どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連

文字の大きさ
28 / 77

28

しおりを挟む
「汝ら、この国の繫栄のために互いを認め敬い、ともに力を合わせ進むことを誓うか」

「「はい、誓います」」

「神はその誓いをお聞きになりました。ここからは私個人の祝辞と思って聞いてください」

 そう言うと大教会長はニコッと笑って2人の顔を見た。

「あなたが愛する人の幸せを望むなら、まずあなたが幸せになりなさい。それは、夫の幸せこそが妻の喜びであり、妻の幸せこそが夫の喜びだからです。愛する者のために、自分が幸せでいられるよう互いに努めなさい。そして愛する者を常に見つめ、言葉を交わしなさい。夫婦とは全ての始まりです。あなた達は神に祝福され、今日ここに夫婦となりました。夫婦とはこの世でもっとも信頼しあえる親友でもあるのです。安易に自分を犠牲にして相手を救おうとしてはなりません。一緒に苦しみ悩み傷つき、一緒に喜び楽しみ互いを幸せにしなさい」

「心に刻みます」

 そう言って頭を下げたアマデウスの目は充血していた。
 アリアの横でアランが号泣している。

「あんた……もしかして人情派?」

「いや、クールなポーカーフェイスだと思っているが」

「……残念なやつ」

 ふと見ると、メリディアン侯爵がじっと目を瞑っていた。
 その横でモネ公爵と兄のノーベンが大泣きしている。
 
「どいつもこいつも……」

 アリアの呟きは拍手の音でかき消された。
 純白で屋根のない馬車に乗り込んだふたりはパレードへと出発した。
 その前後左右は盛装した近衛騎士が固め、各国からの招待客は王宮の饗応の間へと移動していく。
 アリアの側にロックス侯爵が近寄ってきた。

「今日は例の女は来てないのか?」

「うん、なぜか噂が噓みたいに消えてるでしょう? お父様たちが何かやったの?」

「やったというほどの事はしていないさ。来ていないのなら重畳だ」

 まさか殺したわけではないだろななどと不穏なことを考えながら、アリアとアランも王宮へと移動した。
 今日は海外からの招待客と高位貴族だけが参加する披露宴で、明日は国内の貴族たちが招待されている。
 そして、明日の披露宴の前にそれぞれの側近が発表される予定となっていた。

 王宮で身だしなみを整えなおしたアリアが饗応の間に向かうと、入口でアラン親子が立っている。
 古い付き合いということもあり、それぞれの妻が談笑を始めた。
 そうこうしているうちに、新郎新婦を乗せた馬車が帰ってくる。
 ずらっと並んで出迎えた貴族たちに笑顔を向けながら、アマデウスとルルーシアは控室へと向かった。

「ご苦労様。疲れただろう? ルルは冷たいジュースでいいかな?」

「ええ、ではそれを」

「ねえルル。やっと夫婦になれたんだ。僕のことはアマディって呼んで欲しい。それと口調も堅苦しいものでなくて良いんだよ」

「アマディ? はい、承知……ええ、わかったわ。頑張ってみるけれど、徐々にってことで許してね」

「うん。なんだか凄くうれしいよ。そして僕を見捨てないでくれて本当にありがとう。そして今日からよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 すっかり安心しきった顔になったアマデウスが、一気にジュースを飲み干した。

「安心したら喉が渇いた」

「緊張なさいましたの?」

「そりゃ緊張したさ。ルルは平気だったの?」

「もちろん緊張しましたけれど、なんて言うか……夢の中みたいな? 非現実的な感じでふわふわ浮いているような気分でしたわ」

 その時、宰相が入室してきた。

「本日は誠におめでとうございます。お支度の合間にこちらをご確認下さい。明日発表されるおふたりの側近の名簿でございます」

「ああ、ありがとう。確認しておくよ」

 宰相が出た後で、二人並んで書類を覗き込んだ。

「えっ! どういうことですか?」

「うん……これは叔父上からの提言なんだ。本人たちが了承しないと却下という事だったのだけれど、どうやら受け入れたみたいだね」

「だってアリアは……ああどうすれば良いのかしら」

「大丈夫だよ、これは僕からの提案なんだけど、もし君さえ良ければ執務室を一緒にしないか? そうすれば互いの動きもすぐにわかるし、相談もし易いだろう? 一応担当者としてはこういう割り振りになるけれど、側近も共同で仕えてもらうって感じで……」

「少し考えさせてください」

「うん……わかった」

 困惑の表情を浮かべながらルルーシアが睨む書類には、予想通りの名前と予定外の配置が掛かれていた。
しおりを挟む
感想 972

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした

ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。 自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。 そんなある日、彼女は見てしまう。 婚約者に詰め寄る聖女の姿を。 「いつになったら婚約破棄するの!?」 「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」 なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。 それを目撃したリンシアは、決意する。 「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」 もう泣いていた過去の自分はいない。 前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。 ☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m ☆10万文字前後完結予定です

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...