国政を担うってことだ」
「……」
ルルーシアとしては複雑な思いだ。
執務室を一緒にすればアリアとも一緒に居られるが、サマンサとも毎日顔を合わせるということになる。
しかし、執務室を分ければ我が夫とサマンサが何をしているのかを疑い続けることになるのだ。
「ああ……なるほど」
そのためにアリアは王太子の側近になることに同意したのだと納得したルルーシアは、アリアの友情に感謝した。
「対外的には、男の僕では気が付かない細やかな部分を側近たちがカバーするってことらしい。君の場合はその逆だね。女性では思いつかない力技やゴリ押しのような政策も、彼らが矢面に立って進めるということだ。もちろんベテランの文官も僕とルルにそれぞれ2名ずつ配置される。こちらは僕が男性文官で、ルルは女性文官だよ」
「一見すれば合理的ですわね」
ルルーシアは披露宴準備のために控室を出た。
残されたアマデウスは、ひとり窓辺に立ちふっと溜息をつく。
「叔父上は何をお考えなのだろうか……」
その声は饗応の間から聞こえる楽し気な音に紛れていった。
そしてその日の夜、一般的には初夜となるが、この国の慣習として歴代の王族の墓参が済まないと同衾は許されない。
墓参も大切な行事のひとつで、王太子夫妻とぞれぞれの専属侍女侍従がひとつの馬車に、もうひとつの馬車には新しく側近となった者たちが乗り込む。
その二台の馬車は、沿道に並ぶ国民達の祝福を受けながら、歴代の王族が眠る「王の谷」へと向かうのだ。
出発は明日の国内貴族を招待した披露宴が終わった翌日の早朝で、見送るのは国王と王妃、そしてこの国の政治を担う宰相とサミットを形成する貴族たち。
披露宴には国内貴族の全てが招待されるが、登城できるのは各家二名までと決められている。
もちろん強制ではないし、領地の状況や経済的な理由から参加を見送る貴族家もあってしかるべしなのだが、今回はガーデンパーティーという気楽さもあって、前回(現国王の披露宴)よりも参加者が多かった。
王宮の中でも一番広い中央広場を会場とし、料理は広場の両脇に準備されている。
混雑を避けるため、料理と飲み物のテーブルが交互に並び、和やかな雰囲気の中で披露宴は進んでいた。
「素敵なカップルですこと。凛々しい王太子と聡明で美しい王太子妃の誕生ですわ」
「これで我が国も安泰ですな」
談笑するグループをしれっと冷めた目で見ながら、ワイングラスを片手に話す2人の男がいた。
「なあフェリシア、正直に言え。お前がフロレンシアの馬車を壊したんだろ?」
ロックス侯爵が表情を変えずに言う。
「バカな事を言うな。俺はお前だとばかり思っていたぞ」
フェリシア侯爵がロックス侯爵の顔を見ずに返した。
「じゃあメリディアン?」
「いや、あいつじゃないだろ。もし奴が動いたなら、馬車を壊して動けなくするなんて生ぬるいことなどするものか」
「そりゃそうだな。あいつが動いた瞬間、フロレンシアの野郎は息をしてないだろうからな」
フェリシア侯爵が眉間に皺を寄せた。
「じゃあ誰だ?」
「俺は王弟殿下だと思う。あの人はなんだかんだ言って甥をものすごく可愛がってるから。これ以上立場を悪くするのを避けたのではないかな」
「ああ、あり得るな。それに、側妃は構わんが正妃を蔑ろにする行為は絶対に許さないとあのアホに言い放ったと聞いた。そういえば、お前んとこの娘、えらく優秀なんだな。まさか本当に側近になるとはなぁ」
「ああ、あの子の本気というものを父親の俺でさえ初めて見たよ。お前んとこの息子にも、えらく世話になったようだ。礼を言うよ」
「いやいや、あいつが不甲斐ないばかりにアリアちゃんが働く羽目になったんだ。あの程度で詫びになるとは思ってないよ」
ふと広場に視線を送ったふたりの目に映ったのは、心から嬉しそうな笑顔でルルーシアを見つめるアマデウスと、王族としての完璧な笑顔を貼り付けたルルーシアが踊る姿だった。
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